ハローワークで見つけた冒険者業が天職だった件〜ハズレ職業である武闘家の俺、最上位職のマジックブレイカーに転職したので駆け上がっていきます〜

甲賀流

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17話 我が社の魅力はたくさんあります

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 初のダンジョン攻略から2週間――

 あれからはソロでの仕事はなく、基本的に紗夜さん同行でのE級ダンジョン攻略がメインの仕事となっている。

 ちなみあのダンジョンへと繋がる異空間は、レベルラビットに触れたもの以外は可視できず、突如ランダムな場所に現れるらしい。
 去年出現した総ダンジョン数は2万件にも上るという。
 そんなダンジョンの場所を発見したり、統計をとったりするのがあの本部にいたスーツをきた社員達の仕事のようだ。

 そして現状なぜダンジョンが現れるのか、レベルラビットとは何なのかなど謎が多く、まだ解明には至っていない。
 その謎を解き明かしていくのも冒険者の役目の一つなのだ。

 そんな俺こと戸波 海成となみ かいせいは今、自宅で朝の情報番組を見ながら朝食のアーモンドトーストとコーヒーを嗜んでいる。
 もちろんコーヒーには砂糖とミルクも込みだ。
 そして時刻は午前10時少し過ぎたところ。

 今日は3月23日、季節は……まぁまだ寒いけどもう春といってもいいくらいだろう。
 朝方は少し冷えるが、この時間になるとだいぶ暖かくなってくる。
 そんな平日の朝にこんなゆったりできるのは、我が社レベルアップコーポレーションの冒険者業がフレックスタイム制を導入しているからだ。
 つまり、労働時間を自ら決めることができる。
 これも働き方改革なのだろうか。

 もちろん今日もダンジョン探索。
 今日は紗夜さんと事務所で11時に待ち合わせをしている。
 待ち合わせといえばデートって感じがして一見テンションが上がりそうだが、そうではない。
 彼女はダンジョン探索中も真面目に指導して下さっている。
 そんな中、当の後輩がデートだなんてやましい気持ちを抱いたとなればきっと彼女は俺のことを軽蔑し、蔑み、もう人として見てくれないかもしれない。
 だから俺も真面目に取り組んでいる。
 ……紗夜さんを目の保養くらいにはしているが。

 少しゆっくりしていると、もう待ち合わせまで残り20分と時間が迫ってくる。

「そろそろ出ようかな 」

 今の職業『冒険者』。
 勤務時間も魅力的だが、個人的には自宅から自転車で10分程度という立地もいい。

 自転車なので、俺は大通りを避けつつ会社へ向かう。
 音楽を聴きながらと朝から気分爽快だ。
 ちょうど2曲ほど聴き終わった頃、目的地が見えてきた。

 かれこれ出勤して2週間、慣れた様子で駐輪場へ向かい、自転車を止める。
 それから階段を昇った先に見える右側のドアへ身体を向け、いつも通り押し開ける。
 そう、ドアに書いてある通り、『押す』のだ。
 一回引いてみたことはあるが、ドアの構造上びくともしない。

 そしてドアを開けていつも初めに目に入るのは、すりガラス状のパーテーション。
 最近思うが、この仕切り本当にいる?

 その先から聞こえる話し声。
 あ、もう紗夜さん先に来てるみたいだな。

「おはようございます! 」

 俺はここでは1番下っ端。
 いつも入る時は元気よく朝の挨拶をするのだ。
 まぁ先輩だから、上司だからといってしなくていいわけではないが。

「あ、おざーっす~! 海成さん! 今日も朝から気持ちいい挨拶っすね! 」

「いや凛太郎、お前の爽やかさには負けるって! 」

「え? そーっすか? マジでそんな謙遜はいらないですよ! まーこっちきて紅茶でも飲みましょー! 」

 そう言って来客用ソファに座り俺に手招きしている金髪ミディアムヘアの爽やかイケメン、永野 凛太郎ながの りんたろうは半年前にこのレベルアップコーポレーション第2支部へ異動してきたらしい。
 元々は本部の冒険者……ではなく、スーツを着て冒険者のスカウトをしていたようだ。
 彼が冒険者のスカウトってなんかキャバクラの客引きに見えて仕方がないが。

 そんな凛太郎はスカウトした冒険者候補の試験中、誤ってレベルラビットに触れてしまったらしく自分が冒険者になってしまったという。
 具体的に言うと、適性試験でなかなかレベルラビットを捕まえられない冒険者に対して、

「いや……そうじゃなくて、もっとこう……んーもう、こーやって捕まえんだよっ!! ……あ、触っちゃった 」

 ってな具合らしい。

 んー頭で考えるのが苦手、行動で示せみたいな彼にとってらしいといえばそうなのだが。
 なんともトンチンカンなミスである。

「凛太郎! 海成くんは今日11時から私とダンジョンに行くからそんな暇ないのっ! 」

 彼からのお茶の誘いをデスクで仕事をしている紗夜さんがすかさず断りを入れた。

「えーちょっとくらいいいじゃないっすかぁ~。つれないな~ 」

 そう言って凛太郎はお茶を啜っている。

 初めは彼にタメ口ってのが慣れなかったが、最近ようやく違和感も無くなってきた。
 凛太郎は24歳、会社にももう6年は在籍しているという中堅クラス。
 しかし彼の思想には歳上絶対主義みたいなものがあるらしく、こんな冒険者なりたての俺に対しても敬語チックなのだ。

「ところで紗夜さん、今日もE級ダンジョンですか? 」

「ええ、多分そうじゃないかな? 久後さん、今日はどこのダンジョン行けばいいですか? 」

「え? なんだって? 」

 久後さんは社長用デスクに座っており、何やらスマホを横画面で操作している。
 ありゃ多分スマホゲームだ。
 最近オープンワールド系RPGにハマってるとか言ってたな。
 この冒険者業自体RPG要素満載なんだから、もうちょい気合い入れろよって思うけど。

 するといつものようにプンプンと怒りを表している紗夜さんを見て、久後さんは思い直したのかスマホを一旦デスクに置き、

「あ、えーっと今日の予定だったな。 海成、そろそろ1人でE級ダンジョン行けんだろ? てか1回攻略してんだから行ってこい! 」

 お? 正式にデビューっぽい?
 
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