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最終話「14少女漂流記」5

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「これが開かれているということは、私はもう死んでいるのでしょう。
 
 そうです、もう分かっていることと思いますが、魔法使いといえど万能なのではありません。

 死ぬときは死ぬ、人間も魔法使いも変わりません、

 ただ、重要なことは、これからいずれ再び現れる人類の“敵”に対抗できるのは、覚醒を果たした魔法使いだけであるということです。
 
 彼らにはあらゆる兵器が通用しませんでした、それは今までの歴史が証明していることです、その歴史自体がすべて秘匿され機密とされている以上、ほとんどの人が知りえないことで、理解のできないであろうことですが。

 しかし、その“敵”は現に存在し、影となって見えないところで大きな力を蓄え、人智を超えた現象を用いて、多くの災厄を引き起こし、大勢の人が犠牲となっています。

 それに対抗できるのが魔法使いだけ持つ、干渉力と呼称している特殊な能力によるものです。

 歴史の裏でこれまで魔法使いはこの干渉力を使いこなし、“人類の敵”と戦いを繰り広げてきました。

 魔法使いが干渉力の応用で、物理学的に検知できる発現力を会得し、活用することもできますが、これはあくまでも応用であり、魔法使いの原理はその身の魔力による干渉力が主体となっています。

 この手記はその魔法使いと絡めた、舞原市で起きた2029年の災厄の記録です。

 記録は手記として、主に私の視点で記録しています。

 これは隠された歴史の謎を紐解くために重要なことです。
 何故隠されなければならなかったのか、その理由もすべてを読み解くことで見えてくることでしょう。

 さて、本当の事実を知る覚悟が出来たのなら、この手記を解読してください。
 14人の少女を中心に繰り広げられた、“本当の敵”との14日間の戦争の歴史を。

 この記録が未来に繋がるものであることを願っています」



 読み終えた最後に“From Kuroeと書かれている。確かに祖母の名前であり、字体もすべて祖母のものだった。
 何度読み返しても、それだけですべてを理解することは難しい、そう思う内容だった。

「……姉さんは、どれだけの秘密を抱えて亡くなったのでしょう」
「どうにかして、残したかったのでしょう。未来のために、たとえそれが禁じられたことであっても」

 私と紀子さんの言葉は会話というより独り言に近いものだった。

「これでほとんどのページを使ってしまっているみたいだけど、残りのページは何が書かれているのかしら」

 私は文章のキリがよかったせいで、その先のページをまだ開いていなかった。

「そうですね、すみません、内容が内容だったので手が止まっていました」

 私は意を決して次のページを開いた。
 次のページを開くと、文字というよりは点に近いものがページを埋め尽くしていた。

「なんですかこれは、こんなの初めて見ました」
「これを解読してみろということかしら」
「そうみたいですけど、一体どうすれば」
「もしかしたら、凄く小さい字で書いているのかも、そうでないと、残りのページ数から見ても内容に見合わないでしょうし」
「そう……、でしょうね」

 何故こんなややこしい仕掛けをいくつも用意したのかと不満は出てきたが、今更言っても仕方ないので、解読を進めることにした。

「ここにいても、もう仕方ないですし、理科室まで移動しましょうか」

 つまりは顕微鏡で確認したいという事だろう、私は頷いた。

「そうですね、行きましょう」

 一度私は時計を確認して、時間の経つ早さを見に染みながら書斎から出て、理科室まで行くことにした。

 長い間放置されてきた祖母が使っていた書斎に別れを告げ、私たちは地上に出るため書斎を出た。

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