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2章 楔
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しおりを挟む入学式が終わると、生徒たちは、保護者共に各自の教室へ向かう。トウちゃんは、卒業生ということもあり、迷うことなく教室へ連れて行ってくれた。教室の扉の前に、僕の担任となる先生が、スーツを着て生徒と保護者を迎えてくれていた。
「うわっ、佐々木かよ」
「どうしたの?」
担任の先生を見るなり、バツの悪そうな表情を浮かべた。
「おぉ?藤吉か。また、高校生をやり直すのか?」
「勘弁してくださいよ。今日は、付き添いです」
ぺこりと頭を下げ、担任となる佐々木?先生に挨拶をする。
「姉貴の息子です」
「藤吉の甥っ子かぁ、今日からよろしくな。藤吉と違って、素直そうだな」
「いや、あまり昔の話は…」
「昔じゃねぇ、たかが2年前だ」
「せ、先生、それ以上は止めときましょう。信が聞いているから」
どうも、トウちゃんは高校時代佐々木先生に大変お世話になったようだ。先生の懐かしそうな笑顔、タジタジになってるトウちゃん、きっと良い先生なんだと思う。
「その説は、トウちゃんが大変お世話になりました」
「信!おまっ」
ガハハと笑う佐々木先生は、トウちゃんの肩をパシパシ叩いた。
「良くできた甥っ子じゃないか!」
「チッ、邪魔になるから教室に入るよ」
不貞腐れてトウちゃんは、教室へ入って行った。
「机に名札が置いてあるから、座って待ってなさい」
先生も笑いながら優しく、教室へ入るように言った。
保護者たちは、教室の後ろに置かれたパイプ椅子に座っている。高校生ということもあり、保護者も教室まで来るのはまばらだった。
佐々木先生は、教壇に立ち息を吸った。
「入学おめでとうございます。今日から君たちの担任となる佐々木 元と言います。教科は数学です。1年間よろしくお願いします。また、保護者の皆様、今日からご家族をお預かりいたします。彼らは、時に悩み、傷つくこともあると思います。私も、一緒に悩み、答えを導いていきます。そんな私たちを暖かく見守って頂けれと思います」
なかなか、男前の挨拶だと思った。トウちゃんがパチパチと手を叩くと他の保護者の方たちも拍手をした。佐々木先生は、ゆっくりお辞儀をした。
先生からは、教科書の販売について、またこれからのスケジュールについて説明があり、本日のオリエンテーションが終わった。
教室の一番前の奥側に、藍之介君を発見。僕は近寄り挨拶をした。
「同じクラスになったね、よろしく。今日の挨拶すごくかっこよかった。勝十郎さんの姿と重なって見えた」
「あっそう」
相変わらず、お塩な藍之介君。いつか、友達の座を勝ち取れるかな?スタスタと教室を藍之介君は出て行った。
「しっかし相変わらずだな、佐々木先生は」
ケタケタ笑うトウちゃんに、意味が解らず聞いてみた。
「ありゃ、俺が子供を叱っても、口出すなよって釘を刺したんだよ。俺らの時もそうだったけど、遠慮なく叱ってくるぞ」
「おい、物騒な言い方をするな。意味もなく叱りつける訳ないじゃないか。お前が悪さばかりしたから、叱ったんだあの時は」
「その話はまた今度、酒でも飲みましょうや先生」
トウちゃんは、僕の背を押して教室を後にした。
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