結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

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第三部第二章 ダンジョン

夢を覚ますと

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 そして夢を覚ますと、アンが私の肩を握りしめていた。
 私は石畳に寝転がっており、よく寝た後みたいにあくびをしてしまった。全く私は夢を現実として受け入れてしまっている部分があったとは。
 確かに今でも現実として受け入れたい。それが本心である。理由は言うまでもなくプランスが大好きだし、今ならルカも倒せると思う。

 最初旅に出ようとした時の目的はルカが村を開拓して村の人物は全て処刑するから、それを止めようとしてのことだ。
 止めるにはやっぱり、ルカを殺さないとダメである。それにはプランスが必要不可欠だ。
 だから最初の目的達成のためでもプランスは生き返らせねばならない。
 まるで決まりのようにして決まっていることだ。

「やっと、目を覚ましたか? 随分お眠りが長かったですね?」

 アンが涙を流しながら言った。でも顔には微笑むが漏れている。なんて可愛らしい顔なのだ? それに私の顔にも似ている。
 なんでか姉のように鼻が高い。
 
 もしかして、私と似ているからなのか?

「お眠りね~、可愛いことも言うじゃないの」

 私は起き上がるとアンの頭を無性に撫でたくなった。だから頭に手を乗せて撫でた。
 
 アンは嫌そうな顔をするも、抵抗はしない。よく姉が妹をいじめるように私はアンを撫でた。
 別に下心はないけど、ただ撫でただけだ。
 
「ミア起きましたか? では前に進みまいょう! 罠を踏まないように今、罠をすべて降り除きました! ですが・・・・・階段に足を踏み入れた途端上位魔人が複数で襲い掛かって来たのです。その場は私が倒しましたが、なかなかの手練れでしたし、階段を降りれば降りるほど強力な魔族になってきました。私が何とか倒しましたが最深部にいた魔族を見て一度戦いましたがそうとうな手練れで負けてしまいました」

 ルドラの言葉からして、最深部までは辿り着けるも、最深部にいる者が強いということか。でも最深部から出てきている様子もない。
 理由は、ルドラが相当な手練れということを知っているはずなのに、無駄に仲間を殺させたからだ。普通ならば自分が一刀目でルドラを仕留めたほうが良い。

 つまり、下から上に上がるのを極端に避けているということだ。
 だから上から重点的に魔力攻撃魔法攻撃を連打したほうが良いがもしも、上に上がってきたらどうしたら良いのだろう?

 その場合私達で食い止めれるのか? 分からない。

「ではこの三人で勝てますか?」

 恐る恐る訊くとルドラは苦笑いをしながら、何か不味そうな顔をした。やっぱり無理なのだろうか?

「私が死ねばなんとか倒せます」

 やはりそういうことか・・・・・。何故戦士や騎士という者はしにたがるのだろう。まるで死ぬために騎士になったりしているように見えてしまう。
 これはプランスも同様で自分が最前線に立って討たれるのが役目だと思っている。それだけはもう許さない。

「どうしてしぬのですか! 死なない方法もあるでしょうに!?」

 声を張り上げた瞬間、洞窟内に響いた自分の声が、まるで壁に跳ね返って耳を打つようだった。私の足元には硬く冷たい石畳が広がり、その上にかすかな血の匂いが漂っている。明かりの少ない洞窟の中、ほんのわずかな光が岩肌に反射し、薄暗い景色がぼんやりと浮かび上がっていた。周囲にはひんやりとした空気が満ち、無数の石柱が不気味な影を落としている。

 ルドラは驚いた様子で一瞬私を見つめたが、すぐに冷静さを取り戻し、ため息をついた。彼の顔は、薄暗い光の中で影がかかって見え、険しい表情がより一層際立っている。

「それが戦士の役目だからです、ミア。敵が強大すぎる場合、誰かが犠牲にならなければ、道は開けません。あの最深部にいる魔族の力を感じたからわかるかもしれなまん? あれに勝つには、今の我々では誰かが命を捧げるしかないんです」

 ルドラの言葉は、冷たく響き渡る。彼の瞳には一切の迷いがない。だがその無情な現実を、私は受け入れることができなかった。私はこの洞窟に漂う冷気よりも、心の中に湧き上がる怒りと絶望感で身体を震わせた。

「それでも・・・他の道があるはずよ!」

 反射的に声が漏れた。私の目の前で戦士が、自分の命を簡単に差し出すような姿を見るのはもう嫌だ。プランスのことを思い出す。あの時、彼も同じように自らを犠牲にしようとしていた。結果的に私は彼を失い、何もかも失ってしまった。それなのに、また同じ過ちを繰り返すというのか?

 ルドラは、私の必死な訴えに対してほんの少し苦笑いを浮かべた。それでもその顔には、頑固さと覚悟のようなものが見え隠れしていた。洞窟内の冷たい光が、彼の鋭い顔立ちをさらに険しく見せる。背後に広がる石壁の影が、まるでこの戦いの行く末を暗示するように、不気味に動いていた。

 「ミア、あなたがそう言いたい気持ちはわかる。だが、あの魔族は並大抵の相手じゃない。私が全力を尽くしても、倒しきれなかった。あの時、命をかける覚悟があれば、あるいは倒せていたかもしれないのです・・・」

 ルドラの言葉に、私はさらに胸が締め付けられるようだった。あの魔族――最深部に潜む敵のことを思い出すだけで、冷たい恐怖が足元から這い上がってくるような感覚が蘇る。洞窟の奥に続く、真っ暗な階段の先に待ち受けるものが、私たちを飲み込もうとしているかのようだ。

 その時、そっと手に温かい感触が伝わってきた。隣に立っていたアンが、私の手をぎゅっと握っていたのだ。彼女の瞳は、闇の中でかすかに光って見えた。その表情は静かで、しかし何かを見据えるような決意が感じられた。

「ミア、何か策があるなら、私は信じるよ。でも、無理はしないで。私たちでできることを全力でやりましょう」

 アンの言葉は、冷えきった空間に一筋の光を差し込むようだった。彼女の温かい手の感触は、私の心を少しずつ落ち着かせる。彼女もルドラも、私のことを信じてくれている。無謀な戦いではなく、何とか道を切り開こうと一緒に考えてくれている。

 私は深呼吸をした。この状況を冷静に見つめなければならない。目の前の戦いは厳しいが、今度は誰かを犠牲にすることなく勝利を掴みたい。洞窟の暗闇の中、私は再び覚悟を決めた。誰も死なせない。プランスとの記憶が私の背中を押す。

「行きましょう。まだ、全てが終わったわけじゃない」

 私たちは再び洞窟の奥へと歩き出す。岩肌に沿って張り巡らされた罠や、石畳に残された古い戦いの跡。ここには多くの者たちが命を賭けて戦ってきたことが、無言のまま伝わってくる。だが、私たちが進む道は、彼らとは違う。

 ルドラが歩きながら、最後にぽつりと呟いた。

「最深部の魔族・・・俺たちの力で倒せるかどうかはわからないが、少なくとも、お前のその決意ならば、何かが変わるかもしれない」

 洞窟の奥深く、何かが私たちを待ち構えている。その姿が見えないまま、恐ろしいほどの静寂が辺りを包み込んでいた。
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