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19 狛犬?

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強風が境内を吹きすさび、一瞬で様変わりしてしまった神社。佐久夜は、声が出ないくらい驚いていた。朱丸の絶叫が聞こえ、我に帰る。

「凄い…」

ふふんと短い二本の尻尾を得意げに揺らす朧。

「佐久夜兄ちゃん!猫又のおっさんがぁ!うわーん」

突如現れた朧仕様の狛犬。しっかりと短い尻尾も再現されている。口の形も【阿】と【吽】を現して、何とも可愛らしく仕上がっていた。

「朱丸!」

佐久夜が、両手を広げると、泣きじゃくりながら、朱丸が飛び込んでくる。

「どうしたんだ?」
「ぐやじい…。僕にばねでぎだい」

朱丸は、朱丸なりに佐久夜の力になりたかった。あっという間にボロボロだった神社の外観を立派にしてみせ、朱丸は朧との力の差を目の当たりにしてしまった。

「朱丸も俺にも真似できない力を持っているよ。朱丸がいなかったら、この神社は、夜灯りがなかった。美味しいご飯も食べることが出来なかった。全て、朱丸が、俺たちに力を貸してくれたからできるようになったんだ」

佐久夜の胸にしがみついて悔しがる朱丸を優しく撫でた。

「オイラと小僧じゃ、妖の歴が全く違うにゃ。小僧は、妖気を練ることから始めるんじゃにゃ」

佐久夜の胸から顔を放して、朱丸は朧を見た。

「僕に……ズズッ。妖力が強くなる方法…ズズッ。教えてくれるのか?」
「日向ぼっこだけじゃ暇だしにゃ。付き合ってやらん事もにゃい」
「うむ、我は知っておるぞ、これもツンにょぶはッ!」
「ちんちくりんは、黙るにゃ!」

朧は、神さまを前脚で押さえつけ、それ以上言葉にさせないようにした。朧の脚元で手足をバタバタさせる神さまは、とっても楽しそうだった。

佐久夜は、前脚でテシテシと神さまと戯れ合う朧の背中を優しく撫でた。

「朧、朱丸の事をよろしく頼むよ」
「朧のおっちゃん、…よろしく」

朱丸もぺこりとお辞儀をする。

「しょうがないにゃ」

朧は、満更でもない様子で承諾した。
その日の夜、朧は皆が寝静まると、佐久夜の部屋に忍びこんだ。布団にくるまってスヤスヤと眠る佐久夜は、朧の気配に気づかない。

ぐるりと佐久夜の周りを一周すると、朧は佐久夜の足元から頭を突っ込んだ。

横向きに寝る佐久夜の腹に、体重をかけて朧は丸くなった。

佐久夜の枕元には、朧の藍色の揺らめく妖気が込められた勾玉が、ポトンと一つ
落とされていた。









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