神さまのお家 廃神社の神さまと神使になった俺の復興計画

りんくま

文字の大きさ
18 / 95

18 猫又の思い その3

しおりを挟む
土曜日の朝。学校が休みのため、いつもより遅く起床をする。土間に行くと、猫又は気持ちよさそうに座布団の上で丸くなって眠っている。

「佐久夜兄ちゃん、おはよう!」
「おはよう!朱丸」

学校が休みの日は、時間に余裕があるため、ゆっくりと朝ご飯の準備をする。先日フライパンを購入したため、朱丸の好物である赤いウインナーを焼いてやると弁当屋のおかずよりも美味しいと絶賛されてしまった。焼きたてという事だけなのだけど、あまりにも朱丸が、喜ぶため少し恥ずかしかった。

神さまは、相変わらずマヨネーズに執着している。佐久夜は、目玉焼きには醤油派だが、神さまはやっぱりマヨネーズ派だった。せっかくフライパンを買ったので、お好み焼きを焼いて、ソースとマヨネーズをたっぷり塗ってやろうと考えている。

猫又は、やっぱり猫と一緒で、熱いのは苦手らしい。ペットショップで試供品のカリカリをもらったため、食べてみるかと聞いてみると、思いっきり嫌な顔をされてしまった。

「オイラは猫とは違う!」

プイっと顔を背けて拗ねてしまった為、佐久夜が食べる食事と同じ食事を用意している。

ただ、興味があった為、またたびの木を渡すと恍惚の表情で、ベロンベロンに酔っ払ってしまった。

やっぱり猫だと佐久夜は、思った。

朝食を終え、佐久夜は溜まった洗濯物を洗っていく。清水で洗えば、新品同然に衣服が蘇る為、洗剤要らずで洗濯は楽だった。

洗濯を終え、佐久夜は温かい緑茶を淹れ縁側で一息つく。この時間が、一番贅沢で幸せだと思っている。

神さまにも小さなお猪口にお茶を淹れ、一緒に日向ぼっこをする。

「あぁ、幸せだ」
「うむ、悪くはないのう」

空を見上げると、晴れやかな青空が広がり、心地良い。ゆっくりと瞳を閉じて、お日様を肌で感じていた。

ふと、膝の上に重みを感じ、佐久夜は目を開けた。

のしりと佐久夜の膝の上で丸くなる猫又が乗っている。佐久夜は、嬉しくなって、猫又の喉を撫でてやった。

猫又は、クルクルと気持ち良さそうに喉を鳴らす。神さまも面を少し上に上げ、優しく微笑むと、ズズッと緑茶を啜った。

「オイ、オイラにも名前を名付けるにゃ」
「え!?」

猫又は、ゴロンと腹を見せながら、上から目線で名付けを強請る。

「ほほう、猫又よ、それはどういう意味じゃ?」

佐久夜が、びっくりしていると、神さまは少し意地悪く猫又に尋ねた。

「このちんちくりんな神が張る結界は弱いにゃ」
「結界が弱い?」
「壁が脆い、狛犬も崩れ、結界ボロボロにゃ!」
「うむ、我は名もなき神じゃ。仕方がなかろう」

力がないと言われ、当たり前のように受け止める神さまに、佐久夜は少し悔しさを覚える。

「それは、俺に神使として役に立ってないと言うことか?」
「驕るにゃ佐久夜!おまえは人間にゃ!」

少し猫又の毛を力強く握ってしまった佐久夜の手を、パシリと猫又が叩いた。だけど、爪は立っておらず、優しい猫パンチだと佐久夜は思った。

「オイラが、神さまの足りにゃい結界に、なってやるにゃ!だから、おまえは、オイラに名を授けるにゃ」
「うむ、朱丸と同じく猫又もお主と契約がしたいらしいぞ」
「うるさいにゃ!このちんちくりん!」

神さまからの指摘に牙を剥く猫又。佐久夜は思わずキョトンとしてしまった。

「我は、知っておるぞ。ツンのデレというのじゃろう?」

神さまは、楽しそうに猫又を挑発した。

「ハハッ!アハハハハハハ!」

佐久夜は、嬉しくなって、両手でわしゃわしゃと猫又を撫で回した。

「わかった、お前の名はおぼろだ!夜に浮かぶ朧月。お前と出逢った時の夜空に浮かんでいた月だ!まるでお前みたいだろ?」

猫又は、大きく目を見開いた。

「朧!確かにその名を受け取ったにゃ!」

名付けが終わると、境内に強風が吹いた。佐久夜が目を閉じる、風が止んだのを感じると、ゆっくり瞳を開けた。

神社に張り巡らせた壁は、どこもかしこも真新しく変貌し、頭の崩れ落ちた狛犬は、猫又の姿に様変わりしていた。

「佐久夜兄ちゃん!何だ!何が起こったんだ!」

朱丸の大きな叫び声が、神社に響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

ループ25 ~ 何度も繰り返す25歳、その理由を知る時、主人公は…… ~

藤堂慎人
ライト文芸
主人公新藤肇は何度目かの25歳の誕生日を迎えた。毎回少しだけ違う世界で目覚めるが、今回は前の世界で意中の人だった美由紀と新婚1年目の朝に目覚めた。 戸惑う肇だったが、この世界での情報を集め、徐々に慣れていく。 お互いの両親の問題は前の世界でもあったが、今回は良い方向で解決した。 仕事も順調で、苦労は感じつつも充実した日々を送っている。 しかし、これまでの流れではその暮らしも1年で終わってしまう。今までで最も良い世界だからこそ、次の世界にループすることを恐れている。 そんな時、肇は重大な出来事に遭遇する。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません

紫楼
ファンタジー
 母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。  なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。  さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。  そこから俺の不思議な日々が始まる。  姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。    なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。  十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

処理中です...