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第十五話「フォーシスターズ」1
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同じ頃、演劇クラスを希望したもう一つのクラス、古典芸能研究部の面々はまったく違う現状にあった。
古典芸能研究部では去年の途中から価値観のズレがクラス内で表面化し始め、演劇クラスや映像研究部のような、より一般的な芸術活動への要望が膨らんでいった。
その要因の最たる原因が、四人の少女が作った一つのグループにあった。
クラスメイトの女子四人組で作った“フォーシスターズ”と呼ばれる疑似姉妹グループ。それを応援しようという機運が、部活としての活動に亀裂が大きくなれば大きくなるほど、クラス内で大きくなっていき、今年最初の部活会議で大きな方針転換が行われるきっかけの一つとなった。
フォーシスターズは一年生の頃からの仲良しグループが一から作ったアイドルグループのようなもので、独自の配信プラットフォームを仲間内で作り活動している。
その活動は幅広く、ゲームやラジオをしたり、四人で歌う楽曲なども一般向けに配信サービスで発売され、徐々に学外の顧客を獲得しつつあり、クラスが一丸となって応援する身近なアイドルのような存在にまでなっている。
そんな、今まさに一度価値観の食い違ったクラスをまとめ上げる存在としてフォーシスターズは台頭しており、それを応援しようとする取り組みは、彼女たちを主役に置いたオリジナルの演劇を作るムーブメントにまで発展し、演劇クラスを希望するきっかけとなった。
フォーシスターズの盛り上がりにより、クラス内のまとまりを生みながらとんとん拍子で計画は進み、演劇クラスの座を懸けた対決のため、彼女たちの魅力が詰まった演劇脚本が作られ、その練習や準備も佳境に突入していた。
生徒たちが集まる教室では稽古するには集中できないということで、全体練習をする日以外は、主役であるフォーシスターズの四人は自宅やカラオケボックスを使って演技の相談や掛け合いの練習をすることが多い。
舞台演劇の準備も佳境に入ってきた今日の四人の練習はカラオケボックスで行われ、クラス委員長であり、四人の活動を最初から支援するマネージャー的立場でもある柊 明人は不在であった。
フォーシスターズの疑似4姉妹である天里、エリザ、ウズメ、リズの四人は一つのテーブルを囲うようにソファーに座っている。
四人の名前はグループとしての活動で使っているハンドルネームが多く、本名を用いているのは天里のみだった。
クラスメイトからも、今はこの名前を愛称として呼ばれることが普通になっていて、一年生の頃から活動してきたこと彼女達は、そのことにもう慣れきっているのだった。
カラオケボックスは薄暗い照明で、集まった四人はそこで話し合いをしていた。
窓のない密室の中で、最初は他愛のない日常会話や、今回の演劇にまつわる話だったが、それも毎日続くと話し尽くして飽きてしまっていた。
稽古をただひたすら続けていればよかったが、日々の疲労もあってストレスが溜まり、休憩の時間が日に日に増えている現実があった。
―――そして、稽古に飽きてしまったからか、それとも刺激が必要だったからか、徐々に会話の内容が年頃少女たち特有の雲行きが怪しいものに変わっていった。
この四人の中で誰かが、“みんなで自分たちの歌でも気分転換に歌おう”と、明るいことを言い出せば、この悪い空気も良くなったのかもしれないが、それを言葉にする勇気を見せられる人物はこの場にはいなかった。
突然明るく振舞えば、それは話しをぶった切ったようにも見え、空気を読めていないと叩かれ、より印象は悪くなってしまう。
女の子同士の輪の中で、輪を乱すような目立つ行動や言動をすることがどれほど危険なことか、四人は分かり切っていた。
互いに対立したくないと思えば思うほど、空気を読むために行動は慎重なものになる。
しかし、輪の中で実力差という力関係は存在し、不平を抱えたものの言葉ばかりが恨みとなって私情として流れてしまう。
「リズ本当練習してきてる? もうすぐ本番なのに、こんなんじゃ、あなたのせいで間に合わないわよ?」
メンバーの中でひと際言葉の強いエリザがリズにそう言った。
クラスメイトと一緒の時は自制して言葉にしないような心ない言葉だった。
仲良しグループであるがゆえの遠慮のない会話のやり取りだが、リズは大人しい性格なのでこういった雰囲気に慣れておらず、強く反論せずすぐに謝ってしまう性格だった。
「うん、分かってるけど、これでも毎日頑張ってるよ」
クラスメイトのいる前と違う高圧的な態度でリズを見るエリザに対して、リズは言い返したが、リズの声は小さく自信なさげなものだった。それはリズ自身も迷惑を掛けていることを自覚しているからに他ならない。
「今更脚本書き直したりできないんだから、しっかりしてよね」
そう遠慮なく言葉を言い放つエリザにリズは怖気づき、小さく頷きながら「うん」と返事をした。
「まぁまぁ、エリザ、それくらいにしておきなさいよ」
四人の中でリーダー格である天里はエリザにそう言って、リズを責めるのを制止させた。
天里はリーダー格として、クラスメイトからも見られているが、リズに対して優しいかと言えばそういうわけでもない。
常に中立の立場に立とうと振舞い、目的を達成することを優先するタイプで、時には意見が食い違ったまま、話しを中断させることもよくあり、その上で、状況によってリズのキャパシティ以上の努力を課す厳しいことだって口にする性格だった。
どちらかというと、リズに優しいのはウズメの方で、リズが相談する相手もその多くがウズメだった。
この日の練習も、途中からは気が進まない空気になり、稽古が進まないまま解散となった。
古典芸能研究部では去年の途中から価値観のズレがクラス内で表面化し始め、演劇クラスや映像研究部のような、より一般的な芸術活動への要望が膨らんでいった。
その要因の最たる原因が、四人の少女が作った一つのグループにあった。
クラスメイトの女子四人組で作った“フォーシスターズ”と呼ばれる疑似姉妹グループ。それを応援しようという機運が、部活としての活動に亀裂が大きくなれば大きくなるほど、クラス内で大きくなっていき、今年最初の部活会議で大きな方針転換が行われるきっかけの一つとなった。
フォーシスターズは一年生の頃からの仲良しグループが一から作ったアイドルグループのようなもので、独自の配信プラットフォームを仲間内で作り活動している。
その活動は幅広く、ゲームやラジオをしたり、四人で歌う楽曲なども一般向けに配信サービスで発売され、徐々に学外の顧客を獲得しつつあり、クラスが一丸となって応援する身近なアイドルのような存在にまでなっている。
そんな、今まさに一度価値観の食い違ったクラスをまとめ上げる存在としてフォーシスターズは台頭しており、それを応援しようとする取り組みは、彼女たちを主役に置いたオリジナルの演劇を作るムーブメントにまで発展し、演劇クラスを希望するきっかけとなった。
フォーシスターズの盛り上がりにより、クラス内のまとまりを生みながらとんとん拍子で計画は進み、演劇クラスの座を懸けた対決のため、彼女たちの魅力が詰まった演劇脚本が作られ、その練習や準備も佳境に突入していた。
生徒たちが集まる教室では稽古するには集中できないということで、全体練習をする日以外は、主役であるフォーシスターズの四人は自宅やカラオケボックスを使って演技の相談や掛け合いの練習をすることが多い。
舞台演劇の準備も佳境に入ってきた今日の四人の練習はカラオケボックスで行われ、クラス委員長であり、四人の活動を最初から支援するマネージャー的立場でもある柊 明人は不在であった。
フォーシスターズの疑似4姉妹である天里、エリザ、ウズメ、リズの四人は一つのテーブルを囲うようにソファーに座っている。
四人の名前はグループとしての活動で使っているハンドルネームが多く、本名を用いているのは天里のみだった。
クラスメイトからも、今はこの名前を愛称として呼ばれることが普通になっていて、一年生の頃から活動してきたこと彼女達は、そのことにもう慣れきっているのだった。
カラオケボックスは薄暗い照明で、集まった四人はそこで話し合いをしていた。
窓のない密室の中で、最初は他愛のない日常会話や、今回の演劇にまつわる話だったが、それも毎日続くと話し尽くして飽きてしまっていた。
稽古をただひたすら続けていればよかったが、日々の疲労もあってストレスが溜まり、休憩の時間が日に日に増えている現実があった。
―――そして、稽古に飽きてしまったからか、それとも刺激が必要だったからか、徐々に会話の内容が年頃少女たち特有の雲行きが怪しいものに変わっていった。
この四人の中で誰かが、“みんなで自分たちの歌でも気分転換に歌おう”と、明るいことを言い出せば、この悪い空気も良くなったのかもしれないが、それを言葉にする勇気を見せられる人物はこの場にはいなかった。
突然明るく振舞えば、それは話しをぶった切ったようにも見え、空気を読めていないと叩かれ、より印象は悪くなってしまう。
女の子同士の輪の中で、輪を乱すような目立つ行動や言動をすることがどれほど危険なことか、四人は分かり切っていた。
互いに対立したくないと思えば思うほど、空気を読むために行動は慎重なものになる。
しかし、輪の中で実力差という力関係は存在し、不平を抱えたものの言葉ばかりが恨みとなって私情として流れてしまう。
「リズ本当練習してきてる? もうすぐ本番なのに、こんなんじゃ、あなたのせいで間に合わないわよ?」
メンバーの中でひと際言葉の強いエリザがリズにそう言った。
クラスメイトと一緒の時は自制して言葉にしないような心ない言葉だった。
仲良しグループであるがゆえの遠慮のない会話のやり取りだが、リズは大人しい性格なのでこういった雰囲気に慣れておらず、強く反論せずすぐに謝ってしまう性格だった。
「うん、分かってるけど、これでも毎日頑張ってるよ」
クラスメイトのいる前と違う高圧的な態度でリズを見るエリザに対して、リズは言い返したが、リズの声は小さく自信なさげなものだった。それはリズ自身も迷惑を掛けていることを自覚しているからに他ならない。
「今更脚本書き直したりできないんだから、しっかりしてよね」
そう遠慮なく言葉を言い放つエリザにリズは怖気づき、小さく頷きながら「うん」と返事をした。
「まぁまぁ、エリザ、それくらいにしておきなさいよ」
四人の中でリーダー格である天里はエリザにそう言って、リズを責めるのを制止させた。
天里はリーダー格として、クラスメイトからも見られているが、リズに対して優しいかと言えばそういうわけでもない。
常に中立の立場に立とうと振舞い、目的を達成することを優先するタイプで、時には意見が食い違ったまま、話しを中断させることもよくあり、その上で、状況によってリズのキャパシティ以上の努力を課す厳しいことだって口にする性格だった。
どちらかというと、リズに優しいのはウズメの方で、リズが相談する相手もその多くがウズメだった。
この日の練習も、途中からは気が進まない空気になり、稽古が進まないまま解散となった。
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