魔法使いと繋がる世界EP2~震災のピアニスト~

shiori

文字の大きさ
145 / 157

最終話「好きという気持ち」1

しおりを挟む
 合同演劇発表会から数日後、稗田知枝ひえだちえは久々に樋坂家ひさかけに訪問しに来ていた。
 水原光と水原舞は用事があるようで、一人訪れた知枝は昼食の準備をする永弥音唯花えみねゆいかのお手伝いをすることになった。

 台所で二人が料理をする一方、リビングの方ではソファーに座った樋坂真奈と樋坂浩二が対戦アクションゲームで熱戦を繰り広げていた。

「おにぃ!! ミサイルばっかりズルいのですよ!! オトコならせーせーどーどーと向かってこいなのですよ!!」
「勝てばいいんだよ、勝てばっ!!」

 遠距離攻撃で翻弄する浩二の攻撃手段に真奈はプンプンと不満げに不平を漏らすが、浩二は上機嫌に真奈の操作する自機を追い詰めていく。

「うー!! また負けた~~!! 次はマナが勝つのです!!」

 何度負けても再戦を求める真奈に浩二は快く応えて、次の対戦が間髪入れずに始まる。


「浩二君は優しいんですね」


 知枝は二人が大きな声を出しながらゲームに熱中する姿を見ながら隣に立つ唯花に言った。

「そう見える?」

 唯花にとってはいつも通りの見慣れた光景であったが、知枝には仲睦なかむつまじい様子に見えた。唯花から見ればもうちょっと手を抜いたり、実力に差の出ないようなゲームを選んだ方がいいのではと日頃思っていた。

「私はずっと周りが大人ばかりの環境の中で育ってきたので、小さい子と遊んであげるような機会もなかったですから」
「そういうことって自分で環境を選ぶのは難しいから、苦労は人それぞれよね。浩二が特別というわけではないのよ、きっと。みんな、各々の事情がある中でこれまで生きて来たと思うから」

「そうですね、ずっと変わらず二人が仲良くしているのはいい関係だと思います。
 家族を大切にするのは、お互いを思いやる気持ちがあってこそですから」
「そうね、私は平凡な家庭で育ったから、ちょっと反抗期でもやって刺激的なことがあった方が面白いかもって思ったけど、二人を見ていると、そんなこと言うのは贅沢なことだってわかったから」

 唯花は自分が恵まれていると自覚していた。

 アルバイトにしてもアイドル活動にしても両親ともに反対されたことがなかった。

 年頃の自分にそれだけの自由を許してくれるのは、ちゃんと信頼してくれている証拠なのだと感謝しなければならないと思っている。

 自由であるからこそ、後悔しないよう自分で考えて何をどうすべきか導き出して行動する。
 未熟な内は難しいけど、そうして人は成長していくのだろうと唯花は考えている。


 会話をしながらも手際よく野菜を包丁で切っていきボウルの中に入れていく唯花。
 知枝は野菜を洗いながら、エプロン姿の唯花のことを羨ましく思ってみていた。
 それは、話しの中で不自由ない家庭で育ったということではなく、自分よりも身長が高くてスタイルが良いことで、エプロン姿も実によく似合っていることだった。

(やっぱり唯花さんのような家庭的な女性の方がいいのかな……)

 料理をそつなくこなす唯花のことを見ていると知枝はついそんなことを考えてしまう。

 特段、モテたいという欲があるわけでもないが、知枝には唯花が魅力的な女性に見えて羨望せんぼうの眼差しで見ていた。

「それじゃあ、そろそろ野菜炒めていこっか」

 そんな知枝の心情も露知つゆしらず野菜を切り終えた唯花は、次の段階に進もうと知枝に話しかけた。

「私はどうすればいいですか?」

 全く料理が出来ないという訳でないが、唯花と比べれば手際よく料理できない料理初心者である知枝は唯花に聞いた。
 チキンカレーを料理するとは聞いてはいたが、調理の進行自体は唯花に任せっきりだった。

「じゃあ、冷蔵庫から鶏肉を出しておいてもらえる?」
「はい、わかりました」

 知枝は大人しく唯花の指示に従い、冷蔵庫から骨付きの鶏肉を見つけて取り出して台所に置く。見るからに食べ応えがありそうで、「浩二君や真奈ちゃんも喜んでくれるだろう」と知枝は思った。

 鼻歌を時々口ずさみながら、涼しげな様子で油をひいて野菜を炒めていく唯花の姿を横目に見る。


「(……)」


 何度となく反芻してきたことが、頭の中で邪推のように流れる。
 最近はつい余計な事ばかり考えてしまう、何でこんなことを不安に思うのだろう。
 知枝は自分の心の変化に自分でもよく分からない状況にあった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい

葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。 絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。 過去の後悔を拭いたい。 誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...