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第六話「策謀の銃声」3
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悲劇的な展開はなんとか回避することが出来て、思わず脱力した。こんなことで重症を負ったり人殺しをしてしまったら目も当てられない。侵入者は捕らえることが出来なかったが本当にこうして無事でいられてよかったと言っていいだろう。
「はぁ……、そこにいるんでしょ? プリミエール、出てきなさい」
私は溜息をついて、この窮地を救ってくれた、私をよく知る人物に言葉を掛けた。
私の声を聞いて、ようやく出てくる気になったのか、半開きのままだったタンスがゆっくりと開き、中から金色の髪をした欧米人の姿が視界に入った。
プリミエール・ゲーテルの姿がタンスから出てくる。
2、3歳しか私と歳は離れていないがずっと大人っぽい身なりをしている。
「どうしてあなたがここにいるのよ?
一人でいいって言っておいたはずでしょう。
本当に、いつからそんなところに隠れてたのよ」
「それはそれは、お嬢様が一人で出て行ってしまうだなんて心配して当然でありましょう?
はぁ……、もうそれは一日でもお嬢様の元気なお姿が確認できませんと不安で夜も眠れませんわ、お嬢様にもしものことがありましたら、ご主人様に申し訳が立ちませんわ」
「うっ……、相変わらず気味の悪い話し方っ!」
「そんな言い方しなくても! もう仕えて何年になるとお思いですか?!」
プリミエールはさも当たり前のように饒舌な口ぶりで言って見せた、彼女にとって本来の主人は私の祖母であり、今は亡き祖母の命で、彼女は私の世話係に任命されている。
プリミエールとの関係は世話係に任命されてからもう10年近くも経っていて、それは最初、周りから見れば子ども同士の友達のような関係であったが、今では私に最も忠誠を持って遣う人物となっている。
実際世話係としても、秘書としての役割としても、プリミエールにお世話になっているところは多く、アメリカにいた頃も、日本の事や稗田家の事、社会情勢など色々なところで彼女の知恵を借りている。
祖母が亡くなった後でもそうした支援、手助けを引き続き続けてくれていること、それは私にとって最も信頼を寄せているところで、普段は邪険に扱ったりはしないのだが、今回は流石に有難迷惑というものだ。
「でも、よかったでしょう? わてぃしがいないと危なかったところではないですか? 本当に銃弾を浴びていたら大変な事態ですよ」
「プリミエールはそんな余計な心配しなくていいのよ、これは私が決めたことなんだから。
それに、プリミエールがいなくたって、さっきの銃声に気付いてホテルの従業員が一部屋一部屋回ってくるわよ。だから私はどのみち、時間さえ稼げれば問題なかったのよ」
「そんなに強がっちゃってお嬢様ったら、ホント可愛いったらたまりませんわね。ホントはわてぃしが来てくれて嬉しくてたまらないんでしょう? 素直にそう言ってくださいまし」
「――――そんなことないに決まってるでしょ、ありえないありえないありえないんだってばーーーっっっ!!!」
ちょっと照れくさそうにすると、ここぞとばかりにプリミエールは調子に乗ってしまう。
そんなプリミエールに私は大きな声で否定してみせるのだった。
(あぁ……、この子ったら本当に騒がしい……、だからずっと張り付いてこられちゃうと困るのよ)
私は悪態をついて、なんとかプリミエールには帰ってもらわないといけないなと考えた。
「もう付いてきちゃダメよ、水原家の人にあなたを紹介するつもりはなんだから」
「そんなのあんまりです……、光さんや舞さんのお姿を陰から見守ることしかできないだなんて……っ。わてぃしにはお嬢様の素晴らしさ、キュートな過去を説明して差し上げる義務が」
「覗かなくたっていい! 余計な事言わなくていい! そんなことする変態は帰ってちょうだい!」
私はじっとプリミエールに覗かれるのを想像して”そんなの耐えられるはずない!”と思わず思ってしまった。
「お客様、只今不審な物音がしましたので一部屋ずつ回っております、突然ですが失礼させていただきます……」
プリミエールと言い争っていると部屋の外からフロントの人か支配人か分からないが、ホテルの従業員の声が聞こえてきた。
そして、急いで呼び止めようとするも間に合わず、そのまま扉の鍵はオープンにされ、従業員が扉を開いて、中の様子を覗いてくる。
「あっ……」
私は思わず呟いた、そして次の瞬間、従業員と目が合ってしまう。
「お客様、不審な物音がしま……あっ……」
そして私は今の自分の容姿を思い出して、それを今一度自分で確かめて愕然とした。そう、私は今バスタオル一枚のまま初対面のこの人と向かい合っているのだ。
「き、きゃぁぁあぁぁぁぁぁあああぁぁあああぁぁあぁぁぁあ!!!!!!!」
「あっ……、失礼いたしました!!!!」
私の絶叫の直後、従業員もこの状況に気付いたように慌てて部屋を飛び出していく。
扉は再び閉じられ、私とプリミエールはその場に取り残された。
「あぁ……、もうヤダ……、こんなところを見られるだなんて……」
「そうですね! 許せません! わてぃし以外にお嬢様のこんなお美しい破廉恥なところを見られるだなんて!」
「何言ってんのよ! プリミエールも同罪よ! 早く出ていきなさい!!」
私はそう言って叫んで、一秒でも早くプリミエールを追い出そうとするが、プリミエールはなかなか帰ってはくれず、私は逃げるように再び脱衣所に戻って着替えを済ませることとなった。
「はぁ……、そこにいるんでしょ? プリミエール、出てきなさい」
私は溜息をついて、この窮地を救ってくれた、私をよく知る人物に言葉を掛けた。
私の声を聞いて、ようやく出てくる気になったのか、半開きのままだったタンスがゆっくりと開き、中から金色の髪をした欧米人の姿が視界に入った。
プリミエール・ゲーテルの姿がタンスから出てくる。
2、3歳しか私と歳は離れていないがずっと大人っぽい身なりをしている。
「どうしてあなたがここにいるのよ?
一人でいいって言っておいたはずでしょう。
本当に、いつからそんなところに隠れてたのよ」
「それはそれは、お嬢様が一人で出て行ってしまうだなんて心配して当然でありましょう?
はぁ……、もうそれは一日でもお嬢様の元気なお姿が確認できませんと不安で夜も眠れませんわ、お嬢様にもしものことがありましたら、ご主人様に申し訳が立ちませんわ」
「うっ……、相変わらず気味の悪い話し方っ!」
「そんな言い方しなくても! もう仕えて何年になるとお思いですか?!」
プリミエールはさも当たり前のように饒舌な口ぶりで言って見せた、彼女にとって本来の主人は私の祖母であり、今は亡き祖母の命で、彼女は私の世話係に任命されている。
プリミエールとの関係は世話係に任命されてからもう10年近くも経っていて、それは最初、周りから見れば子ども同士の友達のような関係であったが、今では私に最も忠誠を持って遣う人物となっている。
実際世話係としても、秘書としての役割としても、プリミエールにお世話になっているところは多く、アメリカにいた頃も、日本の事や稗田家の事、社会情勢など色々なところで彼女の知恵を借りている。
祖母が亡くなった後でもそうした支援、手助けを引き続き続けてくれていること、それは私にとって最も信頼を寄せているところで、普段は邪険に扱ったりはしないのだが、今回は流石に有難迷惑というものだ。
「でも、よかったでしょう? わてぃしがいないと危なかったところではないですか? 本当に銃弾を浴びていたら大変な事態ですよ」
「プリミエールはそんな余計な心配しなくていいのよ、これは私が決めたことなんだから。
それに、プリミエールがいなくたって、さっきの銃声に気付いてホテルの従業員が一部屋一部屋回ってくるわよ。だから私はどのみち、時間さえ稼げれば問題なかったのよ」
「そんなに強がっちゃってお嬢様ったら、ホント可愛いったらたまりませんわね。ホントはわてぃしが来てくれて嬉しくてたまらないんでしょう? 素直にそう言ってくださいまし」
「――――そんなことないに決まってるでしょ、ありえないありえないありえないんだってばーーーっっっ!!!」
ちょっと照れくさそうにすると、ここぞとばかりにプリミエールは調子に乗ってしまう。
そんなプリミエールに私は大きな声で否定してみせるのだった。
(あぁ……、この子ったら本当に騒がしい……、だからずっと張り付いてこられちゃうと困るのよ)
私は悪態をついて、なんとかプリミエールには帰ってもらわないといけないなと考えた。
「もう付いてきちゃダメよ、水原家の人にあなたを紹介するつもりはなんだから」
「そんなのあんまりです……、光さんや舞さんのお姿を陰から見守ることしかできないだなんて……っ。わてぃしにはお嬢様の素晴らしさ、キュートな過去を説明して差し上げる義務が」
「覗かなくたっていい! 余計な事言わなくていい! そんなことする変態は帰ってちょうだい!」
私はじっとプリミエールに覗かれるのを想像して”そんなの耐えられるはずない!”と思わず思ってしまった。
「お客様、只今不審な物音がしましたので一部屋ずつ回っております、突然ですが失礼させていただきます……」
プリミエールと言い争っていると部屋の外からフロントの人か支配人か分からないが、ホテルの従業員の声が聞こえてきた。
そして、急いで呼び止めようとするも間に合わず、そのまま扉の鍵はオープンにされ、従業員が扉を開いて、中の様子を覗いてくる。
「あっ……」
私は思わず呟いた、そして次の瞬間、従業員と目が合ってしまう。
「お客様、不審な物音がしま……あっ……」
そして私は今の自分の容姿を思い出して、それを今一度自分で確かめて愕然とした。そう、私は今バスタオル一枚のまま初対面のこの人と向かい合っているのだ。
「き、きゃぁぁあぁぁぁぁぁあああぁぁあああぁぁあぁぁぁあ!!!!!!!」
「あっ……、失礼いたしました!!!!」
私の絶叫の直後、従業員もこの状況に気付いたように慌てて部屋を飛び出していく。
扉は再び閉じられ、私とプリミエールはその場に取り残された。
「あぁ……、もうヤダ……、こんなところを見られるだなんて……」
「そうですね! 許せません! わてぃし以外にお嬢様のこんなお美しい破廉恥なところを見られるだなんて!」
「何言ってんのよ! プリミエールも同罪よ! 早く出ていきなさい!!」
私はそう言って叫んで、一秒でも早くプリミエールを追い出そうとするが、プリミエールはなかなか帰ってはくれず、私は逃げるように再び脱衣所に戻って着替えを済ませることとなった。
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