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29 不機嫌な尻尾
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「根?それって木の根っこのことか?」
朧から、今いる場所が『根』という場所だと説明された。
「佐久夜らが住む世界がオモテにゃ。この『根』は、ウラにゃ」
「表があれば、裏もあるってこと?」
「そうにゃ」
朧は、『根』について表裏一体の世界だと説明をした。
「オモテが人間、ウラはオイラたち妖の世界にゃ。人間は、命に執着するけど、オイラたちは魂に価値をみるにゃ」
「だから、京平の命を守るために朧の妖気を分けてくれたんだ」
佐久夜は、腕の中にいる朧を撫でた。京平は、理不尽に攻撃されたわけではない事が判ると、傷だらけの腕も悪くないと思えた。
「ハハッ。朧センセ、本当にありがとう」
「うるさい、このハゲ!」
「センセ…俺、ハゲじゃないです…」
京平が、何か口を開くだけで、朧は、不機嫌そうに尻尾を揺らす。佐久夜だけであれば、朧は喜んで佐久夜を護っていた。だけど、妖の朧にとって、京平はどうでもいい存在だ。
自身にとって要か不要かで価値を判断する妖であれば、誰しもが瞬時に切り捨ててしまう存在が、今の京平の立場だった。
よって、京平が話しをすればするほど、朧は不機嫌になる。
佐久夜は、朧が機嫌が悪くなっても、京平のために気を張ってくれているのだと理解していた。
不機嫌になる朧を嗜める事はせずに、何度も何度も感謝の言葉を伝えた。
「朧、俺たちは『根』から元の世界に戻れる?」
敢えて佐久夜は、『俺たち』と聞いた。朧は、じっと京平を見つめる。朧の中で、京平についての見定めをしていた。
京平も佐久夜の質問の意図を汲み取り、朧と目を逸らさずに見つめ合う。
暫しの沈黙の後、朧は、京平から視線を外し、大きくため息を吐いた。
「もちろんにゃ。京平も連れて帰らなかったら、オイラが佐久夜に叱られるにゃ」
「朧センセ~!俺、一生ついていく!!!」
「断るにゃ!」
佐久夜は、朧の纏っている空気が柔らかくなったのを感じていた。
「ちょっと、ここで待ってるにゃ。絶対にこの窟から出たりするにゃ」
そう言うと、朧は、佐久夜の腕の中から地面にに降りた。そして、二人を残して、窟から出て行った。
朧の姿が見えなくなるだけで、二人は不安になるも、朧を信じて待った。
「佐久夜、朧センセにも、俺、迷惑かけてゴメン」
京平は、朧の姿が見えなくなると申し訳なさそうな顔をして佐久夜に詫びた。
いくら、オカルトが好きだとしても、他人に迷惑をかける趣味はなかった。
佐久夜も京平が、故意に迷惑をかけるタイプではないことを解っている。
「いいよ、こっちこそ朧がゴメン」
お互いがお互いを思い詫びた。頭を交互に下げ、詫び合う状態がなんだかおかしくなり、二人は笑いが込み上げてくる。
笑顔になった京平は、朧に傷つけられた腕を、佐久夜に向かって突き出した。
「俺にとって、コレは勲章だよ」
「何それ!あははは」
「だって、猫又に怪我させられるって、今までで一番スゴイ体験じゃん」
佐久夜も、京平も、心に余裕が生まれていた。
朧から、今いる場所が『根』という場所だと説明された。
「佐久夜らが住む世界がオモテにゃ。この『根』は、ウラにゃ」
「表があれば、裏もあるってこと?」
「そうにゃ」
朧は、『根』について表裏一体の世界だと説明をした。
「オモテが人間、ウラはオイラたち妖の世界にゃ。人間は、命に執着するけど、オイラたちは魂に価値をみるにゃ」
「だから、京平の命を守るために朧の妖気を分けてくれたんだ」
佐久夜は、腕の中にいる朧を撫でた。京平は、理不尽に攻撃されたわけではない事が判ると、傷だらけの腕も悪くないと思えた。
「ハハッ。朧センセ、本当にありがとう」
「うるさい、このハゲ!」
「センセ…俺、ハゲじゃないです…」
京平が、何か口を開くだけで、朧は、不機嫌そうに尻尾を揺らす。佐久夜だけであれば、朧は喜んで佐久夜を護っていた。だけど、妖の朧にとって、京平はどうでもいい存在だ。
自身にとって要か不要かで価値を判断する妖であれば、誰しもが瞬時に切り捨ててしまう存在が、今の京平の立場だった。
よって、京平が話しをすればするほど、朧は不機嫌になる。
佐久夜は、朧が機嫌が悪くなっても、京平のために気を張ってくれているのだと理解していた。
不機嫌になる朧を嗜める事はせずに、何度も何度も感謝の言葉を伝えた。
「朧、俺たちは『根』から元の世界に戻れる?」
敢えて佐久夜は、『俺たち』と聞いた。朧は、じっと京平を見つめる。朧の中で、京平についての見定めをしていた。
京平も佐久夜の質問の意図を汲み取り、朧と目を逸らさずに見つめ合う。
暫しの沈黙の後、朧は、京平から視線を外し、大きくため息を吐いた。
「もちろんにゃ。京平も連れて帰らなかったら、オイラが佐久夜に叱られるにゃ」
「朧センセ~!俺、一生ついていく!!!」
「断るにゃ!」
佐久夜は、朧の纏っている空気が柔らかくなったのを感じていた。
「ちょっと、ここで待ってるにゃ。絶対にこの窟から出たりするにゃ」
そう言うと、朧は、佐久夜の腕の中から地面にに降りた。そして、二人を残して、窟から出て行った。
朧の姿が見えなくなるだけで、二人は不安になるも、朧を信じて待った。
「佐久夜、朧センセにも、俺、迷惑かけてゴメン」
京平は、朧の姿が見えなくなると申し訳なさそうな顔をして佐久夜に詫びた。
いくら、オカルトが好きだとしても、他人に迷惑をかける趣味はなかった。
佐久夜も京平が、故意に迷惑をかけるタイプではないことを解っている。
「いいよ、こっちこそ朧がゴメン」
お互いがお互いを思い詫びた。頭を交互に下げ、詫び合う状態がなんだかおかしくなり、二人は笑いが込み上げてくる。
笑顔になった京平は、朧に傷つけられた腕を、佐久夜に向かって突き出した。
「俺にとって、コレは勲章だよ」
「何それ!あははは」
「だって、猫又に怪我させられるって、今までで一番スゴイ体験じゃん」
佐久夜も、京平も、心に余裕が生まれていた。
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