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1章 絆
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トウちゃんの怪我も順調に回復している。頭の傷も抜糸され、今日は病院に在中しているヘルパーさんに頭を洗ってもらったと喜んでいた。
順調にいけば来週には、腕のギブスも取れる見込みだ。足のギブスは、もう少しかかりそうだけど、ケンケンで移動したりしているのを見ると、全開も遅くはないだろうと思っている。
「ただいま」
僕は、爺ちゃんとお母ちゃんの仏壇に手を合わせた。トウちゃんが、退院したら気持ち良く過ごせるように、家の換気と掃除に立ち寄った。
「しばらく、お家を開けてごめんなさい。今、トウちゃん入院してて、僕は雪ちゃんの家でお世話になってるんだ」
手をしばらく合わせ、お母ちゃんたちに近況を報告した。
まずは、動きやすい服に着替えて、家中の窓を開けて換気をしていく。天気も良いからお布団も干しておこう。
たった二週間、されど二週間。意外と埃が積もって、なんだか薄汚れた感じがする。一部屋ずつハタキで埃を落とし、掃除機をかけていく。トイレやお風呂場も磨いて、廊下の雑巾掛けもしていく。お風呂場がカビだらけにならないように、しっかりと水がはけてタイルが乾くまで、換気を十分にしておこう。
お昼ご飯としてコンビニで買ってきたおにぎりとお茶を取り出し、縁側に腰掛けた。小さいけれど庭もある、春先にトウちゃんと植えたさくらんぼの苗木を観ながら、ゆったりとお昼ご飯を食べた。
さくらんぼの苗木に雀がぴちぴちと止まって遊んでいたので、大先生から渡された携帯電話で、さくらんぼの苗木をパシャリと写す。トウちゃんと雪ちゃんにLINEを送信してごろりと横になった。
雪ちゃんのお家は、タワーマンションのため、ベランダがない。縁側でゴロゴロしたりもできない。改めて、我が家の居心地の良さに安らぎを感じていた。
ホカホカになったお布団を取り込み、一つ一つ窓を施錠していく。爺ちゃんとお母ちゃんに挨拶をして、僕は玄関の鍵を閉めた。
「信君、やっと捕まえた」
不意に後ろから肩を抱かれ、耳元で久美子さんに囁きかれた。同時に、側に車が停車すると、久美子によってボックスカーの後部座席に押し込まれた。逃げようと久美子さんを押し退けようとするけど、車は僕たちを乗せて動き始めた。
「早く、車を出して」
半狂乱に叫ぶ久美子さんに、運転手は黙ったままアクセルを踏んだ。
僕は暴れたけど、久美子さんは馬乗りになって、僕の頬を思いっきりバチンと殴ってきた。久美子さんに殴られた記憶が蘇り、体が竦んでしまう。
「ずっと探していたのに、いけない子ね」
ギュッっと目を瞑り、体を小さくしても容赦なく何度も何度も頬を打たれた。
「あんたはね!私の言うことを聞いてれば良いの!」
ハアハアと肩で息をしながら殴り続ける。
「あんたのせいで、大損してんだから!せめて恩返しくらいしなさいよ」
平手で何度も叩かれる、頬が痺れる。ヒステリックになった久美子さんは、いつもこうやって僕を殴っていた。
頬が腫れ、涙でぐちゃぐちゃの僕を見て、久美子さんはスッキリしたのかようやく殴る事をやめた。
久美子さんは、馬乗りにになったままガムテープを取り出して、僕の手首、足首を縛る。醜く歪む久美子さんの顔が僕に向けられ、僕は硬直していた。
口、目とガムテープを貼られ、僕は後部座席に転がされていた。
「また、暴れられたらヤバいんじゃないんですか?」
「大丈夫よコレ使うから」
何かが体に押し付けられ、バチバチっと電流が走った。2、3度押し当てられ、海老反りになった。
笑う久美子さんの声が、遠くに聞こえた。
順調にいけば来週には、腕のギブスも取れる見込みだ。足のギブスは、もう少しかかりそうだけど、ケンケンで移動したりしているのを見ると、全開も遅くはないだろうと思っている。
「ただいま」
僕は、爺ちゃんとお母ちゃんの仏壇に手を合わせた。トウちゃんが、退院したら気持ち良く過ごせるように、家の換気と掃除に立ち寄った。
「しばらく、お家を開けてごめんなさい。今、トウちゃん入院してて、僕は雪ちゃんの家でお世話になってるんだ」
手をしばらく合わせ、お母ちゃんたちに近況を報告した。
まずは、動きやすい服に着替えて、家中の窓を開けて換気をしていく。天気も良いからお布団も干しておこう。
たった二週間、されど二週間。意外と埃が積もって、なんだか薄汚れた感じがする。一部屋ずつハタキで埃を落とし、掃除機をかけていく。トイレやお風呂場も磨いて、廊下の雑巾掛けもしていく。お風呂場がカビだらけにならないように、しっかりと水がはけてタイルが乾くまで、換気を十分にしておこう。
お昼ご飯としてコンビニで買ってきたおにぎりとお茶を取り出し、縁側に腰掛けた。小さいけれど庭もある、春先にトウちゃんと植えたさくらんぼの苗木を観ながら、ゆったりとお昼ご飯を食べた。
さくらんぼの苗木に雀がぴちぴちと止まって遊んでいたので、大先生から渡された携帯電話で、さくらんぼの苗木をパシャリと写す。トウちゃんと雪ちゃんにLINEを送信してごろりと横になった。
雪ちゃんのお家は、タワーマンションのため、ベランダがない。縁側でゴロゴロしたりもできない。改めて、我が家の居心地の良さに安らぎを感じていた。
ホカホカになったお布団を取り込み、一つ一つ窓を施錠していく。爺ちゃんとお母ちゃんに挨拶をして、僕は玄関の鍵を閉めた。
「信君、やっと捕まえた」
不意に後ろから肩を抱かれ、耳元で久美子さんに囁きかれた。同時に、側に車が停車すると、久美子によってボックスカーの後部座席に押し込まれた。逃げようと久美子さんを押し退けようとするけど、車は僕たちを乗せて動き始めた。
「早く、車を出して」
半狂乱に叫ぶ久美子さんに、運転手は黙ったままアクセルを踏んだ。
僕は暴れたけど、久美子さんは馬乗りになって、僕の頬を思いっきりバチンと殴ってきた。久美子さんに殴られた記憶が蘇り、体が竦んでしまう。
「ずっと探していたのに、いけない子ね」
ギュッっと目を瞑り、体を小さくしても容赦なく何度も何度も頬を打たれた。
「あんたはね!私の言うことを聞いてれば良いの!」
ハアハアと肩で息をしながら殴り続ける。
「あんたのせいで、大損してんだから!せめて恩返しくらいしなさいよ」
平手で何度も叩かれる、頬が痺れる。ヒステリックになった久美子さんは、いつもこうやって僕を殴っていた。
頬が腫れ、涙でぐちゃぐちゃの僕を見て、久美子さんはスッキリしたのかようやく殴る事をやめた。
久美子さんは、馬乗りにになったままガムテープを取り出して、僕の手首、足首を縛る。醜く歪む久美子さんの顔が僕に向けられ、僕は硬直していた。
口、目とガムテープを貼られ、僕は後部座席に転がされていた。
「また、暴れられたらヤバいんじゃないんですか?」
「大丈夫よコレ使うから」
何かが体に押し付けられ、バチバチっと電流が走った。2、3度押し当てられ、海老反りになった。
笑う久美子さんの声が、遠くに聞こえた。
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