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第六話 無職になって最初のお仕事
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「サキもパパといっしょにおふろはいるー!」
エレオノーラを抱きしめていたところで、サキちゃんがお風呂場に飛び込んできた。
すっぽんぽんだった。
「あー! エレちゃんだけずるいっ。サキもくっつく!!」
エレオノーラに対抗するかのように彼女は俺の足元にしがみついてくる。
ふと、冷静になって今の状況を考えてみた。
汚らしい青年が裸の幼女二人に抱きしめられている――うん、これはまずいな。倫理的に。
「ちょ、ちょっと待って! 俺は出ていくから、二人でお風呂入っていいよ」
そう伝えると、二人は不満そうにほっぺたを膨らませる。
「ダメ! サキ、パパといっしょがいいっ」
「この子の言う通りよ。ずっと私を見ててって、言ったじゃない」
「でも、お風呂は流石に……」
小さいけれど彼女たちだって女の子である。
俺なんかが一緒にいるのは良くないと思う。
「ご主人様、それはなりません。出ていくのは契約違反でございます」
サキちゃんに続いて乱入してきたルーラが、淡々とそんなことを言った。裸で。
「け、契約違反?」
「ご主人様はわたくしたちに雇われている身分なのでございますので」
「えぇ……これは仕事じゃないような……」
「甘やかされることが仕事とお伝えしたはずです。お風呂に入れてあげますので、どうかそのままで」
「仕事、か……」
それを盾にされると弱い。
何もできない俺を雇ってくれている主に、強く言い返すことはできなかった。
「だけど、やっぱり情操教育的な問題があるというかっ」
それでもやっぱりためらいがあったのだが。
「おにーちゃん! たいへん、わたし……一緒にお風呂入らないと、世界滅ぼしちゃいたくなりそう!」
最後に入ってきた邪神が満面の笑顔で脅してきたものだから、俺はいよいよ断れなくなった。
「世界を人質にするのは卑怯じゃない?」
しかも、マニュなら余裕で滅ぼせそうだから怖い。
「にひひ~っ。邪神なので、卑怯とか言われても褒め言葉にしか聞こえないでーす」
とぼけた笑顔が、悔しいけど可愛かった。
邪神はともすれば魔王より強いと言われるほどなのだ。現役の頃は人間界で俺に並ぶ強者はいなかったことだし……今の世界にはアンラ・マンユ――マニュに抵抗する力はない。
「くっ……そこまでされると、どうしようもないかも」
エレオノーラへの贖罪。
サキちゃんのおねだり。
ルーラに盾にされた雇用契約。
マニュの脅迫。
四つも理由を重ねられては、なすすべもない。
なので、俺は彼女たちと一緒にお風呂に入ることになった。
「下僕。洋服はきちんと脱ぎなさい?」
「サキがてつだってあげるね!」
「サキちゃん、全部脱がせるの!?」
「恥ずかしいのなら、タオルを使ってくださいませ」
「おにーちゃん、男の人なのにわたしたちより恥ずかしがっててかわいー!」
もみくちゃにされながらシャワーを浴びる。
数日振りだったので、水で身体を流すだけでも気持ち良かった。
「どうぞこちらへ座ってください」
ルーラに促されるままに座ると、彼女は当たり前のように俺の髪の毛を洗い始めた。
「お世話されるのもご主人様のお仕事でございます」
「……恥ずかしいんだけど」
「初めに『たいへんなお仕事です』ってお伝えしたはずです。我慢なさってくださいませ」
口答えは許さないようだ。
うーん、いくら世間知らずな俺でも、こんな仕事が世の中にあるわけないというのは分かる。
でも、彼女たちは『俺が甘やかされる』のを望んでいるのだ。
怪我もして大したことができない体になっていることだし、せめて彼女たちの願い通りになるよう頑張ろう。
さっきは戸惑って反抗してしまったが、次からは気を付けようと思った。
「パパ! おせなか、あらってもいいですかっ?」
ルーラが俺の髪の毛を洗い終えると、サキがうずうずしたようにスポンジを持ってやって来た。
もちろん、よろしくお願いしようとした。
「それとも、しゃせーしますか!?」
しかし、さすがに反抗しないと誓った俺でも、この言葉には反抗するしかなかった。
この子はサキュバスである。小さい頃から周囲のサキュバスにそんな言葉を教えられていたのかもしれないけど……8歳の女の子に言われると、びっくりするものがあった。
「しゃせーはしません」
「そうですか! では、おせなかながしますねっ」
断ってもサキちゃんはケロっとしていた。
たぶん『しゃせー』が何なのかもよく分かってないような気がする。
「んしょっ、んしょっ……パパ、サキね、あらうのおじょうず?」
「うん、上手だよ」
「えへへ~っ。サキ、もっといっぱいあらう!」
彼女に背中を洗ってもらいながら、前側を手早く洗う。
前側はルーラも気を遣ってくれたようで、俺に洗わせてくれた。本当はやりたそうにチラチラ見ていたが、まぁさすがに無理である。
「はい、おわり!」
「サキちゃん、ありがとう」
お礼を言って泡を流す。
すると、既に浴槽に浸かっていた二人が俺を手招きしてきた。
「早く来なさい、下僕。おしゃべりしましょう?」
「おにーちゃん、暇だから早く~」
体も洗い終えたので、サキちゃんとルーラも一緒に浴槽に浸かることにした。
五人も入ると狭かったが、どうにか入りはした。
久しぶりに入ったお風呂は、なんだか色々と騒がしかった――
エレオノーラを抱きしめていたところで、サキちゃんがお風呂場に飛び込んできた。
すっぽんぽんだった。
「あー! エレちゃんだけずるいっ。サキもくっつく!!」
エレオノーラに対抗するかのように彼女は俺の足元にしがみついてくる。
ふと、冷静になって今の状況を考えてみた。
汚らしい青年が裸の幼女二人に抱きしめられている――うん、これはまずいな。倫理的に。
「ちょ、ちょっと待って! 俺は出ていくから、二人でお風呂入っていいよ」
そう伝えると、二人は不満そうにほっぺたを膨らませる。
「ダメ! サキ、パパといっしょがいいっ」
「この子の言う通りよ。ずっと私を見ててって、言ったじゃない」
「でも、お風呂は流石に……」
小さいけれど彼女たちだって女の子である。
俺なんかが一緒にいるのは良くないと思う。
「ご主人様、それはなりません。出ていくのは契約違反でございます」
サキちゃんに続いて乱入してきたルーラが、淡々とそんなことを言った。裸で。
「け、契約違反?」
「ご主人様はわたくしたちに雇われている身分なのでございますので」
「えぇ……これは仕事じゃないような……」
「甘やかされることが仕事とお伝えしたはずです。お風呂に入れてあげますので、どうかそのままで」
「仕事、か……」
それを盾にされると弱い。
何もできない俺を雇ってくれている主に、強く言い返すことはできなかった。
「だけど、やっぱり情操教育的な問題があるというかっ」
それでもやっぱりためらいがあったのだが。
「おにーちゃん! たいへん、わたし……一緒にお風呂入らないと、世界滅ぼしちゃいたくなりそう!」
最後に入ってきた邪神が満面の笑顔で脅してきたものだから、俺はいよいよ断れなくなった。
「世界を人質にするのは卑怯じゃない?」
しかも、マニュなら余裕で滅ぼせそうだから怖い。
「にひひ~っ。邪神なので、卑怯とか言われても褒め言葉にしか聞こえないでーす」
とぼけた笑顔が、悔しいけど可愛かった。
邪神はともすれば魔王より強いと言われるほどなのだ。現役の頃は人間界で俺に並ぶ強者はいなかったことだし……今の世界にはアンラ・マンユ――マニュに抵抗する力はない。
「くっ……そこまでされると、どうしようもないかも」
エレオノーラへの贖罪。
サキちゃんのおねだり。
ルーラに盾にされた雇用契約。
マニュの脅迫。
四つも理由を重ねられては、なすすべもない。
なので、俺は彼女たちと一緒にお風呂に入ることになった。
「下僕。洋服はきちんと脱ぎなさい?」
「サキがてつだってあげるね!」
「サキちゃん、全部脱がせるの!?」
「恥ずかしいのなら、タオルを使ってくださいませ」
「おにーちゃん、男の人なのにわたしたちより恥ずかしがっててかわいー!」
もみくちゃにされながらシャワーを浴びる。
数日振りだったので、水で身体を流すだけでも気持ち良かった。
「どうぞこちらへ座ってください」
ルーラに促されるままに座ると、彼女は当たり前のように俺の髪の毛を洗い始めた。
「お世話されるのもご主人様のお仕事でございます」
「……恥ずかしいんだけど」
「初めに『たいへんなお仕事です』ってお伝えしたはずです。我慢なさってくださいませ」
口答えは許さないようだ。
うーん、いくら世間知らずな俺でも、こんな仕事が世の中にあるわけないというのは分かる。
でも、彼女たちは『俺が甘やかされる』のを望んでいるのだ。
怪我もして大したことができない体になっていることだし、せめて彼女たちの願い通りになるよう頑張ろう。
さっきは戸惑って反抗してしまったが、次からは気を付けようと思った。
「パパ! おせなか、あらってもいいですかっ?」
ルーラが俺の髪の毛を洗い終えると、サキがうずうずしたようにスポンジを持ってやって来た。
もちろん、よろしくお願いしようとした。
「それとも、しゃせーしますか!?」
しかし、さすがに反抗しないと誓った俺でも、この言葉には反抗するしかなかった。
この子はサキュバスである。小さい頃から周囲のサキュバスにそんな言葉を教えられていたのかもしれないけど……8歳の女の子に言われると、びっくりするものがあった。
「しゃせーはしません」
「そうですか! では、おせなかながしますねっ」
断ってもサキちゃんはケロっとしていた。
たぶん『しゃせー』が何なのかもよく分かってないような気がする。
「んしょっ、んしょっ……パパ、サキね、あらうのおじょうず?」
「うん、上手だよ」
「えへへ~っ。サキ、もっといっぱいあらう!」
彼女に背中を洗ってもらいながら、前側を手早く洗う。
前側はルーラも気を遣ってくれたようで、俺に洗わせてくれた。本当はやりたそうにチラチラ見ていたが、まぁさすがに無理である。
「はい、おわり!」
「サキちゃん、ありがとう」
お礼を言って泡を流す。
すると、既に浴槽に浸かっていた二人が俺を手招きしてきた。
「早く来なさい、下僕。おしゃべりしましょう?」
「おにーちゃん、暇だから早く~」
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