嘘は吐けない

みど里

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1 尋問

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 王子であるエルネストは憤慨し、誰もいない廊下を歩いていた。先程の会話が思い出されて、これ見よがしに足を踏みしめながら歩く。


「見るも無残だな。ルヴィ・システィーヌ」
 一般罪人を収容する牢屋の中、石畳に座り項垂れる女を見下ろす。エルネストの、元、婚約者であった令嬢だ。
「リアンナを害する計画を立てたと、まだ自供しないようだな」
「……私は何も知りません」
 エルネストは鼻を鳴らした。
「そう言っていられるのも今だけ……貴様の沙汰だ。自白剤による公開審問を行う」
 途端、ルヴィが顔を上げ、絶望に目を見開いた。

 エルネストは、これだけで少し溜飲が下がった。
 いつも澄ました顔をして、その裏では醜い嫉妬にかられ、リアンナを害そうとした女。その化けの皮がとうとう剥がれた。

「じはく、ざい……それ、だけは! そう、そうです、私が、彼女を襲う計画を立てました! 認めます! だから……」
 エルネストは、ぎり、と奥歯を噛み締めた。
「黙れ! 今更自供しても遅い。その公開審問で詳細まで語ってもらうからな!」
 エルネストの愛しのリアンナが、危うく傷物になるところだったのだ。許せる訳がない。公開審問により罪が暴かれ、このルヴィは罪人となるだろう。だが、それだけでは駄目だった。
「死を願う程の苦しみを与えてやる……!」
 簡単に死なせない。リアンナに仕掛けたように、男たちに嬲らせてもいいと考えた。
 男に縋り、操り、リアンナを害するために体を使い懐柔するような女だと。与えるのは、快楽ではなく暴力だ。
 エルネストはより怒りが込み上げて、鉄格子を蹴り、その場を去った。


 そして、待ちに待った公開審問の日。
 エルネスト王子の寵愛を受けたリアンナに、暴漢を差し向ける計画を立てた、ルヴィ・システィーヌの審判の日だ。
 大聖堂の中央に、手枷を嵌めたルヴィが引き摺られてくる。裁判所側、原告側、傍聴側は、それぞれ前方、左右に分かれて座っている。
 前方に並んで座る3人の裁判官。中央は裁判長で、両脇の二人が被告を尋問する役割を負う。
 原告側には怯えるリアンナが座り、その隣にぴたりと寄り添うようにエルネストが陣取る。リアンナの後ろには、護衛の男が立っている。
 この護衛の男はリアンナの幼馴染であり、誰よりもリアンナの幸せを望む男だった。貴族であるリアンナが昔、幼い頃孤児を拾って傍に置いた。それがこの男、リュゼ。
 リュゼは、リアンナへの忠義と恋心を指針とし、掲げてきた。
 歯を食いしばりながら、罪人となるルヴィを睨みつけている。

 公開審問と銘打ってはいるが、実質の尋問だ。被告側に陳情の場をあたえず裁定する場である。

 そして、自白剤投与による尋問が始まった。
「被告、ルヴィ・システィーヌ。心のまま、正直に答えるように」
「……かしこまりました」
 目はうつろ。声は朦朧として、普段の彼女を知るものが見れば驚く程、抑揚なく弱弱しい言葉だった。一目で強力な自白剤が効いていると、全員が理解した。
「原告、リアンナ・マードックへの集団暴行未遂は、被告、ルヴィ・システィーヌが計画し差し向けたもの。相違ないか?」

 エルネストは、とうとう、この公然の場であの女の罪が暴かれるのだと、心が湧いた。悪は栄えない。とうとう――。


「いいえ。ちがい、ます」
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