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手紙
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拝啓 前田影月様
これを書くまでに、何枚も紙を無駄にしてしまいました。
何度やっても、途中で涙が止まらなくて、紙を濡らしてしまってダメにしてしまうのです。
こういう私がいるなんて、不思議なくらいです。
いつもは、書く内容がなくて困るくらいなのに、今日はたくさん、本当にキリがないくらい書きたいこと、伝えたいことがあります。
真美のこと
旅のこと
これからのこと
全部ちゃんと伝えたくて、たぶん電話じゃうまく伝えられないので、言葉に書き記すことで伝えられればいいなと思います。
お父さんの丁寧な点字の手紙は好きです、私よりも上手で、ちょっと嫉妬してしまいます。
全部話すと長くなってしまうのですが、まず、真美の事から話そうと思います。
真美のことは残念で仕方ありません。一報を聞いたときは本当に信じられませんでした。
少し前の事で、ずっと覚えていることがあるんです。
それは夜遅くで、私は近くで声が聞こえて、それで目を覚ましたんです。
声の正体は真美でした。最初はすすり泣く声だったからすぐに真美だと気づかなかったのですが、近づいていったらすぐに気づきました。
真美の泣くところに遭遇したのは、それが最初で最後でした。
私は真美に「こんな夜遅くにどうしたの? 何か辛いことでもあったの?」と聞きました。
真美は「ううん、私は平気」といって、大丈夫そうに振舞いました。
そして私は「じゃあ、どうしたの?」と聞くと、真美は気まずそうに、私の日記を見てしまったことを告げました。
その日記は私が普通のノートに手書きで書いた日記でした。
それは私が文字を書く練習も兼ねてずっと書いていたもので、本当に下手くそだから隠していたのだけど、その日は隠すのを忘れて化粧台に置きっぱなしにしていたようです。
真美は言いました、「あなたがこんなに苦労しているなんて知らなかったと、あたしは”目が見えない事がどれだけ大変なことか”、考えが全然足りなかった」と。
私にとってはもう慣れていて、些細なことでも、真美にとっては違ったようです。
真美が下手くそな私の日記帳を笑わずに見てくれたこと、泣いてくれたこと、私の事を理解してくれたこと、そのどれもがとても嬉しくて、眩しくて、そんな真美の気持ちが何よりもうれしかったのを覚えています。
こうした手紙もいつか、点字ではなく普通の便箋で書けるとよいのですが、その領域に達するには、まだまだ努力が必要なようです。
次に旅のことをお知らせします。
パパから貰った砂絵、今も大事にしています。贈ってくれてありがとう。
私は砂絵が届いてからずっと、その意味を考えてきました。
どうして目の見えない私に砂絵を贈ったのか。最初、まるで分りませんでした。
砂絵に触れると、とてもザラザラしていて、本当に本物の砂が使われているのが分かって、嬉しくなりました。例え絵であっても、私にも感じられることがある、触れることで物を把握してきた私にとって、それは新鮮なものでした。
砂絵をきっかけに海に行きたいと思い、私はそこまで旅に出る決意をしました。
パパは信じられないと思うけど、旅の間、ずっと真美がそばにいてくれていると感じていました。本当に手のぬくもりまで感じていたんです、今でも不思議に思います。
でも、私が海まで行けたこと、それだけは確かなことで、私にも砂絵に描かれていたように、自由に外を歩けるんだと、そう信じたくなりました。
これも真美とパパのおかげです。
私は病院暮らしにも施設暮らしにも飽き飽きしていましたが、だからといって、何がしたいわけでもありませんでした、
ただ、平穏な日々が続いていけばいい、そう思っていたんです・
でも今は、あの旅を経験した今は違います。
私はもっと広い世界で暮らしたい。
危険なこともあるかもしれないし、傷つくこともあるかもしれない、でも、自分の力で歩きたいんです、どこまで行けるかわからなくても、自分の望んだ未来に向かって。
だから、手を貸してほしいです。
私が望む世界に羽ばたけるように。
一緒に暮らしましょう。
英語も頑張って勉強して覚えます。
足を引っ張らないよう、迷惑を掛けないように頑張るから、わがまま言わないから。
だから、私のできる限りで、力を合わせて一緒に暮らしましょう。
—―親愛なるパパへ、郁恵より——
これを書くまでに、何枚も紙を無駄にしてしまいました。
何度やっても、途中で涙が止まらなくて、紙を濡らしてしまってダメにしてしまうのです。
こういう私がいるなんて、不思議なくらいです。
いつもは、書く内容がなくて困るくらいなのに、今日はたくさん、本当にキリがないくらい書きたいこと、伝えたいことがあります。
真美のこと
旅のこと
これからのこと
全部ちゃんと伝えたくて、たぶん電話じゃうまく伝えられないので、言葉に書き記すことで伝えられればいいなと思います。
お父さんの丁寧な点字の手紙は好きです、私よりも上手で、ちょっと嫉妬してしまいます。
全部話すと長くなってしまうのですが、まず、真美の事から話そうと思います。
真美のことは残念で仕方ありません。一報を聞いたときは本当に信じられませんでした。
少し前の事で、ずっと覚えていることがあるんです。
それは夜遅くで、私は近くで声が聞こえて、それで目を覚ましたんです。
声の正体は真美でした。最初はすすり泣く声だったからすぐに真美だと気づかなかったのですが、近づいていったらすぐに気づきました。
真美の泣くところに遭遇したのは、それが最初で最後でした。
私は真美に「こんな夜遅くにどうしたの? 何か辛いことでもあったの?」と聞きました。
真美は「ううん、私は平気」といって、大丈夫そうに振舞いました。
そして私は「じゃあ、どうしたの?」と聞くと、真美は気まずそうに、私の日記を見てしまったことを告げました。
その日記は私が普通のノートに手書きで書いた日記でした。
それは私が文字を書く練習も兼ねてずっと書いていたもので、本当に下手くそだから隠していたのだけど、その日は隠すのを忘れて化粧台に置きっぱなしにしていたようです。
真美は言いました、「あなたがこんなに苦労しているなんて知らなかったと、あたしは”目が見えない事がどれだけ大変なことか”、考えが全然足りなかった」と。
私にとってはもう慣れていて、些細なことでも、真美にとっては違ったようです。
真美が下手くそな私の日記帳を笑わずに見てくれたこと、泣いてくれたこと、私の事を理解してくれたこと、そのどれもがとても嬉しくて、眩しくて、そんな真美の気持ちが何よりもうれしかったのを覚えています。
こうした手紙もいつか、点字ではなく普通の便箋で書けるとよいのですが、その領域に達するには、まだまだ努力が必要なようです。
次に旅のことをお知らせします。
パパから貰った砂絵、今も大事にしています。贈ってくれてありがとう。
私は砂絵が届いてからずっと、その意味を考えてきました。
どうして目の見えない私に砂絵を贈ったのか。最初、まるで分りませんでした。
砂絵に触れると、とてもザラザラしていて、本当に本物の砂が使われているのが分かって、嬉しくなりました。例え絵であっても、私にも感じられることがある、触れることで物を把握してきた私にとって、それは新鮮なものでした。
砂絵をきっかけに海に行きたいと思い、私はそこまで旅に出る決意をしました。
パパは信じられないと思うけど、旅の間、ずっと真美がそばにいてくれていると感じていました。本当に手のぬくもりまで感じていたんです、今でも不思議に思います。
でも、私が海まで行けたこと、それだけは確かなことで、私にも砂絵に描かれていたように、自由に外を歩けるんだと、そう信じたくなりました。
これも真美とパパのおかげです。
私は病院暮らしにも施設暮らしにも飽き飽きしていましたが、だからといって、何がしたいわけでもありませんでした、
ただ、平穏な日々が続いていけばいい、そう思っていたんです・
でも今は、あの旅を経験した今は違います。
私はもっと広い世界で暮らしたい。
危険なこともあるかもしれないし、傷つくこともあるかもしれない、でも、自分の力で歩きたいんです、どこまで行けるかわからなくても、自分の望んだ未来に向かって。
だから、手を貸してほしいです。
私が望む世界に羽ばたけるように。
一緒に暮らしましょう。
英語も頑張って勉強して覚えます。
足を引っ張らないよう、迷惑を掛けないように頑張るから、わがまま言わないから。
だから、私のできる限りで、力を合わせて一緒に暮らしましょう。
—―親愛なるパパへ、郁恵より——
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