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二章
七話 迷宮都市ミズガルズ
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迷宮都市ミズガルズは地上を支配する三つの巨大国家によって運営されている。
肥沃な土地柄で、穀倉地帯を抱えた西の大国。武と正義の国【レイルフォス】
北の氷の大地を支配する。魔法技術に優れた、知と魔術の国【オルレアン】
南東の鉱山地帯を牛耳る。工業技術に秀でた、金と鍛冶の国【ライアット】
それ以外にも数多の小国が関わっているが、目的は何処も似たようなもので。
冒険者たちの支援を名目に、ユグドラシルの利権を得ようと躍起になっている。
大厄災によって世界が衰退していく中で、唯一の希望である神樹。
ユグドラシルを最初に踏破すれば、その国は世界の全てを支配できる。
冒険者とは国の名を背負って、代表として命を賭けて戦う傀儡のようなものだ。
そうなるのが嫌で、僕みたいにどの国にも属さない冒険者は少なからず存在する。
金銭的な支援を断り、たとえ貧乏暮らしになったとしても。しがらみに囚われるよりマシだと。
野良と呼ばれる僕たちは、支援を受けられない代わりに、ミズガルズ内を比較的自由に行動できる。
【レイルフォス】と【オルレアン】は古くから領土争いや食料問題で揉めていた。
表向きは同盟関係にあっても、水面下では今も対立している。それはミズガルズでも同じ。
所属の国によって値段を変える悪質な店や、パーティ内でも出身地による差別が横行している。
これは【ライアット】でも変わらない。自国の者にしか装備を作らない鍛冶職人がいたりと。
結局、同じ国の関係者で固まるのが基本となり、僕たち野良が足りない穴を埋める役割となっている。
冒険者街や住宅街などを歩いていると、地区ごとに建築様式が大きく変わっているのが見れる。
あからさまに国境のような線が引かれていたりと。まぁ、自由を謳っておいて現実はこんなものだ。
野良である僕たちは、そんなしがらみを気にすることなく通りを抜けていく。
僕がよく利用している宿がある貧困地区は、国ではなくミズガルズが管理している。
名前からして治安が悪そうだけど。実際は全員が平等な扱いの冒険者街で一番安全な場所だ。
「……リーン、血が出ています」
隣を歩いていたフォンが、僕の手を取った。
大した怪我ではないけど。指の皮が捲れて血が流れている。
「本当だ。あの男を殴った時に何かにぶつかったんだね。気にするほどでもない――」
「駄目だよ! 怪我を甘くみたらいけないんだよ!」
ノノが慌てて腰袋から包帯を取り出す。
「……待っててね。ノノが治療してあげるから」
「ちびっ子じゃないんだし。擦れたくらいで大袈裟だよ」
「ううん。あれはノノのせいだもん……ごめんね……」
何度も指を撫でながら、ノノが丁寧に処置をしてくれる。
動作が妙に艶めかしい。抵抗がなければ僕もあの男のようになっていたかも。
「私の治療を強引に進めるのですから。リーンもしっかりと治療を受けるべきです」
「そうですそうです。あっ、ワタシも何かしないと……。えっと、口で消毒とか?」
「だ、大丈夫だって。それ以上は恥ずかしいから!」
女の子三人に囲まれて。これ以上は別の意味で大怪我をする。
ノノにお礼を伝えると、尻尾を大きく振りながら彼女は笑顔で答えた。
「リーンくんカッコよかったよ。ノノ、助けてもらえて……凄く嬉しかった」
「そうですね。見事な手際でした」
「ワタシも、そう思います!」
こんなに褒められるとは思わず。熱くなる頬を掻く。
「本当はもっと穏便に済ませるべきだったんだけど。多分、根に持たれただろうね」
あの男が何処の所属かは知らないが、結託して復讐してくる可能性もある。
なるべくフォンたちを巻き込まないようにしないと。治療の邪魔をされかねない。
「この辺りで優秀な治癒師に心当たりないかな?」
「ノノはそもそも怪我をする事がないから……カナデお姉ちゃんなら知ってるかも?」
「カナデさんか。確か【月の雫】は無所属だったしちょうどいいかな」
治療魔法に精通しているのは【オルレアン】だが。
当然、【レイルフォス】は歓迎されない。野良もあまりいい顔をされないが。
無所属のカナデさんが利用している医者なら、僕たちも受け入れてくれるに違いない。
あとはフォンが魔族であるという問題だが。
この辺は実際に交渉してみないと、現段階では何とも言えない。
「カナデお姉ちゃんなら、いつもの酒場に居るはずだよ。案内するね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇貧困地区
ミズガルズが管理する野良冒険者たちの多くが拠点とする地区。
国から最低限の支援しか受けていないので、全てにおいて劣っている。
その代わりにくだらない国同士の争いから逃れられる。また治安も悪くない。
リーンもこの場所を拠点として活動している。
初心者ばかりが揃っているが、上位ランクの冒険者も偶に見かける。
他の所属パーティの穴埋めとして雇われる事があり。損な役回りになりやすい。
肥沃な土地柄で、穀倉地帯を抱えた西の大国。武と正義の国【レイルフォス】
北の氷の大地を支配する。魔法技術に優れた、知と魔術の国【オルレアン】
南東の鉱山地帯を牛耳る。工業技術に秀でた、金と鍛冶の国【ライアット】
それ以外にも数多の小国が関わっているが、目的は何処も似たようなもので。
冒険者たちの支援を名目に、ユグドラシルの利権を得ようと躍起になっている。
大厄災によって世界が衰退していく中で、唯一の希望である神樹。
ユグドラシルを最初に踏破すれば、その国は世界の全てを支配できる。
冒険者とは国の名を背負って、代表として命を賭けて戦う傀儡のようなものだ。
そうなるのが嫌で、僕みたいにどの国にも属さない冒険者は少なからず存在する。
金銭的な支援を断り、たとえ貧乏暮らしになったとしても。しがらみに囚われるよりマシだと。
野良と呼ばれる僕たちは、支援を受けられない代わりに、ミズガルズ内を比較的自由に行動できる。
【レイルフォス】と【オルレアン】は古くから領土争いや食料問題で揉めていた。
表向きは同盟関係にあっても、水面下では今も対立している。それはミズガルズでも同じ。
所属の国によって値段を変える悪質な店や、パーティ内でも出身地による差別が横行している。
これは【ライアット】でも変わらない。自国の者にしか装備を作らない鍛冶職人がいたりと。
結局、同じ国の関係者で固まるのが基本となり、僕たち野良が足りない穴を埋める役割となっている。
冒険者街や住宅街などを歩いていると、地区ごとに建築様式が大きく変わっているのが見れる。
あからさまに国境のような線が引かれていたりと。まぁ、自由を謳っておいて現実はこんなものだ。
野良である僕たちは、そんなしがらみを気にすることなく通りを抜けていく。
僕がよく利用している宿がある貧困地区は、国ではなくミズガルズが管理している。
名前からして治安が悪そうだけど。実際は全員が平等な扱いの冒険者街で一番安全な場所だ。
「……リーン、血が出ています」
隣を歩いていたフォンが、僕の手を取った。
大した怪我ではないけど。指の皮が捲れて血が流れている。
「本当だ。あの男を殴った時に何かにぶつかったんだね。気にするほどでもない――」
「駄目だよ! 怪我を甘くみたらいけないんだよ!」
ノノが慌てて腰袋から包帯を取り出す。
「……待っててね。ノノが治療してあげるから」
「ちびっ子じゃないんだし。擦れたくらいで大袈裟だよ」
「ううん。あれはノノのせいだもん……ごめんね……」
何度も指を撫でながら、ノノが丁寧に処置をしてくれる。
動作が妙に艶めかしい。抵抗がなければ僕もあの男のようになっていたかも。
「私の治療を強引に進めるのですから。リーンもしっかりと治療を受けるべきです」
「そうですそうです。あっ、ワタシも何かしないと……。えっと、口で消毒とか?」
「だ、大丈夫だって。それ以上は恥ずかしいから!」
女の子三人に囲まれて。これ以上は別の意味で大怪我をする。
ノノにお礼を伝えると、尻尾を大きく振りながら彼女は笑顔で答えた。
「リーンくんカッコよかったよ。ノノ、助けてもらえて……凄く嬉しかった」
「そうですね。見事な手際でした」
「ワタシも、そう思います!」
こんなに褒められるとは思わず。熱くなる頬を掻く。
「本当はもっと穏便に済ませるべきだったんだけど。多分、根に持たれただろうね」
あの男が何処の所属かは知らないが、結託して復讐してくる可能性もある。
なるべくフォンたちを巻き込まないようにしないと。治療の邪魔をされかねない。
「この辺りで優秀な治癒師に心当たりないかな?」
「ノノはそもそも怪我をする事がないから……カナデお姉ちゃんなら知ってるかも?」
「カナデさんか。確か【月の雫】は無所属だったしちょうどいいかな」
治療魔法に精通しているのは【オルレアン】だが。
当然、【レイルフォス】は歓迎されない。野良もあまりいい顔をされないが。
無所属のカナデさんが利用している医者なら、僕たちも受け入れてくれるに違いない。
あとはフォンが魔族であるという問題だが。
この辺は実際に交渉してみないと、現段階では何とも言えない。
「カナデお姉ちゃんなら、いつもの酒場に居るはずだよ。案内するね」
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◇貧困地区
ミズガルズが管理する野良冒険者たちの多くが拠点とする地区。
国から最低限の支援しか受けていないので、全てにおいて劣っている。
その代わりにくだらない国同士の争いから逃れられる。また治安も悪くない。
リーンもこの場所を拠点として活動している。
初心者ばかりが揃っているが、上位ランクの冒険者も偶に見かける。
他の所属パーティの穴埋めとして雇われる事があり。損な役回りになりやすい。
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