結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系

文字の大きさ
44 / 170
第二部第一章 ベリズリー

人間

しおりを挟む
 こんなことを考えているうちに、プランスが近くに寄ってきて、私の心臓が破裂しそうだった。
  
 プランスの片手には、馬の毛を梳くための櫛を持っている。
 シルバーは嫌そうな顔をしていて、後ろに逃げる。

「いつもこうやって、シルバーは逃げるんだよね~」

 困った顔をする彼は、私の一個上を取るように、異世界袋から林檎五個と人参を五個を取り出した。
 今日は私が、あげたいと子供じみたことを思っていたけど、プランスの傍に居れるのなら、私は満足だ。
 理由は、彼のことが好きでずっと近くに居れるからだ。

 なぜ彼を好きになったか、私はわからない。
 いや救ってもらったから好きになったのだ。
 まるで恋愛小説のような出会いだった。片思いのところも、恋愛小説の流れでこうやって旅するあたり、本当に恋愛小説である。
 イケメンでスタイルも性格もよくて、強い人物なのだ。
 こんなにも完璧な人が他にいるのだろうか? 
 少なくても私は出会った・・・・・。
 私はどこかでプランスにすごく似た人に恋をしていた。
 顔も声も匂いも覚えていない。でも、思い出があった感覚がある。
 でも、その彼は死んでしまっている感覚が手に染み付いている。なんなんだこの感覚は? 本には書いていた気がした。
 確か、前世の記憶とか・・・・・。
 前世のことを体に染みているのは、あまりに残酷だろう。しかも人を殺めたという感覚まで、手に残っている。
 私が人を殺したのか? そんな筈はない絶対にない。

「大丈夫か? もしかして・・・・・」

 また頭によぎるあの時の言葉が。

『俺は最初君のことを見た時、兵士に突き出そうと思った。それに、君に初めて触れた時は、無視していればよかったと思ったよ。でも、君の微笑みを見てたら、このお方なら世界を救えると考えて、俺の・・・・・・』

 どんな意味かわからないのに、あの言葉に全てが包まれている。
 
 思考実験をやったら全てが自由になる筈と考えれる。だけど、それじゃあ想定にしか過ぎない。
 だから真実でも確証もない。
 それはまるで、階段のない二階建ての家のようだ。二階が本当にあるかもわからない状況なのだ。

「シルバー、アンを起こせ、あとこれ飯」

 プランスはなぜか、アンを起こすよう、シルバーに命令してご飯をシルバーの前に投げる。
 
 同時にシルバーは鼓膜が破れるほど高い音をどこからか出した。
 その時、アンが壮絶な顔をしながら落ちてきた。
 それで、シルバーはご飯を食べ終わる。すごいスピードであった。

「行くぞ! まさかここまで・・・・・」

 プランスは壮絶な顔で、もう絶望して自分が死ぬように思っている顔だ。
 まだ何も起こっているはずがない。
 なのに、プランスには何かを感知しているらしい。

「ほらお前ら行くぞ! ちっさっきシルバーの魔力使っちまった」

 悔しそうに彼は俯き、シルバーに乗った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...