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71 光の守護
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佐久夜が通う高校は、海山市内の公立高校だ。元々は、男子校だったが、少子化の影響で、同じ市内の女子校と統廃合され、今は共学となった。
佐久夜自身、この高校を選んだのは、世話になっていた親戚の家から通うには遠く、親戚が世間体を気にするまでもない、偏差値の高い進学校であったことから、一人暮らしを反対される理由もなくなるだろうと考えたからだった。
親戚中をたらい回しされ、厄介者扱いをされていた佐久夜は、誰にも干渉されず、気兼ねすることなく、一人で生きることを喜びと感じていた。
元々人との距離の取り方が、分からなかった為、友人もなく。ただ、通学する。ただ、バイトをする。無気力極まりない生活を送っていた。
「佐久夜~!おはようさん」
京平が、大きな声で手を振りながら佐久夜に駆け寄ってくる。
「おー!京平、昨日ぶり!おはよう」
京平の姿を見て、朗らかな笑顔を見せる佐久夜。京平は、佐久夜の肩に腕をかけ、頭をゴチンとぶつけて大きな声で笑った。
佐久夜も負けじと京平の頭に腕を回し、もう片方の手ににぎり拳を作り、顳顬にグリグリ拳を押しつけて大きな声で笑った。
「あー、早く仕上げてぇな!」
「今日、朝に鋳型を工房に移しておいたから、今度の土曜日は、仕上げの作業だよ」
佐久夜が、笑うと京平は、両手に握り拳を作り嬉しそうに身悶える。
「くーっ!佐久夜も作業進めたいのに俺を待ってくれて悪いな。皆んなにも宜しく伝えといてくれ」
じゃあなと手を振り、京平は自分の教室に入って行った。
チリリ
「!?」
佐久夜は、頸に刺激を感じ振り返った。
(何だ?静電気が走ったような…感触)
後頭部を手のひらでさするも、何も違和感が残っていない。周りを見ても、普段と何ら変わりもない朝の学校の風景にしか感じられなかった。
(気のせい……かな?)
わしわしと自分の後頭部に指先を差し入れ、手櫛で髪を梳かしながら佐久夜も自分の教室に入った。
週末の青銅鏡の仕上げが楽しみで仕方ない京平は、鼻唄交じりに自分の席に着く。
「よう、京平。機嫌良いな」
「お、轟、解るか?」
後ろを振り返り、満面の笑顔で振り返る。後ろの席の轟 大吾は、眩しそうに目を細める。
「そうだ、今度いい物件見つけたんだ。久々に行かねえか?」
「良い物件?」
京平は、首を傾げて聞き返した。
「ああ、無理心中があったという曰く付きだ。好きだろ?」
「あー、俺、そういうの卒業したんだわ。辞めとく」
すっかり興味無いと手を振って前を向いた。
轟は、元々京平のオカルトマニア友達で、よく連んで廃墟巡りをしていた。京平自身、佐久夜と知り合ってから、実際のオカルト以上の体験をしてからは、陳腐な廃墟巡りに触手が働かなくなり、自然と轟との付き合いが減って行った。
「ああん?待てや、おい!」
邪険に扱われ、不機嫌を露わにし、轟は、京平の肩に手を掛けようとした。
バチン!!
「ッタァ!」
轟の手が、京平の肩を振れる前に弾かれた。手の甲から煙が立ち、轟は慌てて手を抑える。
「ん?どうした」
振り返る京平の笑顔が、眩しく目を細める轟。
「何でもねえよ」
「ふふん、悪いな。俺、彼女出来たから、それどころじゃねえんだわ」
轟は、京平が前を向くと小さく舌打ちをした。京平の周りを包む光が、轟を邪魔をした。
(何だ、あの光は。俺を拒絶するだと?)
佐久夜は、まだ知らなかった。
佐久夜自身、この高校を選んだのは、世話になっていた親戚の家から通うには遠く、親戚が世間体を気にするまでもない、偏差値の高い進学校であったことから、一人暮らしを反対される理由もなくなるだろうと考えたからだった。
親戚中をたらい回しされ、厄介者扱いをされていた佐久夜は、誰にも干渉されず、気兼ねすることなく、一人で生きることを喜びと感じていた。
元々人との距離の取り方が、分からなかった為、友人もなく。ただ、通学する。ただ、バイトをする。無気力極まりない生活を送っていた。
「佐久夜~!おはようさん」
京平が、大きな声で手を振りながら佐久夜に駆け寄ってくる。
「おー!京平、昨日ぶり!おはよう」
京平の姿を見て、朗らかな笑顔を見せる佐久夜。京平は、佐久夜の肩に腕をかけ、頭をゴチンとぶつけて大きな声で笑った。
佐久夜も負けじと京平の頭に腕を回し、もう片方の手ににぎり拳を作り、顳顬にグリグリ拳を押しつけて大きな声で笑った。
「あー、早く仕上げてぇな!」
「今日、朝に鋳型を工房に移しておいたから、今度の土曜日は、仕上げの作業だよ」
佐久夜が、笑うと京平は、両手に握り拳を作り嬉しそうに身悶える。
「くーっ!佐久夜も作業進めたいのに俺を待ってくれて悪いな。皆んなにも宜しく伝えといてくれ」
じゃあなと手を振り、京平は自分の教室に入って行った。
チリリ
「!?」
佐久夜は、頸に刺激を感じ振り返った。
(何だ?静電気が走ったような…感触)
後頭部を手のひらでさするも、何も違和感が残っていない。周りを見ても、普段と何ら変わりもない朝の学校の風景にしか感じられなかった。
(気のせい……かな?)
わしわしと自分の後頭部に指先を差し入れ、手櫛で髪を梳かしながら佐久夜も自分の教室に入った。
週末の青銅鏡の仕上げが楽しみで仕方ない京平は、鼻唄交じりに自分の席に着く。
「よう、京平。機嫌良いな」
「お、轟、解るか?」
後ろを振り返り、満面の笑顔で振り返る。後ろの席の轟 大吾は、眩しそうに目を細める。
「そうだ、今度いい物件見つけたんだ。久々に行かねえか?」
「良い物件?」
京平は、首を傾げて聞き返した。
「ああ、無理心中があったという曰く付きだ。好きだろ?」
「あー、俺、そういうの卒業したんだわ。辞めとく」
すっかり興味無いと手を振って前を向いた。
轟は、元々京平のオカルトマニア友達で、よく連んで廃墟巡りをしていた。京平自身、佐久夜と知り合ってから、実際のオカルト以上の体験をしてからは、陳腐な廃墟巡りに触手が働かなくなり、自然と轟との付き合いが減って行った。
「ああん?待てや、おい!」
邪険に扱われ、不機嫌を露わにし、轟は、京平の肩に手を掛けようとした。
バチン!!
「ッタァ!」
轟の手が、京平の肩を振れる前に弾かれた。手の甲から煙が立ち、轟は慌てて手を抑える。
「ん?どうした」
振り返る京平の笑顔が、眩しく目を細める轟。
「何でもねえよ」
「ふふん、悪いな。俺、彼女出来たから、それどころじゃねえんだわ」
轟は、京平が前を向くと小さく舌打ちをした。京平の周りを包む光が、轟を邪魔をした。
(何だ、あの光は。俺を拒絶するだと?)
佐久夜は、まだ知らなかった。
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