結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

恋愛系

文字の大きさ
83 / 170
第三部第二章 ダンジョン

だがやっぱりあの方法しかないのか

しおりを挟む
 でも、それは仮説でしかなくてそんなの実際は存在しなかった。
 つまり、ダンジョンォクリアしなくてはならないということだ。望みでは試練をクリアしてプランスを生き返らせたかった。だけど、老魔族は死亡してしまった。
 まさか私にその話をした後で急に死んでしまったのだ。
 横に倒れている老魔族は見るに耐えない姿をしている。もう仲間が死んでいる姿を見たくないから目を背けた。
 そして他の魔族が近づいてくる。
 たぶんこのお方以外に情報を持っている人材はいないだろう。
 だからやっぱり、ダンジョン攻略をしなくてはならないのか? でもあの言葉を忘れたわけでもあるまい。
 それを敵としない勇気は私にあるけど体が動かないのが現実でとても辛く目を背けたくなった。
 だけど、目を閉じればプランスの微笑みが眩く光って、この旅がやめたくてもやめれない旅になってしまう。これは私の責任だけど、彼の責任でもある。
 私に思い出を作ったあの人が悪いのだから。

「ここに! ダンジョン攻略を手伝ってくれる者はおらぬか!」

 魔族の人々は俯きながら、騒めきが始まった。なんのダンジョンかわからないのだろう。
 私自身も場所しかわからないし名前すらも知らない。

 だから名前を言ってみんなに知らせることはできないのだ。
 とても不便であるため、どうすれば良いのだろうか?

「私がいます」

 そう言って出てきたのは、ルドラだった。シルバーより少し劣るほどの魔力の持ち主だが実力ではシルバーを越しそうであるため、仲間になってくれれば、嬉しい人材である。
 ルドラがダンジョン攻略を手伝ってくれれば、クリアできるかもしれない・・・・・?
 だけど、最後に会ったあの魔族は規格外の力の持ち主ということが一言だけで分かった。意味が分からないほどの力だ。
 まるで、プランスのような、ルカのような魔力の持ち主だ。

 まさか、大天使サムエルだったのか? いやそんなわけない。たぶん大天使サムエルじゃない、だってここは魔界だし天使がいるはずがない。
 天使がいるとしたら、魔界全体が騒ぐと思うし・・・・・。それでもあの魔力量はなんと片付ければ良いのだろうか?
 プランス達の土俵にいても全く遜色がないと思う。

「ルドラさん、きてくれるとしても命の保証はできませんよ? それとプランスと同等の力を持つ者も一体いました」

 私は慎重に言葉を発した。ついてきてくれるには嬉しいけど、死んでしまうことも十分あり得る。それだけの強敵だから私は怖がってここまできた。
 いや違うか、あの階段部分で帰ってしまったのだ。

 私もできれば意地を張って前に進み、行き当たりばったりで行きたかったでも、それが可能じゃないことが分かったのだ。
 今でも行くことが怖い。

「死ぬ覚悟など、生まれて間もない時からできています。それにミア様、わたくしのことはルドラでいいです」

「では私もミアと呼んでください。ミアと呼ばれた方が心地いいです!」

 ♢♢♢

 ダンジョンの奥へ進むにつれて、空気はますます重たくなっていった。静けさの中に潜む何かが、私たちを監視しているような錯覚を覚える。前方に広がる闇は、ただの闇ではなく、意思を持った何かのようにうごめいているようだった。

「ここ、なんか変ね……」不意にアンが声を漏らした。

 彼女の言葉は、空気を切り裂くように響いた。アンはずっと静かに歩いていたが、その態度は何かを隠しているようでもあった。彼女の直感が鋭いことは知っている。だからこそ、アンが感じ取った「違和感」には耳を傾ける必要がある。

「どうしたの、アン?」私は彼女の表情をうかがう。いつも笑顔を絶やさないアンの顔が、今は険しいものになっていた。

「わからない。でも、何かが私たちを試している気がするのよ。見えない何かが、私たちの心を揺さぶっている・・・・・まるで、何かが私たちを見透かしているみたいに」

 アンの言葉に、私は冷たい汗をかくのを感じた。これまで進んできたダンジョンとは明らかに異なる、不気味さが漂っている。普通の魔物や罠ではない、もっと根深い何かが潜んでいるのだろうか。

「アンの言う通りです。この場所には何か、異常な力が渦巻いています」ルドラが静かに補足する。その声には、いつもの冷静さを保ちながらも、微かな緊張感が漂っていた。

 アンが感じる「違和感」、ルドラの魔力で感知した「異常」。どちらも無視できるものではない。私は一瞬、進むべきか退くべきか迷ったが、ここで足を止めるわけにはいかなかった。

「進むしかないわね」私は意を決して一歩を踏み出す。

 すると、その瞬間だった——闇の中で何かが蠢く音が聞こえた。まるで無数の手が私たちを捕らえようとしているかのような、不快な感覚が全身を包み込む。視界の端に何かがちらつく。私は即座に剣を構え、アンとルドラに声をかける。

「気をつけて! 何か来る!」

 すると、闇の中から何かが飛び出してきた。それは姿が見えないまま、まるで空気そのものが襲いかかってくるかのように私たちを包み込んだ。

「これ・・・・・何?」アンが叫び声を上げる。彼女の言葉に応えるかのように、視界がどんどんぼやけていく。周囲の空間が歪み、現実と夢の狭間にいるかのような錯覚を覚える。

「これは幻覚か・・・・・? でも、ただの幻覚じゃない」私は頭を振ってその感覚を振り払おうとするが、なかなかうまくいかない。

「いや、これはもっと深い・・・・・」ルドラが低く呟く。「心を試されている。おそらく、このダンジョンそのものが意思を持っている」

 その言葉に、私は背筋が凍る思いだった。ダンジョンそのものが意思を持ち、私たちを試している?そんなことがあり得るのだろうか?だが、今の状況を考えると、ルドラの言葉には確かに真実味があった。

「でも・・・・・どうすればいいの?これじゃ前に進むことも、戻ることもできない!」私は焦りを感じ始める。

「落ち着いて、ミア」アンが私の腕を軽く叩く。その目は不思議なほど冷静だった。「これは、きっと試練の一つよ。私たちの弱点を突こうとしているだけ。気持ちを強く持って。これに負けたら、ダンジョンに飲み込まれてしまう」

 アンの言葉にハッとさせられた。そうだ、恐怖に飲み込まれるわけにはいかない。ここで私たちが弱さを見せれば、ダンジョンに支配されてしまうかもしれない。私は大きく深呼吸をし、冷静さを取り戻そうと努めた。

「わかった。前に進むわ」

 私は一歩を踏み出した。次の瞬間、闇の中から再び何かが現れた。それは巨大な影のような存在で、まるで意思を持って私たちを押し潰そうとしているかのようだった。

「ミア、気をつけて!」ルドラが叫ぶ。

 私は剣を構え、影に向かって振り下ろす。しかし、その剣が届く前に、影は不気味に笑いながら消え去った。

「こいつ・・・・・私たちを弄んでいるのか?」私は苛立ちを隠せなかった。

「そうみたいね。でも、これも含めて試練なのかもしれないわ」アンが冷静に言う。

「・・・・・まさか、このダンジョンは私たちの心を壊そうとしている?」私は震える声で呟いた。

「その可能性は高いですね。私たちを試すのは、ただ力だけではないようです。精神力、意志の強さ・・・・・それも問われているのかもしれません」ルドラが頷く。

 私たちは立ち止まり、再び進むべきかを考える。ダンジョンは、ただ物理的な力で突破できるものではないと悟った。これから先に待つ試練は、私たちの心を揺さぶり、弱点を突こうとしているのだ。

 でも、アンがそばにいる限り、私はきっと負けない。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...