無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

文字の大きさ
46 / 129
2章 魔術対抗試験編

暴走

しおりを挟む
 嫌な予感とは言うまでもない。
 俺は今神龍アウロラの魔力を宿している。
 そのおかげかこの地下演習場全体の魔力を感じることができるようだ。
 ヴォルガンが命を落とした瞬間、今目の前にある魔力は消失したが、それと同時に別の場所で魔力量が増大した。

「……もしかして、ケビンか!? 」
 それはケビンとライラが戦闘中の場所だ。
 魔力を感じるが故にライラがまだ戦っていることが分かる。
 しかし魔力量が増大したケビンにライラが勝てるのか? 

「……ライラの魔力が消えかかっている!?  」
 急いで向かっているが、間に合うのか。
 いや、間に合わせる! 

「ようやく着いた…… 」
「ですが、少し遅かったようですね。 ライラという女性、魔道士として確かに最強格でしたが、所詮は人間。 ヴォルガンさんの魔力を引き継いだボクからしたら赤子を捻るも同然  」

 ライラの腹部は貫通しており、うつ伏せていた。
 そして辺り一面が血で染まっている。

「……ライラ!!! 」
 急いで駆け寄ったが、まだなんとか息もあるようだ。
 よかった、これなら治せるかもしれない。
治癒ヒール 」
 よし、腹部に空いた穴も塞がったぞ。

「……!? しかしながら、アナタだけは人間から逸脱しているようですね。 いくら治癒だとしても空いた穴まで塞がるなど聞いたことがありません 」

「人間を辞めたやつに言われたくないね 」
 目の前のケビンは以前の姿とは違い、彼の全身に黒い紋様のような、呪印のようなものが拡がっている。
 さらには身体も一回り……いや、二回りも大きくなった。
 そして纏っている魔力量も人間のそれとは大きくかけ離れているのだ。

「ボクはヴォルガンさんの意志を引き継いだ。 そのために人間を捨て、この力を手に入れたんです。 今のボクは神ですら太刀打ちできないですよ   」

 彼の魔力量を感知すると、どうもその神以上の力を持ったというのはあながち嘘でもなさそうなのだ。
 彼の体内から溢れている魔力はあまりにも多すぎるのか具現化し、ケビンの身体を常に纏っている状態にある。

 だが、不思議と怖さは感じない。
 第2試験で一戦交えたセリアの方がよほど怖かった。
 きっと今はアウロラの魔力を借りているからだろう。

 (春陽、あまり長いことは力を貸してやれんぞ。 なるべく早く片付けるのだ! )
 そりゃこんな強い力をずっと貸してもらえるわけがない。
 ある程度制限みたいなものがあるのだろう。

「なら、早く片付けるか  」
「……ん? 誰を片付けると言いましたか? 今のボクは神よりも強いと言ったでしょう 」

 どうやら俺の言葉で少し彼の癇に障ったようだ。
 ケビンは落ち着いて深呼吸をししている。
 そして一気に息を吸い込むと同時に炎の魔力が溢れ出て、身体中を纏い始めた。
「ボクの力を知るがいい! ハアァァァァァ!! 」
 力でねじ伏せようが如く、真っ直ぐに突っ込んできた。
 が、それは彼が小走りで近づいているのではないかと思わせるほどの速度であり、避けるのは容易かった。

「な……! 避けるとは、これが見えてい……グハッ! 」

 ドンッ───
 彼の攻撃を避けるついでに一撃加えてやったのだが、ここまで強く後方へ吹き飛ぶとは思いもしなかった。
 ケビンは壁に背中から突っ込み、埋めこまれている状態となっている。

「う……痛い、痛い痛い痛い……イダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイイダイィィィィィ!!!! 」
 ケビン、我を忘れている?
 彼はもう一回り身体も大きくなり、黒い紋様もさらに濃く広い範囲に広がった。
 そして唯一人間らしかった顔や肌も獣のような見た目に変わったことで完全に人間離れした姿となった。

「……なんだ、あれ…… 」
 (あれはもうケビンではない。 普通の人間が魔族の魔力を使うからそうなるのだ! 春陽、あれはもう元には戻らん、楽にさせてやれ )
「……でもっ! 」
 (あれが街に出たら被害も出る、それにここでほっておけばセリア・ウィンドウィスパー、ミア・ローズもただではすまんぞ )
 目の前のはどう見ても化け物だ。
 いくらそう言っても元は人間、俺だって人間だからどうしても殺すのは躊躇いがでる。
 しかし今ここにいる仲間を、この街を守れるのはきっと俺だけだ。
 ここアルカナに訪れた俺の使命なのかもしれない。
「……よし、覚悟を決めたよアウロラ 」
 (ああ、頼んだぞ )

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!」

 我を忘れているからか、先程のような強さはもう感じられない。
 動きも遅いし、隙だらけだ。
 だが、おそらく一撃一撃は前より格段に強くなっている。

「このスピードならいけるぞ!  」

 この魔法はアウロラの記憶から情報を得たもので、彼を仕留めた魔道士が使った魔法だ。
 こんな魔法を使ってもアウロラは良い気しないだろうが、彼の記憶の中で1番強い魔法であり、印象に残っているためダントツで情報量が多かった。
 そのおかげで俺の頭にこべりついてしまったのだ。
 だから嫌味とかではないよ、許してねアウロラ。

「古代魔法 【⠀圧縮プレッシャー】」
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

処理中です...