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56 朧とスセリビメ
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胸ぐらをスセリビメの細い両腕で掴まれ、思いっきり、顔を引き寄せられた佐久夜は、頬を赤らめ顔を背けた。
「知っていると言えば知っているかもしれない」
鴉天狗が、佐久夜の言葉を聞き、取り上げた昔日鏡を懐から取り出した。
「お客人、やはりこれで過去を覗かれましたな」
コクリと頷いた佐久夜は、スセリビメの手を握って、胸ぐらを掴む両腕を外した。
佐久夜が少し距離を取るとスセリビメは、その場にペタリと力なく座り込んだ。そして、潤んだ瞳で佐久夜を見上げた。
京平は、自分の胸を掴み、スセリビメを見てキュンと悶えている。
「京平兄ちゃん、なんか気持ち悪いぞ?」
「俺は、空気を読む男!耐えろ京平!」
訳の分からない独り言を呟く京平を朱丸は、気持ち悪そうな表情で見つめた。
「兄さまは、どこにいますか?」
「ここには、来てないよ。たぶん、まだここに来ることも出来ないと思う」
佐久夜が、鴉天狗を見ると、大きく深いため息を一つ吐いた。
「ハァー。お客人、話してもらって構いません。せっかく、ひい様の心労にならぬ様、遠ざけたのに……」
「解ったよ。俺も直接確かめた訳じゃないから、それでも良いかな?」
佐久夜は、スセリビメに優しく声をかけた。
「だけど、朧にも関係ある話しだからさ、まずは、朧が復活してからでも良いかな?」
泡を吹いて痙攣していた朧を、直ぐに浅葱は介抱しており、痙攣は治まっている様子だった。
「すまぬ。妾が、先を急ぐあまり、逢魔の失った記憶を呼び覚ましたばかりに……」
「記憶の共有って聞いて、そうじゃないかと思ったんだけど、やっぱりそうだったんだね」
鴉天狗が、佐久夜に薬瓶を懐から取り出して渡した。
「何これ?」
「気付薬じゃ。逢魔に飲ませるが良い」
「ありがとう。って、やっぱり朧が逢魔ってのは、間違いないんだ」
佐久夜は、薬瓶を受け取ると、朧の側に座り、そっと薬を口の中に流し込む。朧の舌が、ピチャ、ピチャと音を鳴らして飲み込んだ。
「うにゃあ!!苦いにゃ!!!!」
かっと大きく瞳を開き、朧が飛び上がった。
「朧?」
佐久夜が、声をかけると、ペッペと飲まされた薬を吐き出そうとする朧と目があった。
「佐久夜~、オイラの口、中がビリビリするにゃ!!」
意識が戻った朧は、いつもの雰囲気で、佐久夜は、ほっと胸を撫で下ろした。佐久夜は、苦々しい表情の朧を優しく抱きかかえ、おでこをコツンとくっつけた。
「朧、意識は大丈夫か?どこか、変なことはないか?」
「口の中が気持ち悪いにゃ…………あれ?」
少し、不思議そうな表情を浮かべる。何かを言うわけでもなく、じっと考え込む朧。
膝立ちをして、スセリビメは、朧を抱く佐久夜に近づいた。ポロポロと涙を流し、泣きながら朧を見つめた。
「相変わらず、泣き虫にゃ。ひい」
朧は、スセリビメの頭に前脚を伸ばし、ポンポンと肉球で撫でた。
「あー!朧センセ!ズルい。俺もスセリビメちゃんと仲良くなりたい!」
「京平さま、流石に俺も引くでございますぞ?」
浅葱と朱丸は、京平を残念そうな生き物を見る様な目で見つめた。
「うわ~ん。逢魔!逢魔!」
大きな声で泣きながら、スセリビメは、朧に顔を埋めた。
「ひい!コラ~!オイラに鼻水をつけるにゃ!!」
「知っていると言えば知っているかもしれない」
鴉天狗が、佐久夜の言葉を聞き、取り上げた昔日鏡を懐から取り出した。
「お客人、やはりこれで過去を覗かれましたな」
コクリと頷いた佐久夜は、スセリビメの手を握って、胸ぐらを掴む両腕を外した。
佐久夜が少し距離を取るとスセリビメは、その場にペタリと力なく座り込んだ。そして、潤んだ瞳で佐久夜を見上げた。
京平は、自分の胸を掴み、スセリビメを見てキュンと悶えている。
「京平兄ちゃん、なんか気持ち悪いぞ?」
「俺は、空気を読む男!耐えろ京平!」
訳の分からない独り言を呟く京平を朱丸は、気持ち悪そうな表情で見つめた。
「兄さまは、どこにいますか?」
「ここには、来てないよ。たぶん、まだここに来ることも出来ないと思う」
佐久夜が、鴉天狗を見ると、大きく深いため息を一つ吐いた。
「ハァー。お客人、話してもらって構いません。せっかく、ひい様の心労にならぬ様、遠ざけたのに……」
「解ったよ。俺も直接確かめた訳じゃないから、それでも良いかな?」
佐久夜は、スセリビメに優しく声をかけた。
「だけど、朧にも関係ある話しだからさ、まずは、朧が復活してからでも良いかな?」
泡を吹いて痙攣していた朧を、直ぐに浅葱は介抱しており、痙攣は治まっている様子だった。
「すまぬ。妾が、先を急ぐあまり、逢魔の失った記憶を呼び覚ましたばかりに……」
「記憶の共有って聞いて、そうじゃないかと思ったんだけど、やっぱりそうだったんだね」
鴉天狗が、佐久夜に薬瓶を懐から取り出して渡した。
「何これ?」
「気付薬じゃ。逢魔に飲ませるが良い」
「ありがとう。って、やっぱり朧が逢魔ってのは、間違いないんだ」
佐久夜は、薬瓶を受け取ると、朧の側に座り、そっと薬を口の中に流し込む。朧の舌が、ピチャ、ピチャと音を鳴らして飲み込んだ。
「うにゃあ!!苦いにゃ!!!!」
かっと大きく瞳を開き、朧が飛び上がった。
「朧?」
佐久夜が、声をかけると、ペッペと飲まされた薬を吐き出そうとする朧と目があった。
「佐久夜~、オイラの口、中がビリビリするにゃ!!」
意識が戻った朧は、いつもの雰囲気で、佐久夜は、ほっと胸を撫で下ろした。佐久夜は、苦々しい表情の朧を優しく抱きかかえ、おでこをコツンとくっつけた。
「朧、意識は大丈夫か?どこか、変なことはないか?」
「口の中が気持ち悪いにゃ…………あれ?」
少し、不思議そうな表情を浮かべる。何かを言うわけでもなく、じっと考え込む朧。
膝立ちをして、スセリビメは、朧を抱く佐久夜に近づいた。ポロポロと涙を流し、泣きながら朧を見つめた。
「相変わらず、泣き虫にゃ。ひい」
朧は、スセリビメの頭に前脚を伸ばし、ポンポンと肉球で撫でた。
「あー!朧センセ!ズルい。俺もスセリビメちゃんと仲良くなりたい!」
「京平さま、流石に俺も引くでございますぞ?」
浅葱と朱丸は、京平を残念そうな生き物を見る様な目で見つめた。
「うわ~ん。逢魔!逢魔!」
大きな声で泣きながら、スセリビメは、朧に顔を埋めた。
「ひい!コラ~!オイラに鼻水をつけるにゃ!!」
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