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57 詫びより感謝
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佐久夜の腕に抱かれたままで、朧は佐久夜の顔を見上げた。
「どうした、朧。まだ、どこか気持ち悪かったりするのか?」
「うにゃ、何でもないにゃ」
朧と呼ばれ、嬉しそうに佐久夜の胸にスリっともたれかかった。スセリビメも佐久夜の目の前で、正座をし、くすんくすんと泣き腫らした眼で鼻を啜る。
「もう、逢魔ではないのじゃな」
「オイラは、朧の名前を授かった。だけど、逢魔だったオイラも、朧という名のオイラも、同じオイラにゃ」
その言葉を肯定する様に佐久夜は、ゆっくりと朧の頭を撫でた。朧も嬉しそうに喉を鳴らし目を細める。
スセリビメは、朧の答えに頷き、改めて佐久夜をしっかりと見据えた。
「佐久夜よ………兄さまは、ご無事か?」
佐久夜は、にっこりと笑みを浮かべた。
「うん、元気に頑張っているよ。朧とも、仲良く遊んだり、ケンカしたりしてりるよ」
「そうにゃ!あのちんちくりんは、オイラを弄ぶにゃ!」
兄が、元気に過ごしていると聞き、スセリビメは、両掌を合わせ、満面の笑みを浮かべた。
「あぁ!なんと悦ばしいことか」
京平と朱丸は、お互いに向き合い、そして首を傾げた。浅葱は、ただ黙って成り行きを見ている。鴉天狗は、スセリビメの笑顔を見て、目尻を手拭いで拭っていた。
「ちょっと、佐久夜。俺たちにもわかるように説明してくれる?」
朱丸も京平に同意して、頭をこくこく上下に動かしていた。
「あ、ごめん。えっと、うちの神さまが、スセリビメのお兄さん?それで、朧がうちの神さまの元神使?で、前の名前が、逢魔?」
「なんで、疑問系なんだかにゃ。……だいたい、そんな感じにゃ」
簡単すぎる佐久夜の説明に、京平も朱丸もしばし無言のまま考える。
「スセリビメのお兄さん?」
「そそ」
「朱丸と同じくらいに小ちゃいのに?」
「そそ」
三度思考を停止した京平とは異なり、スセリビメの頬は、ほんのり赤く染まっていった。
「佐久夜は、兄さまの神使なの?」
「偶然にもね。俺、住む場所も無くなって、彷徨っていた時、スセリビメのお兄さんに出会ったんだ。あの鏡、昔日鏡で見たお面を今でも被っているよ」
「面……そうか。なら、まだ名前は失ったままなのね……」
スセリビメは、少し寂しそうな表情をした。そして、少し後ろに下がると床に三つ指をついて、佐久夜にお辞儀をした。
「佐久夜、兄さまは、妾のせいで神としての名前を剥奪されました。私が、歪んだ愛を向けてしまったために……」
佐久夜は、垣間見た過去の記憶から、スセリビメと神さまの関係は、知ってしまっていた。
「逢魔も、私を生かすために、名と力を奪われました」
「ひい!それは違うにゃ!ひいが生きるのは、オイラたちの願いだったにゃ!」
佐久夜の腕から飛び降り、朧はスセリビメに頭を擦りつけた。
「スセリビメ様、頭を上げてください」
佐久夜の言葉に、スセリビメは、ゆっくり顔をあげた。その顔は、自身の過去の後悔が現れていた。
佐久夜は、優しく朗らかに微笑む。そして、佐久夜も手を床に付き、頭をゆっくり下げた。
「俺は、スセリビメ様に感謝します。スセリビメ様が、生きていてくれたから、俺は、神さまと出会えた。朧と出会えた。朱丸とも出会えた。京平とも友達になれた。そして、浅葱とも知り合った。……スセリビメ様がいなければ、俺は、生きていけなかった。スセリビメ様、ありがとうございます」
スセリビメは、両手で唇を隠し、ハラハラと涙を流した。
「妾も、佐久夜に感謝をしよう」
「どうした、朧。まだ、どこか気持ち悪かったりするのか?」
「うにゃ、何でもないにゃ」
朧と呼ばれ、嬉しそうに佐久夜の胸にスリっともたれかかった。スセリビメも佐久夜の目の前で、正座をし、くすんくすんと泣き腫らした眼で鼻を啜る。
「もう、逢魔ではないのじゃな」
「オイラは、朧の名前を授かった。だけど、逢魔だったオイラも、朧という名のオイラも、同じオイラにゃ」
その言葉を肯定する様に佐久夜は、ゆっくりと朧の頭を撫でた。朧も嬉しそうに喉を鳴らし目を細める。
スセリビメは、朧の答えに頷き、改めて佐久夜をしっかりと見据えた。
「佐久夜よ………兄さまは、ご無事か?」
佐久夜は、にっこりと笑みを浮かべた。
「うん、元気に頑張っているよ。朧とも、仲良く遊んだり、ケンカしたりしてりるよ」
「そうにゃ!あのちんちくりんは、オイラを弄ぶにゃ!」
兄が、元気に過ごしていると聞き、スセリビメは、両掌を合わせ、満面の笑みを浮かべた。
「あぁ!なんと悦ばしいことか」
京平と朱丸は、お互いに向き合い、そして首を傾げた。浅葱は、ただ黙って成り行きを見ている。鴉天狗は、スセリビメの笑顔を見て、目尻を手拭いで拭っていた。
「ちょっと、佐久夜。俺たちにもわかるように説明してくれる?」
朱丸も京平に同意して、頭をこくこく上下に動かしていた。
「あ、ごめん。えっと、うちの神さまが、スセリビメのお兄さん?それで、朧がうちの神さまの元神使?で、前の名前が、逢魔?」
「なんで、疑問系なんだかにゃ。……だいたい、そんな感じにゃ」
簡単すぎる佐久夜の説明に、京平も朱丸もしばし無言のまま考える。
「スセリビメのお兄さん?」
「そそ」
「朱丸と同じくらいに小ちゃいのに?」
「そそ」
三度思考を停止した京平とは異なり、スセリビメの頬は、ほんのり赤く染まっていった。
「佐久夜は、兄さまの神使なの?」
「偶然にもね。俺、住む場所も無くなって、彷徨っていた時、スセリビメのお兄さんに出会ったんだ。あの鏡、昔日鏡で見たお面を今でも被っているよ」
「面……そうか。なら、まだ名前は失ったままなのね……」
スセリビメは、少し寂しそうな表情をした。そして、少し後ろに下がると床に三つ指をついて、佐久夜にお辞儀をした。
「佐久夜、兄さまは、妾のせいで神としての名前を剥奪されました。私が、歪んだ愛を向けてしまったために……」
佐久夜は、垣間見た過去の記憶から、スセリビメと神さまの関係は、知ってしまっていた。
「逢魔も、私を生かすために、名と力を奪われました」
「ひい!それは違うにゃ!ひいが生きるのは、オイラたちの願いだったにゃ!」
佐久夜の腕から飛び降り、朧はスセリビメに頭を擦りつけた。
「スセリビメ様、頭を上げてください」
佐久夜の言葉に、スセリビメは、ゆっくり顔をあげた。その顔は、自身の過去の後悔が現れていた。
佐久夜は、優しく朗らかに微笑む。そして、佐久夜も手を床に付き、頭をゆっくり下げた。
「俺は、スセリビメ様に感謝します。スセリビメ様が、生きていてくれたから、俺は、神さまと出会えた。朧と出会えた。朱丸とも出会えた。京平とも友達になれた。そして、浅葱とも知り合った。……スセリビメ様がいなければ、俺は、生きていけなかった。スセリビメ様、ありがとうございます」
スセリビメは、両手で唇を隠し、ハラハラと涙を流した。
「妾も、佐久夜に感謝をしよう」
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