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第八話「愛に変わった日~救世主の再臨~」9
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そんな説明とも言えない説明を受けていると、体育館で起きていたことを忘れそうになっていたが、ふと、体育館から煙が上がり始めているのを見て、何事かと私は気づいた。
「―――煙が上がってる、大変っ!!!」
私は立ち上がって、体育館の方を見ながら言った。
「あらま……、母様、派手にやっているようですね」
「そんな落ち着いている場合じゃ……」
「大丈夫ですよ、これくらいで、苦戦する母様ではないですから」
そう言って私を安心させようと少女は言う。
そこまで言わせる、あの女性は一体何者? 常識の通じない世界に私は驚くほかなかった。
さらに煙は大きく巻き起こっていき、よく見ると体育館の中から火の手が登っている様子まで見えた。
私が真奈と女性の心配をしていると、隣にいる少女が視線を上に向けた。
「―――帰ってきました」
その声に導かれるように、私も頭上を見上げると、体育館の屋上の上に立つ女性が平然と真奈をお姫様抱っこしている様子が垣間見えた。真奈は眠っているのか怖がる様子もない。
そして、女性は迷うことなく、5mは軽くある高さから真っすぐに飛び降りてくる。
「―――きゃ、あ、危ないっっ!!!!」
私は思わず目を伏せて叫んだ。
こんな高さから飛び降りたら無事じゃすまない、即死とはいかなくても、骨折など大けがを負って当たり前だ。
だが、再度目をゆっくりと開けると、そこには何の変哲もなくそこに今、飛び降りたはずの女性が真奈を抱えて何事もなかったかのように立っていた。
「そっちも無事のようね」
女性は何事もなかったかのように一言そう言った。
「お帰りなさいです、母様、とんだ災難でしたね」
「危険の芽は摘み取っておかないとね、まったく、この街は退屈しないわね」
「それは誉め言葉にならないですよ」
この騒動の中でも二人が慣れた様子で会話しているのを、私は茫然と見つめるしかなく、まるで生きている世界が二人は違うかのように感じた。
「お二人は一体……」
年齢を感じさせない機敏な動きと艶のある綺麗な肌、八方美人という言葉が合いそうな長い黒髪のロングヘアーをした大人な女性だった。
「毎年、この学園祭には来ているのだけど、ここに住んでいるわけじゃないから、言い表すなら旅人かしら?」
あまり言葉が思いつかなかったのか、この場で考えたような言葉を女性は私に言った。
「母様、ここにいては人が来てしまいます、そろそろ行きましょう」
「そうね、やることは済んだことですし、私たちはここで失礼させていただこうかしら」
そう言葉にして、そっと真奈のことを横たわらせ、“後をお願い”と一言告げて、二人は立ち去ろうとする。
「あの、せめてお名前をっ!」
私は離れていく二人に向けて、最後になるかもしれないと思い、叫んだ。
すると二人はそっと振り返った、口を開いた。
「そうね、せっかく出会えたことですからね。
————私の名前は、赤津羽佐奈、探偵です」
「同じく、赤津探偵事務所、助手の一人の赤津綾芽です」
それだけを告げて、風のように二人は去っていく。
「……あの、どうも、ありがとうございましたっ!!!!」
最後に私は二人に向けて、それだけを何とか言葉にして声を振り絞って伝えるの精一杯だった。
私は赤津羽佐奈、赤津綾芽と名乗った二人組が離れていく姿を見送る。
二人はその声を聞いて、満足そうに手を振って幻のように去っていった。
蜃気楼のように圧倒的な存在感のみを残し、二人の姿が見えなくなった直後、放心状態になっていた私の元に遅れて、事態に気づいた生徒会の後輩や先生がやってきて、私たちは保健室にまとめて救助され運ばれることになった。
「―――煙が上がってる、大変っ!!!」
私は立ち上がって、体育館の方を見ながら言った。
「あらま……、母様、派手にやっているようですね」
「そんな落ち着いている場合じゃ……」
「大丈夫ですよ、これくらいで、苦戦する母様ではないですから」
そう言って私を安心させようと少女は言う。
そこまで言わせる、あの女性は一体何者? 常識の通じない世界に私は驚くほかなかった。
さらに煙は大きく巻き起こっていき、よく見ると体育館の中から火の手が登っている様子まで見えた。
私が真奈と女性の心配をしていると、隣にいる少女が視線を上に向けた。
「―――帰ってきました」
その声に導かれるように、私も頭上を見上げると、体育館の屋上の上に立つ女性が平然と真奈をお姫様抱っこしている様子が垣間見えた。真奈は眠っているのか怖がる様子もない。
そして、女性は迷うことなく、5mは軽くある高さから真っすぐに飛び降りてくる。
「―――きゃ、あ、危ないっっ!!!!」
私は思わず目を伏せて叫んだ。
こんな高さから飛び降りたら無事じゃすまない、即死とはいかなくても、骨折など大けがを負って当たり前だ。
だが、再度目をゆっくりと開けると、そこには何の変哲もなくそこに今、飛び降りたはずの女性が真奈を抱えて何事もなかったかのように立っていた。
「そっちも無事のようね」
女性は何事もなかったかのように一言そう言った。
「お帰りなさいです、母様、とんだ災難でしたね」
「危険の芽は摘み取っておかないとね、まったく、この街は退屈しないわね」
「それは誉め言葉にならないですよ」
この騒動の中でも二人が慣れた様子で会話しているのを、私は茫然と見つめるしかなく、まるで生きている世界が二人は違うかのように感じた。
「お二人は一体……」
年齢を感じさせない機敏な動きと艶のある綺麗な肌、八方美人という言葉が合いそうな長い黒髪のロングヘアーをした大人な女性だった。
「毎年、この学園祭には来ているのだけど、ここに住んでいるわけじゃないから、言い表すなら旅人かしら?」
あまり言葉が思いつかなかったのか、この場で考えたような言葉を女性は私に言った。
「母様、ここにいては人が来てしまいます、そろそろ行きましょう」
「そうね、やることは済んだことですし、私たちはここで失礼させていただこうかしら」
そう言葉にして、そっと真奈のことを横たわらせ、“後をお願い”と一言告げて、二人は立ち去ろうとする。
「あの、せめてお名前をっ!」
私は離れていく二人に向けて、最後になるかもしれないと思い、叫んだ。
すると二人はそっと振り返った、口を開いた。
「そうね、せっかく出会えたことですからね。
————私の名前は、赤津羽佐奈、探偵です」
「同じく、赤津探偵事務所、助手の一人の赤津綾芽です」
それだけを告げて、風のように二人は去っていく。
「……あの、どうも、ありがとうございましたっ!!!!」
最後に私は二人に向けて、それだけを何とか言葉にして声を振り絞って伝えるの精一杯だった。
私は赤津羽佐奈、赤津綾芽と名乗った二人組が離れていく姿を見送る。
二人はその声を聞いて、満足そうに手を振って幻のように去っていった。
蜃気楼のように圧倒的な存在感のみを残し、二人の姿が見えなくなった直後、放心状態になっていた私の元に遅れて、事態に気づいた生徒会の後輩や先生がやってきて、私たちは保健室にまとめて救助され運ばれることになった。
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