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第一章
第17話 下水道
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僕らも食事をし終わって戦闘に加わろうと立ち上がる。ニカとアイラさんと顔を見合って頷くと門へと振り返る。だけど、その時、
「キャ~!!!」
「え!?」
町中から声が聞こえてくる。女性の叫び声に続いて男性の叫びも聞こえてくる。
「た、大変だ! 下水からグール達が!」
「すぐに向かうぞ」
住人からの報告を聞いて、残っていた冒険者達が動き出す。
「ルガさん達が危ない!」
「お兄ちゃん早く行こう!」
下水の入口の多い路地……そこで暮らしてるルガさん達は一番最初に襲われてしまうはずだ。ニカとアイラさんと共に路地へと駆け走る。
「くははは、これでここら一体は火の海。あの野郎もこれで死ぬ!」
路地へと走ると僕から何もかも奪った犬の獣人が路地にゴミをばらまいて火をつけようとしていた。まったく、どっちがゴミなんだか……。
「て、てめえ! 何見てやがる!」
「あ、あぶない!」
「あ? あえ? ギャァァァァ!」
僕らに振り返る犬の獣人は背後に近づいてきていたグールに気づかずに首元を食いちぎられる。断末魔を残して犬の獣人は絶命していった。魔物と違って死体がその場に残る……。吐き気がして顔を背けるとアイラさんに抱えられて後ろへと跳躍する。
目を背けている間にグールが目の前まで来てたみたいでアイラさんが守ってくれたみたいだ。
「ハヤト殿、どんな悲惨なことを目にしても敵から目を離してはいけません」
「ご、ごめん」
アイラさんに怒られて視線を犬の獣人の死体に。魔物の死体はすぐに消える。だけど、人が死ぬとずっとその場に残るんだ。ゲームみたいな感覚でいたけど、この世界の人たちはしっかりと生きてるんだ。あんな死に方絶対にさせるわけには行かない!
「お兄ちゃん!」
「分かってる! 二人とも片付けるぞ!」
ニカの声に自分を奮い立たせる。この世界で生まれた人はニカでさえ死と向き合ってる。僕が怖気づいている場合じゃない。
「オォォォォ」
グールが声をあげて近づいてくる。路地を埋め尽くすほどのグールが下水道から湧いてきてる。
「グールは生きる者を執拗に狙う。生きているものを憎んでいるのです」
「憎んでる……」
「少し私が片付けます。二人は残ったものを」
「アイラさんが?」
片手に槍、もう片方に剣を持ってアイラさんがグールへと走り出す。グールと接触するその刹那、目に見えるグール達の上半身が消え去って消えていく。
素早く槍と剣を振り回してグールを蹴散らしてるみたいだ。
「凄い! アイラお姉ちゃんこんなに強かったの?」
「感心してる場合じゃない。残ったのを僕らでどうにかしないと」
「う、うん、そうだね」
ニカが声をあげると指示を飛ばす。周りを見るとここら辺にいる冒険者は僕らだけだ。僕らで何とかしないと。
「ハ~ッ!」
グールを蹴散らしていくアイラさん。その後ろを走る僕らも残ったグールを切りつけていく。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
連続して聞こえてくるレベルアップの知らせ。そんなこと気にしている場合じゃない。こんなにグールがいる、ルガさん達が心配だ。
グールの群れが途切れて、布で出来た小屋が見えてきた。急いで中に入る。すると、
「お? おお~、ハヤト~」
「どうしたんだ?」
ルガさんじゃないおじさん達が歓迎してくる。ルガさんはいないみたいだ。
「皆さん逃げて」
「ああ? 何をそんな急いで?」
「グールが入ってきてるんです」
「グール? ああ、さっき倒したゾンビか」
「え? 倒した?」
急かすようにおじさんの腕を引っ張る。おじさんはどっしりとして動かない。首を傾げて聞いてくるおじさんは凄いことを話してきた。
「ダハハ。あのゾンビよ~。噛みつこうとしてきたからよ。蹴散らしてやったぜ」
「ははは、ほんとゾンビは嫌だよな~」
おじさん達はそういって笑いあってる。
「と、とにかくここから出ましょう」
「あ~。俺達はあんな奴らには負けねえよ。心配しないで他のやつを守ってやんな」
「で、でも」
「前に言っただろ。俺達は逃亡者なんだ。それなりに自分の身を守れる。まあ、腹は膨れさせられないけどな」
逃げようというとおじさん達は笑って言ってくる。ルガさんみたいにそれなりに凄い人達だったんだな。無理やり引っ張ってもびくともしないのもうなずけるな。
「じゃ、じゃあ。ルガさんのところに」
「ああ? ルガさんは鍛冶屋で働いてる。鍛冶屋にはそれなりの奴らがいるだろ。それに俺達の仲間も見てるからな」
「そ、そうなんですか」
「ああ、だから普通に暮らしてる一般の人のところに行ってやりな」
「わ、わかりました。皆さん本当に気をつけてくださいね」
おじさん達の無事を確認して、とにかくグールを倒すことにした。下水道への入口まで片付けて上ってくるグールを倒していく。
「どれだけの村や町を……」
これ全部、元は人の死体なんだよね。
「この数はおかしいです。もしかしたらネクロマンサーが関わっているかも」
「ネクロマンサー?」
ゲームの知識では死体を操ることが出来る人の事のはず。でも、この量を操るのは難しいんじゃ?
「これすべてを操るのは難しいと思います。ですがオーガのゾンビが一体現れましたよね。あれが操っているものでグールは作られた魔物。そう考えれば可能です」
「なるほど」
アイラさんの言葉に頷く。操るのは強い魔物のゾンビだけで、グールは作って放つだけ。もしかすると先頭を進む何匹かは操っているのかもしれないな。そうすれば自然と作っただけの魔物は先頭について歩く。ろくでもないやつが黒幕にいそうだな。
「じゃあ、その人を倒そうよお兄ちゃん!」
「うん、そうだね。ってどこにいるかわからないな」
「ん~、そういうずるい人って隠れると思うんだけど、下水ってピッタリだと思うんだけど」
「まさか~……」
ニカの推測に声をもらして、アイラさんと顔を見合う。アイラさんは小さく頷いて答える。
「そう思うでしょ?」
「確かにニカ殿の推測もあり得る」
「ほら~」
ニカが得意げに話すとアイラさんも同意見みたいだ。ってことは下水道が敵のテリトリーになってるってことだよね……。
「みんなのためにも退治に行かなくちゃ」
「そうだな。っとその前にアイラさん」
ニカがすぐにでも下水道に行こうとするとアイラさんに声をかける。
異世界商店で買った、槍と剣を手渡す。ポカンとしてるアイラさん。いきなり剣と槍が現れたんだから驚くよな~。
「お兄ちゃん! それ……」
「インベントリ……」
ニカとアイラさんが驚いて声をもらす。二人に微笑むと下水道へと下る。グールは上ってきてないみたいだ。
「ハヤト殿は凄いな」
「うん! ハヤトお兄ちゃんは凄いんだ!」
上からそんな声が聞こえて恥ずかしくなってくる。でも、そんなことお構いなしにグールが近づいてきた。
ボロボロの武器で戦わせるのは申し訳ないからね。それにアイラさんも僕らに隠し事をしてた。これでおあいこってことで。
僕は息を吐いて気合を入れる。二人が下りてくるまでグールを引きつけておきますか。
「キャ~!!!」
「え!?」
町中から声が聞こえてくる。女性の叫び声に続いて男性の叫びも聞こえてくる。
「た、大変だ! 下水からグール達が!」
「すぐに向かうぞ」
住人からの報告を聞いて、残っていた冒険者達が動き出す。
「ルガさん達が危ない!」
「お兄ちゃん早く行こう!」
下水の入口の多い路地……そこで暮らしてるルガさん達は一番最初に襲われてしまうはずだ。ニカとアイラさんと共に路地へと駆け走る。
「くははは、これでここら一体は火の海。あの野郎もこれで死ぬ!」
路地へと走ると僕から何もかも奪った犬の獣人が路地にゴミをばらまいて火をつけようとしていた。まったく、どっちがゴミなんだか……。
「て、てめえ! 何見てやがる!」
「あ、あぶない!」
「あ? あえ? ギャァァァァ!」
僕らに振り返る犬の獣人は背後に近づいてきていたグールに気づかずに首元を食いちぎられる。断末魔を残して犬の獣人は絶命していった。魔物と違って死体がその場に残る……。吐き気がして顔を背けるとアイラさんに抱えられて後ろへと跳躍する。
目を背けている間にグールが目の前まで来てたみたいでアイラさんが守ってくれたみたいだ。
「ハヤト殿、どんな悲惨なことを目にしても敵から目を離してはいけません」
「ご、ごめん」
アイラさんに怒られて視線を犬の獣人の死体に。魔物の死体はすぐに消える。だけど、人が死ぬとずっとその場に残るんだ。ゲームみたいな感覚でいたけど、この世界の人たちはしっかりと生きてるんだ。あんな死に方絶対にさせるわけには行かない!
「お兄ちゃん!」
「分かってる! 二人とも片付けるぞ!」
ニカの声に自分を奮い立たせる。この世界で生まれた人はニカでさえ死と向き合ってる。僕が怖気づいている場合じゃない。
「オォォォォ」
グールが声をあげて近づいてくる。路地を埋め尽くすほどのグールが下水道から湧いてきてる。
「グールは生きる者を執拗に狙う。生きているものを憎んでいるのです」
「憎んでる……」
「少し私が片付けます。二人は残ったものを」
「アイラさんが?」
片手に槍、もう片方に剣を持ってアイラさんがグールへと走り出す。グールと接触するその刹那、目に見えるグール達の上半身が消え去って消えていく。
素早く槍と剣を振り回してグールを蹴散らしてるみたいだ。
「凄い! アイラお姉ちゃんこんなに強かったの?」
「感心してる場合じゃない。残ったのを僕らでどうにかしないと」
「う、うん、そうだね」
ニカが声をあげると指示を飛ばす。周りを見るとここら辺にいる冒険者は僕らだけだ。僕らで何とかしないと。
「ハ~ッ!」
グールを蹴散らしていくアイラさん。その後ろを走る僕らも残ったグールを切りつけていく。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
連続して聞こえてくるレベルアップの知らせ。そんなこと気にしている場合じゃない。こんなにグールがいる、ルガさん達が心配だ。
グールの群れが途切れて、布で出来た小屋が見えてきた。急いで中に入る。すると、
「お? おお~、ハヤト~」
「どうしたんだ?」
ルガさんじゃないおじさん達が歓迎してくる。ルガさんはいないみたいだ。
「皆さん逃げて」
「ああ? 何をそんな急いで?」
「グールが入ってきてるんです」
「グール? ああ、さっき倒したゾンビか」
「え? 倒した?」
急かすようにおじさんの腕を引っ張る。おじさんはどっしりとして動かない。首を傾げて聞いてくるおじさんは凄いことを話してきた。
「ダハハ。あのゾンビよ~。噛みつこうとしてきたからよ。蹴散らしてやったぜ」
「ははは、ほんとゾンビは嫌だよな~」
おじさん達はそういって笑いあってる。
「と、とにかくここから出ましょう」
「あ~。俺達はあんな奴らには負けねえよ。心配しないで他のやつを守ってやんな」
「で、でも」
「前に言っただろ。俺達は逃亡者なんだ。それなりに自分の身を守れる。まあ、腹は膨れさせられないけどな」
逃げようというとおじさん達は笑って言ってくる。ルガさんみたいにそれなりに凄い人達だったんだな。無理やり引っ張ってもびくともしないのもうなずけるな。
「じゃ、じゃあ。ルガさんのところに」
「ああ? ルガさんは鍛冶屋で働いてる。鍛冶屋にはそれなりの奴らがいるだろ。それに俺達の仲間も見てるからな」
「そ、そうなんですか」
「ああ、だから普通に暮らしてる一般の人のところに行ってやりな」
「わ、わかりました。皆さん本当に気をつけてくださいね」
おじさん達の無事を確認して、とにかくグールを倒すことにした。下水道への入口まで片付けて上ってくるグールを倒していく。
「どれだけの村や町を……」
これ全部、元は人の死体なんだよね。
「この数はおかしいです。もしかしたらネクロマンサーが関わっているかも」
「ネクロマンサー?」
ゲームの知識では死体を操ることが出来る人の事のはず。でも、この量を操るのは難しいんじゃ?
「これすべてを操るのは難しいと思います。ですがオーガのゾンビが一体現れましたよね。あれが操っているものでグールは作られた魔物。そう考えれば可能です」
「なるほど」
アイラさんの言葉に頷く。操るのは強い魔物のゾンビだけで、グールは作って放つだけ。もしかすると先頭を進む何匹かは操っているのかもしれないな。そうすれば自然と作っただけの魔物は先頭について歩く。ろくでもないやつが黒幕にいそうだな。
「じゃあ、その人を倒そうよお兄ちゃん!」
「うん、そうだね。ってどこにいるかわからないな」
「ん~、そういうずるい人って隠れると思うんだけど、下水ってピッタリだと思うんだけど」
「まさか~……」
ニカの推測に声をもらして、アイラさんと顔を見合う。アイラさんは小さく頷いて答える。
「そう思うでしょ?」
「確かにニカ殿の推測もあり得る」
「ほら~」
ニカが得意げに話すとアイラさんも同意見みたいだ。ってことは下水道が敵のテリトリーになってるってことだよね……。
「みんなのためにも退治に行かなくちゃ」
「そうだな。っとその前にアイラさん」
ニカがすぐにでも下水道に行こうとするとアイラさんに声をかける。
異世界商店で買った、槍と剣を手渡す。ポカンとしてるアイラさん。いきなり剣と槍が現れたんだから驚くよな~。
「お兄ちゃん! それ……」
「インベントリ……」
ニカとアイラさんが驚いて声をもらす。二人に微笑むと下水道へと下る。グールは上ってきてないみたいだ。
「ハヤト殿は凄いな」
「うん! ハヤトお兄ちゃんは凄いんだ!」
上からそんな声が聞こえて恥ずかしくなってくる。でも、そんなことお構いなしにグールが近づいてきた。
ボロボロの武器で戦わせるのは申し訳ないからね。それにアイラさんも僕らに隠し事をしてた。これでおあいこってことで。
僕は息を吐いて気合を入れる。二人が下りてくるまでグールを引きつけておきますか。
応援ありがとうございます!
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