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第三章 王都リナージュ

第三十話 王族の血印

「エンドツリーは完成していたのよ。もうちょっと大きくしたかったけれど仕方ないわね」

 城を空高く持ち上げてそびえたつ冥樹、エンドツリーと言われた終わりを告げる木。王都の城を軽々と持ち上げた樹はユアンの宮殿にツタを伸ばし始めた。

「終わりを告げる樹。英雄のあなたたちはどうするのかしらね」
「カテジナ叔母さん!」
「そういえば、名前を言っていなかったわね。私はノーブルローズよ。知っているでしょ。私の子供を弄んでくれたようだけれど、所詮、その子は子供の一人にすぎなかったのよ。平和思想ばかり言っていたしね」

 カテジナさんの中に入っていたのはやはりノーブルローズだった。アルテナ様に入っていた個体の親となるもの。僕のスキルでも種に戻すことはできなかった。植物のツタもなぜか効かない、どういうことなのだろうか?
 カテジナさんはツタの上に乗り空高く持ち上げられて城へと上って行った。シャラもアリス様を担いで一緒にツタに持っていかれたのを見るとやはりシャラも敵なのだろうか?

「私の、私たちの城が・・」
「とりあえず、避難しましょう。バルト様も」
「あ、ああ。すまなかった・・」

 意気消沈しているバルト様を立たせると僕らは一緒に宮殿をでて冒険者達と合流した。冒険者達は城に入っていたのだが異変を感じて外へと出ていたようだ。






「無事だったか、よかった。これはどういうことなんだ?」

 僕らモナーナとルナさんと合流して内壁の門の前に帰ってくると冒険者の人達が集まっていた。そこでルワースさんが僕らに事の詳細を聞いてきた。僕とユアンは自分たちの出生の秘密以外の話をする。ルワースさんは首をかしげていた。

「冥樹を育てていたとは、それにしてもバルト様!なぜ疑わなかったのですか!」
「いや、世界に恵みを」
「それならば貴族達を説得して畑を増やすとかできたでしょう。あなたは王様なのですよ」

 ルワースさんはバルト様を叱り始めた。確かに王様ならばある程度のことはできるだろう。それをしなかったバルト様が悪い。

「そんなことよりもあの冥樹を育てるだけの人たちはどうやって集めたのですか?」
「それは・・・」
「バイスだよ」

 冒険者達をかき分けてバックルが声をあげた。

「・・・」
「バイスが人間を確保していたんだ。大体の人間は罪のある罪人だったが最近は司祭や騎士達なんかも誘拐していたみたいだな」 
「バルト様!」
「本当にすまなかった。しかし、これも世界を豊かにさせるものだと思って」
「利用されていたわけだがそれでも人を使ってまですることかね」

 バックルの報告を聞いてルワースさんが憤りをあらわにした。バルト様は確かに人のためだと思ったのだろうけどそんな犠牲の上に豊かになっても意味がないな。

「バルト様はやってはいけないことをした。しかし、今はそのことをとがめるつもりはありません。この騒動が収まったら議題に挙げるとして、ルーク君ユアン君ちょっといいかね?」
「「はい?」」

 僕とユアンはルワースさんに促されてグガインさんの宿屋のリビングへと案内された。モナーナとルナさんそれにロドフもついてきている。そこにはハサミやナイフなどが並べられていてグガインさんが白服に白いマスクを着ていた。

「これは?」
「実は私は尋問もやっていましてね。それでマゲンといいましたか、その人を調べることにするんですよ」
「は~?」
「とりあえず。その椅子に縄で縛りつけてください」

 ルワースさんが得意げにハサミをちらつかせて話した。
 いわれた通り僕らは眠っているマゲンを椅子に座らせて縄で縛る。尋問なんてしなくてもルナさんがいるんだけどね。

「先に私がやらせていただきます」
「おや、エルフも尋問をするのですか?」
「いえ、私はそういう力を持っているんです」
「ほ~、我がクランに欲しい人材ですね」

 ルナさんがマゲンの閉じている目を開いて目を見ていく。しばらくするとルナさんは口を開いた。

「結論からいいますと確かにマゲンはバルトを使い人を集めていたそうです。初期の罪人で今の冥樹が生まれ、それを大きくするために今回の地下にいた人たちが集められたそうですね」
「そうか、罪人と言っても中には仕方なく盗みを働いたものもいるだろうに・・・」

 こういった大きな街にはお金がなくて路地で暮らす人たちもいた。僕は掃除をしていて気づくべきだったんだ。路頭に迷っている人がいないことに、それはとても不自然でおかしなことだった。バイスはそう言った人達に食べ物を与えて王城の地下に招いて命を奪った。その命であの樹は育ち王城に復讐をしている。何だか感慨深い。

「今回、救出できた者たちは命に別状はない。これまでのことを説明すると憤っていて今にもあの樹へと攻撃を仕掛けてしまいそうだ。あちらから何も反応がないのだからあまり刺激してほしくないのだが」

 城を持ち上げたまま、冥樹はウネウネと動いているだけである。

「それにしても、なぜノーブルローズはアリス様を?」
「それはまだわかっていません。なんでなんだろう?」

 宮殿の屋上でもアリス様は気絶したままで最後シャラが担ぎ上げて一緒に冥樹に連れ去られていた。最後までアリス様のことは何もわからずじまいだった。

「王族の血だろうな・・・」
「バルト様?」

 部屋の扉に手をかけてバルト様が話し出した。

「伝承では冥樹は王族の血を求めて世界を食らいつくしていったと書いてあった」
「それならばバルト様もそうでしょう?」
「確かに私も王族の血が流れている。伝承にある王族の血がスキルのことだったら話は別だ」

 バルト様はそう言って空いていた椅子に腰かけて頭を抱えだした。

「アリスは歴代の王族に受け継がれてきたスキルを持って生まれた。私が受け継げなかったスキル、[王族の血印]。なぜか私には受け継がれなかったその[王族の血印]はアリスに受け継がれたのだ。冥樹はそれを求めているんだと思う」
「そのスキルに何があるんだろう。冥樹が求める何かがあるの?」
「それは私にも分らんが、冥樹は世界を滅ぼすために成長をすると記されていた。それに関係している何かが[王族の血印]にあるのかもしれない」

 バルト様の顔はみるみる青ざめていく。実の娘が世界を滅ぼすものの近くにいると思うだけで生きた心地がしないのかもしれない。

「あなた!」
「アルテナ?」
 
 僕らのいる部屋にアルテナ様が入ってきてバルト様にビンタを当てた。部屋に大きな破裂音が響いて僕たちはびっくりしてしまう。

「何を・・」
「あなたがそんなことでどうするのですか、民の為にやっていたことが間違いだったのですよ。それならばこれから正しいことをしていけばいいんです。これからを間違えなければいいんですよ」
「しかし、私は民を傷つけてしまった。私はもう、王ではない」

 アルテナ様とバルト様は涙しながらお互いの話を聞き入っている。確かに過ぎてしまったことは仕方ないと区切る必要はあるかもね。

「何を言っているのですか。まだ、あなたは王ですよ。あの冥樹を見事に倒せば、みんなも納得してくれるかもしれませんよ」
「そうです!あなたはまだバルト王。みんなの憧れた強い王に戻ってください」
「こんな私を導いてくれるのか?」
「懺悔している人に石礫を投げる人もいるでしょうが今はその時ではありませんからね」
「少なくともこの中にはそういった人はいないね」

 王様の弱みを手に入れたから英雄街道まっしぐらにはならないですみそうだし、僕も本気を出してみようかな。

 ルワースさんとバルト様達はこれからのことを話し合っていく。僕らは自由にうごいてくれと言われたので街でお買い物。お城が空高く掲げられているのにみんなは日常生活を送っている。悲観してても仕方ないって感じなのかな?

「私らの街にはバルト様がいらっしゃる。あんな樹なんかに負けはしないさね」
「ああ、ドレイクの群れを追い払ったバルト様ならばあんなもん」

 武勇で知られるバルト様。その為、みんなは口々に大丈夫だと言っている。しかし、時折見せる悲しげな顔が僕の胸を締め付けた。みんなやっぱり不安なんだろうな。

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