70 / 95
70 神さまは、寂しがり屋
しおりを挟む
青銅の流し入れが終わり、完全に冷めて固まるまで、約一日放置。
「今日の作業は、ここまでかな」
手伝ってくれた朱丸の頭を撫でて、佐久夜は礼を伝えた。
「ウヘヘ」
嬉しそうに朱丸も目を細め、笑顔で笑う。
「ところでさあ、さっきからずっと気になってるんだけどて…アレ」
京平が、アレに背を向けたまま指を指す。
柱の影から顔を半分覗かせて、こちらの様子を伺うのは、神さまだ。
「俺たちが、神様に奉納する為の鏡を作ってるもんだから、朧に口出し無用と言われちゃって……」
じっと見つめてくる視線が痛い。皆が楽しそうに作業をしている姿を見て、寂しそうに声をかけて欲しそうにしている。
「朧センセ、何もしてないんだから、神さまと一緒にいてやりなよ」
佐久夜たちの近くの縁側で、毛繕いに励む朧に京平が、神さまの側にいろと言った。
「にゃにを!」
脚を伸ばしたまま、きらりと目を光らせて京平を睨む朧。
「だって、朱丸と浅葱は、いろいろ手伝ってもらったけど、朧センセは、見てるだけじゃん。神さま寂しそうじゃん」
「オイラは、わざとちんちくりんを除け者にしたわけじゃにゃいにゃ!」
耳を真っ平らにして、鼻息荒く抗議する朧。佐久夜は、そっと朧の頭を撫でる。
「解ってるって」
佐久夜は、作業を終え両肩をほぐす為、ストレッチをしながら少し大きな声を出す。
「今日の作業は、終わり!腹減ったな。神さま、今日は何が食べたい?」
物陰に潜む神さまが、ピクンと跳ねたのが、見えた。一度、そっと見えないように身体を隠す。
「神さま?神さま~?聞こえてる?ご飯何にする~?」
「見え見えだ」
京平が、背中を向けたまま、笑いを噛み殺していた。
しばらくすると、全然こちらの様子を気にも留めていなかった様子で、神さまがやってきた。
「どうしたのじゃ?主ら、今日の作業は、もう終わったのか?」
「ぶぶっ!」
京平が、噴き出した為、佐久夜は、京平の足をぎゅっと踏みつけた。
「あぁ、今は、鋳型に青銅を流し込んで、熱を冷ましているところだ。出来上がるまで、楽しみにしておいてくれよ」
「うむ、我も、佐久夜たちの想いが込められていることは、凄く感じておるぞ」
佐久夜も神さまが、期待して待っていてくれていることがわかっていたので、力強く頷く。
神さまは、願う。佐久夜たちの作業が、無事終わります様にと。佐久夜たちの鏡作りが、成功しますようにと。
朧から口出しはするなと言われていたが、祈りは神さまとしての役割の一つだ。
朧は、仕方ないなと思いつつ、神さまを見て再び毛繕いを始めた。
「今日の作業は、ここまでかな」
手伝ってくれた朱丸の頭を撫でて、佐久夜は礼を伝えた。
「ウヘヘ」
嬉しそうに朱丸も目を細め、笑顔で笑う。
「ところでさあ、さっきからずっと気になってるんだけどて…アレ」
京平が、アレに背を向けたまま指を指す。
柱の影から顔を半分覗かせて、こちらの様子を伺うのは、神さまだ。
「俺たちが、神様に奉納する為の鏡を作ってるもんだから、朧に口出し無用と言われちゃって……」
じっと見つめてくる視線が痛い。皆が楽しそうに作業をしている姿を見て、寂しそうに声をかけて欲しそうにしている。
「朧センセ、何もしてないんだから、神さまと一緒にいてやりなよ」
佐久夜たちの近くの縁側で、毛繕いに励む朧に京平が、神さまの側にいろと言った。
「にゃにを!」
脚を伸ばしたまま、きらりと目を光らせて京平を睨む朧。
「だって、朱丸と浅葱は、いろいろ手伝ってもらったけど、朧センセは、見てるだけじゃん。神さま寂しそうじゃん」
「オイラは、わざとちんちくりんを除け者にしたわけじゃにゃいにゃ!」
耳を真っ平らにして、鼻息荒く抗議する朧。佐久夜は、そっと朧の頭を撫でる。
「解ってるって」
佐久夜は、作業を終え両肩をほぐす為、ストレッチをしながら少し大きな声を出す。
「今日の作業は、終わり!腹減ったな。神さま、今日は何が食べたい?」
物陰に潜む神さまが、ピクンと跳ねたのが、見えた。一度、そっと見えないように身体を隠す。
「神さま?神さま~?聞こえてる?ご飯何にする~?」
「見え見えだ」
京平が、背中を向けたまま、笑いを噛み殺していた。
しばらくすると、全然こちらの様子を気にも留めていなかった様子で、神さまがやってきた。
「どうしたのじゃ?主ら、今日の作業は、もう終わったのか?」
「ぶぶっ!」
京平が、噴き出した為、佐久夜は、京平の足をぎゅっと踏みつけた。
「あぁ、今は、鋳型に青銅を流し込んで、熱を冷ましているところだ。出来上がるまで、楽しみにしておいてくれよ」
「うむ、我も、佐久夜たちの想いが込められていることは、凄く感じておるぞ」
佐久夜も神さまが、期待して待っていてくれていることがわかっていたので、力強く頷く。
神さまは、願う。佐久夜たちの作業が、無事終わります様にと。佐久夜たちの鏡作りが、成功しますようにと。
朧から口出しはするなと言われていたが、祈りは神さまとしての役割の一つだ。
朧は、仕方ないなと思いつつ、神さまを見て再び毛繕いを始めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる