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第一章
第23話 初めて
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「今日はお外~」
昨日、下水道の依頼をしてギルドに報告をして終わった。今日は城壁の外でゴブリンの依頼をやることにした。
昨日と同じようにニカが楽しそうに歌って辺りを見回している。
城壁の周りにグールがいないかの捜査もして欲しいということで城壁の周りをまわっている。グールは北側だけに来たからすぐに引き返すことになる。
「このくらいでいいかな」
「どうしたんだハヤト?」
立ち止まって魔法石を取り出す。アイラが疑問に感じて声をあげたから魔法石を見せると呆れた顔になった。
「また変なことしようとしてる……」
「おにいちゃ~ん……」
アイラとニカにジト目でヤレヤレと首を横に振られた。最近、二人が姉弟に見えてきたな。
「壁が壊れてるでしょ。復元していこうと思ったんだよ」
下水道のひびを直したときに思ったんだ。城壁で戦ったからこっちも傷が凄いと思ったんだよね。魔法が当たったりグールに傷つけられたりね。
まあ、もう一つ試してみたいこともあるんだけど、ということで。
「じゃ~ん」
「魔法石?」
「ふふふ、ニカ。これは普通の魔法石ではありません。なんとエアーストーム魔法が入ってるのだ」
魔法石を取り出して二人に見せるとニカが効いてきたので説明した。二人はぽか~んとして開いた口が塞がらないようだ。
「これを試しうちしたかったんだよね~。風魔法なら城壁の中から見られてもそんなに目立たないだろうしね」
二人がぽか~んとしている間に魔法石へと力を込める。城壁に向かって魔法を放つ。よく野球ボールなんかを壁に当てたな~。とそんな軽い気持ちで魔法を使ってしまった。
「あれ?」
ガリガリ! ゴガン! 幾重にも重なった風の壁が城壁を貫く。幸いにも壁の先には広場が広がっていて建物はなかった。
「お! お兄ちゃん! すぐに直すよ!」
「あ、う、うん……」
唖然としながらもニカの言葉に従って二人で復元の魔法を使う。
せかせかと直していると空気を読まない声が聞こえてくる。
『AirStormを習得しました』
「今それどころじゃ……」
ツッコミを入れるけど虚空に消える。その代わりにニカとアイラの冷たい瞳が僕の前に。
「すみませんでした!」
ジャパニーズ土下座をして二人に謝る。流石に呆れかえる二人、僕も自分に呆れてます。
「まさかoneMagicのエアーストームを使うなんて……」
「は~。お兄ちゃん、流石に今回は僕も擁護できないよ」
アイラとニカが頭を抱える。そんなこと言わずに擁護してほしいんだけどなニカさん。
「まあ、人の目につかなかったから。私達はいいんだが……とりあえず、壁をすべて直してゴブリンを狩りに行こう。エリュシオンも暇してるみたいだし」
アイラがエリュシオンを見て話す。草を食べながらも欠伸をしてるエリュシオン。そんなに暇だったか、なんか申し訳ないな。
「さ! お兄ちゃん、壁直すの済ませちゃお」
「ああ、名誉挽回! すぐに済ませちゃおう」
ニカが手を引っ張ってくる。二人で復元の魔法をしていけばすぐに直せる。エアーストームで壊した壁もものの数秒で直ったからね。
「よし! 終わった。森に行こうか」
壁の修繕を終えて森へと向かう。アイラの操るエリュシオンにニカが乗って二人で駆ける。僕は普通に並走する。疾走のスキルが効果を発揮して馬とも並んで走れるほどの速度になってる。疾走はただ走るだけじゃなくて戦闘でも役に立つ。
「はっ!」
森について早速ゴブリンと鉢合わせ。ゴブリンの背後に回って剣を振るう。ゴブリンは唖然としてドロップアイテムを残して消えていった。
「すご~いお兄ちゃん。いつの間にそんなに早くなったの?」
「相変わらずハヤトは規格外だね」
ニカとアイラが楽しそうに褒めてくる。少し呆れにも似た褒め言葉だな。思わず照れてしまうよ。
そんな余裕を見せていると背中に衝撃が走った。
「ぐっ!?」
「お兄ちゃん!?」
衝撃を受けて思わず手を伸ばす。細長い棒が突き刺さっている。よく見ると槍のようだ。
「油断したね。片付けてくるからニカは治療してあげて。はっ!」
エリュシオンに跨って槍を投げてきたゴブリンへと駆けていくアイラ。ニカが槍を抜いてくれると痛みが電撃のように体に走る。
「ぐっ! はぁはぁ……。ははは、こんなに痛いの初めてだ」
「お兄ちゃん……」
綺麗な布を押し当ててくれるニカ。心配させないように笑顔を作るけどそれが余計に彼を心配させてしまう。あぶら汗が凄い出てるから無理してるのが分かっちゃうんだろうな。
『痛み耐性を習得しました』
「あっ。痛くなくなった」
「え? ほんと?」
システム音声が聞こえてきてスクッと立ち上がる。ニカの問いに大きく頷いて答えると抱き着いてくる。そして、更にシステム音声は続けて伝えてくる。
『再生を習得しました』
「……」
「お兄ちゃん! 傷口がなくなってる!?」
はははと呆れて口角が上がる。ニカが背中を見てくれて驚愕してるよ。再生なんて習得したらもれなく人じゃなくなるんじゃないかな?
「こっちは終わった。依頼数の討伐部位は手に入ったぞ。どうしたんだ二人とも。凄い顔になってるぞ」
アイラが帰ってきてアイテムを見せてくる。僕とニカが凄い顔になっていたから心配そうに見てくる。
二人で説明すると再度呆れられてしまった。
「はぁ……次から次へと……。ハヤトは勇者か何かなのか?」
「は、はあ。僕にもわからないよ」
アイラの言葉に首を振って答える。学習アシストさんが凄いだけで、僕は何もしてない。魔法石に関しては異世界商店さんが凄いだけだしね。
「ふう、まあ、ハヤトのことは考えるだけ損かな」
アイラが酷いことを言って来た。少しは考えてほしいな。
「少し行ったところにオークがいたんだ」
「オーク!? 大変だ!」
アイラの報告にニカが飛び上がって声をあげた。オークがいるのがそんなに驚くことなのか?
「ゴブリンと同じなんじゃないの?」
「少し違うんだハヤト。オークはゴブリンと違って繁殖をするんだよ」
「え? 繁殖?」
問いかけるとアイラが答えてくれる。繁殖ってまさか……。
「オークにメスはいない。他種族の女性を使って繁殖するんだ」
くっ殺せ。アイラの説明を聞いて、そんな想像をしてしまう僕。でも、ゴブリンも同じじゃないのかな?
「ゴブリンは木と土と動物の死骸から生まれる。オークは普通に繁殖なんだ」
「へ~」
疑問に思っていたことを正確に説明してくれるアイラ。僕が常識を知らないことは今までのことでよく分かってるみたいだな。助かる。
「だからねお兄ちゃん。オークはゴブリン以上に退治しないといけない魔物なんだ。村なんかの被害じゃすまないくらいのね」
ニカも知ってるみたいで力んで説明してくる。女の敵ってやつなのかもな。
「よ~し! 怪我も治ったし、すぐに退治しちゃおう!」
「「おお~」」
声をあげると二人とも答えてくれた。
ゴブリン退治がオーク退治にランクアップしてしまった。
昨日、下水道の依頼をしてギルドに報告をして終わった。今日は城壁の外でゴブリンの依頼をやることにした。
昨日と同じようにニカが楽しそうに歌って辺りを見回している。
城壁の周りにグールがいないかの捜査もして欲しいということで城壁の周りをまわっている。グールは北側だけに来たからすぐに引き返すことになる。
「このくらいでいいかな」
「どうしたんだハヤト?」
立ち止まって魔法石を取り出す。アイラが疑問に感じて声をあげたから魔法石を見せると呆れた顔になった。
「また変なことしようとしてる……」
「おにいちゃ~ん……」
アイラとニカにジト目でヤレヤレと首を横に振られた。最近、二人が姉弟に見えてきたな。
「壁が壊れてるでしょ。復元していこうと思ったんだよ」
下水道のひびを直したときに思ったんだ。城壁で戦ったからこっちも傷が凄いと思ったんだよね。魔法が当たったりグールに傷つけられたりね。
まあ、もう一つ試してみたいこともあるんだけど、ということで。
「じゃ~ん」
「魔法石?」
「ふふふ、ニカ。これは普通の魔法石ではありません。なんとエアーストーム魔法が入ってるのだ」
魔法石を取り出して二人に見せるとニカが効いてきたので説明した。二人はぽか~んとして開いた口が塞がらないようだ。
「これを試しうちしたかったんだよね~。風魔法なら城壁の中から見られてもそんなに目立たないだろうしね」
二人がぽか~んとしている間に魔法石へと力を込める。城壁に向かって魔法を放つ。よく野球ボールなんかを壁に当てたな~。とそんな軽い気持ちで魔法を使ってしまった。
「あれ?」
ガリガリ! ゴガン! 幾重にも重なった風の壁が城壁を貫く。幸いにも壁の先には広場が広がっていて建物はなかった。
「お! お兄ちゃん! すぐに直すよ!」
「あ、う、うん……」
唖然としながらもニカの言葉に従って二人で復元の魔法を使う。
せかせかと直していると空気を読まない声が聞こえてくる。
『AirStormを習得しました』
「今それどころじゃ……」
ツッコミを入れるけど虚空に消える。その代わりにニカとアイラの冷たい瞳が僕の前に。
「すみませんでした!」
ジャパニーズ土下座をして二人に謝る。流石に呆れかえる二人、僕も自分に呆れてます。
「まさかoneMagicのエアーストームを使うなんて……」
「は~。お兄ちゃん、流石に今回は僕も擁護できないよ」
アイラとニカが頭を抱える。そんなこと言わずに擁護してほしいんだけどなニカさん。
「まあ、人の目につかなかったから。私達はいいんだが……とりあえず、壁をすべて直してゴブリンを狩りに行こう。エリュシオンも暇してるみたいだし」
アイラがエリュシオンを見て話す。草を食べながらも欠伸をしてるエリュシオン。そんなに暇だったか、なんか申し訳ないな。
「さ! お兄ちゃん、壁直すの済ませちゃお」
「ああ、名誉挽回! すぐに済ませちゃおう」
ニカが手を引っ張ってくる。二人で復元の魔法をしていけばすぐに直せる。エアーストームで壊した壁もものの数秒で直ったからね。
「よし! 終わった。森に行こうか」
壁の修繕を終えて森へと向かう。アイラの操るエリュシオンにニカが乗って二人で駆ける。僕は普通に並走する。疾走のスキルが効果を発揮して馬とも並んで走れるほどの速度になってる。疾走はただ走るだけじゃなくて戦闘でも役に立つ。
「はっ!」
森について早速ゴブリンと鉢合わせ。ゴブリンの背後に回って剣を振るう。ゴブリンは唖然としてドロップアイテムを残して消えていった。
「すご~いお兄ちゃん。いつの間にそんなに早くなったの?」
「相変わらずハヤトは規格外だね」
ニカとアイラが楽しそうに褒めてくる。少し呆れにも似た褒め言葉だな。思わず照れてしまうよ。
そんな余裕を見せていると背中に衝撃が走った。
「ぐっ!?」
「お兄ちゃん!?」
衝撃を受けて思わず手を伸ばす。細長い棒が突き刺さっている。よく見ると槍のようだ。
「油断したね。片付けてくるからニカは治療してあげて。はっ!」
エリュシオンに跨って槍を投げてきたゴブリンへと駆けていくアイラ。ニカが槍を抜いてくれると痛みが電撃のように体に走る。
「ぐっ! はぁはぁ……。ははは、こんなに痛いの初めてだ」
「お兄ちゃん……」
綺麗な布を押し当ててくれるニカ。心配させないように笑顔を作るけどそれが余計に彼を心配させてしまう。あぶら汗が凄い出てるから無理してるのが分かっちゃうんだろうな。
『痛み耐性を習得しました』
「あっ。痛くなくなった」
「え? ほんと?」
システム音声が聞こえてきてスクッと立ち上がる。ニカの問いに大きく頷いて答えると抱き着いてくる。そして、更にシステム音声は続けて伝えてくる。
『再生を習得しました』
「……」
「お兄ちゃん! 傷口がなくなってる!?」
はははと呆れて口角が上がる。ニカが背中を見てくれて驚愕してるよ。再生なんて習得したらもれなく人じゃなくなるんじゃないかな?
「こっちは終わった。依頼数の討伐部位は手に入ったぞ。どうしたんだ二人とも。凄い顔になってるぞ」
アイラが帰ってきてアイテムを見せてくる。僕とニカが凄い顔になっていたから心配そうに見てくる。
二人で説明すると再度呆れられてしまった。
「はぁ……次から次へと……。ハヤトは勇者か何かなのか?」
「は、はあ。僕にもわからないよ」
アイラの言葉に首を振って答える。学習アシストさんが凄いだけで、僕は何もしてない。魔法石に関しては異世界商店さんが凄いだけだしね。
「ふう、まあ、ハヤトのことは考えるだけ損かな」
アイラが酷いことを言って来た。少しは考えてほしいな。
「少し行ったところにオークがいたんだ」
「オーク!? 大変だ!」
アイラの報告にニカが飛び上がって声をあげた。オークがいるのがそんなに驚くことなのか?
「ゴブリンと同じなんじゃないの?」
「少し違うんだハヤト。オークはゴブリンと違って繁殖をするんだよ」
「え? 繁殖?」
問いかけるとアイラが答えてくれる。繁殖ってまさか……。
「オークにメスはいない。他種族の女性を使って繁殖するんだ」
くっ殺せ。アイラの説明を聞いて、そんな想像をしてしまう僕。でも、ゴブリンも同じじゃないのかな?
「ゴブリンは木と土と動物の死骸から生まれる。オークは普通に繁殖なんだ」
「へ~」
疑問に思っていたことを正確に説明してくれるアイラ。僕が常識を知らないことは今までのことでよく分かってるみたいだな。助かる。
「だからねお兄ちゃん。オークはゴブリン以上に退治しないといけない魔物なんだ。村なんかの被害じゃすまないくらいのね」
ニカも知ってるみたいで力んで説明してくる。女の敵ってやつなのかもな。
「よ~し! 怪我も治ったし、すぐに退治しちゃおう!」
「「おお~」」
声をあげると二人とも答えてくれた。
ゴブリン退治がオーク退治にランクアップしてしまった。
応援ありがとうございます!
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