神さまのお家 廃神社の神さまと神使になった俺の復興計画

りんくま

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72 黒い手

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昼休み、京平は弁当を左手に持ち、右肩をぐるぐる回しながら、佐久夜の教室にやってきた。

「肩、なんかしたの?」

「うーん、朝起きた時は、何もなかったんやけど、徐々に怠くなって…筋肉痛?」

弁当を机の上に置くと、右肩の筋を伸ばすようにストレッチをする京平。

「ハハッ、おじいちゃんじゃん」

佐久夜は、笑い飛ばしたが、京平の肩に黒いもやっとした汚れが、目に付いた。佐久夜も鞄から弁当とマグカップを取り出し、教卓の上に置かれたヤカンから茶を貰うべく、マグカップを持って席を立った。

茶を注ぎ入れ、席に戻ろうと振り返り、京平の後ろ姿が目に入る。

(何だろう、やっぱりモヤっとしているように見えるな)

「週末の作業の方が、重労働だぞ。運動不足なんじゃないか?」

すれ違いざま、京平の肩を払うように軽く叩いて通り過ぎる。

「!?あ、急に軽くなった?若さ故の復活か?」

「言ってろ」

佐久夜と京平は、弁当を広げ食べはじめた。佐久夜は、京平の肩に黒いモヤがなくなっていることに安心し、ほっと息を吐いた。

弁当を食べながら、京平の肩を払った左手は、ジンジンと鈍い痛みが残っている。

佐久夜は、少し椅子を引き、そっと自分の手のひらを確認すると、うっすらと黒いモヤが影っているように見えた。

(俺の手に移った?)

「おい、佐久夜なんか面白い顔になってんぞ?」

京平が、人差し指を佐久夜の眉間に突き刺した。佐久夜も京平になら、話しても問題ないかと思い、両掌を上にして机の上に置いた。

「俺の右手と左手、お前にはどう見える?」

「ん?触っても?」

佐久夜は、首をゆっくり左右に振った。京平も、詳しく話さない佐久夜の意図を汲み取り、じっと両手を見つめる。

「おぉ!お前の手相、マスカケって言うんだぞ。感情線と頭脳線が繋がってる!良いな」

「誰が手相を見ろって言った」

京平の間の抜けた答えにがっくりと、肩を落とした。

「え~。じゃあ、お前にはどう見えるんだ?」

「……左手が黒い」

京平の耳元で囁くと、京平は大きく目を見開いた。

「マジ?」

「マジマジ!」

京平も佐久夜が嘘を付いていないのは、解っていた。お互いに他人には、話すことの出来ない秘密を知っている。

「さっき、京平の肩を払ってから黒くなった」

京平は、黙ったまま佐久夜の両手に顔を近づける。右手、左手と順番に鼻をひくひくさせ匂いを嗅いだ。

「……左手の方が臭い」

京平が、片眉を上げ答えた。臭いと言われ、失礼だなと思いつつも、佐久夜自身も右手と左手の匂いを嗅ぎ比べるが、佐久夜にはよくわからなかった。

「俺、最近、鼻が効くんだよ」

「鼻?」

「よくわかんないけど、スーちゃんと付き合うことになってから、鼻が効くんだ。その匂いは、ヤバイ系の匂いだ」

佐久夜は、そう言われて妙に納得した。

「そっか、ヤバイか……」










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