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第7章 道化師は攻略する
第146話 気持ちの裏側
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「酷い......」
雪姫はその荒れ果てた土地を見て思わず呟いた。そして同時に、それ以上は言葉にするのも辛いのか手で口を覆うようにして口を塞いだ。
現在いるエキドナ、雪姫、朱里の三人の目の前に広がる光景はススで汚れた木や衣服、それから完全に燃えて灰となった民家や人の姿。それが少なくとも地平線まで続いている。
来た時に見たあの賑わっていた光景はまるでハリボテであったかのように落差が酷い。それこそ見なかった方がいいと思うほどに。
「これがカムイさんの国に起きたことなんだね......人一人を攫うためにこんなことまでなんて。これをした相手があの神の使徒って人達なの?
「まあ、そうでしょうね。彼らはこの世界の生物のことなんてどうとも思っていないんでしょうね。だから、こんな惨いことが出来る。それにここが全てじゃないわ」
「それじゃあ、リリスちゃんも、ベルちゃんもエキドナさんも皆あの神の使徒に何かされたということ?」
「そうね。その被害をもたらした人は違えど、共通して言えること全員が神の使徒であるということね。そう考えると正しく宿敵と呼べる相手でしょうね」
「それじゃあ、仁も? 少なくとも私達がしてしまったあの日までは何もなかったよ?」
「何もないように動いていたんじゃないかしら? ほら、あなた達も見たでしょ? 神の使徒が空間を伝って移動していることに。なら、私達が知らないところで企みをすることも不自然ではないはずよ。ただ、旦那様が神を恨む本当のことは知らないわ......誰もね」
「エキドナ達にも言えないことが海堂君にはまだあるって言うの?」
「それは当然あるでしょうね。仲間だからといって心を開いていても言えないことの一つや二つはあるでしょう。まあ、ただ聞かれてないから言わないというのもあるでしょうけど」
エキドナは目の前の焦土を見ながら言葉を告げていく。そしてふと合掌し始めた。
その行動の意味するところがわからない二人ではない。なので、エキドナの行動に合わせるように亡くなった人達に向けて弔いの念を送った。
するとその時、後ろから子供達の賑わう声が聞こえる。こんな変わり果てた土地があろうとも変わらない笑顔がある。
その子供達の声が自国にもあるような気がして、そんな気持ちを抱きながら振り返るとそこにはベルとロキがいた。
ベルはロキの傍に歩きながら、同じように焦土と化した大地を見ていて、一方ロキはというとやんちゃな子供達を背中の上に乗せていた。
その子供達は焦土を目の前にしてもやんややんやと楽しそうに騒いで、ロキの毛を引っ張ったり、背中を叩いたりしている。
ロキはそんな子供達に対して、怒るようなこともせずただただ好きなようにさせている。その程度なら露ほども気にならないのか涼し気な顔をしている。
すると、エキドナ達の存在に気付いたベルがロキを引き連れながら向かって来る。
「エキドナ様達もこちらに来ていたです? ちなみに、私はロキ様が向かっていった方向に歩いて行ったらここに辿り着いたという感じです」
「私達は私が情報をもとにここまで来たという感じね。まあ、想像の斜め上をいく悲惨さではあったけど。ところで、その子供達は?」
「向かっている最中に遊びに来たスラムの子達です。何人か私を狙おうとするやからがいたですが、ロキ様がいたおかげで物騒なことにならなくて良かったです」
「ふふっ、ベルちゃんは可愛いから仕方ないわよ。それに狙って行動したとしても、相手が悪いとしか言いようがないけれど。それで、あなた達は旦那様とリリスちゃんには会ってないの?」
「私達は会ってないです。ただ、途中でカムイ様がどこかへと歩いて行かれる様子は見かけたです。向かっている方角は違うですけど、確かにこの土地に向かっているような方向です」
「そう......なら、ここは朱里に任せようかしら」
「ん? 自分?......え?」
朱里は思わずエキドナは二度見した。それはエキドナの言葉があまりにも予想外であったからだ。だからこそ、思わず声が漏れる。「どうして自分なのか?」と。
すると、エキドナはにこやかな笑みを浮かべて朱里へと告げた。その顔に対して、朱里は嫌な予感が拭えない。
「だって、朱里ちゃんって恐らくカムイちゃんのこと好きでしょ?」
「~~~~~~~~!」
朱里はその言葉に思わず顔を赤くさせる。それはもはや図星であると言っているような顔であった。また、その質問が来ること自体も朱里自身気づいていた。
とはいえ、ここでなんと答えればいいのだろうか。心細かった時やどうすればいいか迷っていた時に助けてもらったことを自分は恩義に感じているだけ......なはずなのに、やたらと顔が熱く感じる。
まあ、その時に感じた頼もしさや温かさに確かに憧れはした。だが、それだけのはずだ。最近、やたら寝ていて夢に出てくるようになったけど、それだけのはずだ......はず。
朱里はいまいち自分の答えを出しきれずにいた。自分の中でそうではないと言う勢力は過半数を超えているのだが、認めて言うような勢力がやたらと強固なのだ。
だから、言葉が思い浮かばない。ここで認めてしまえば恥ずかしさで大声で叫ぶ自信すらある。まあ、実際に動くかどうかは別であるが。
すると、そんな朱里にエキドナはがぜん笑顔で話しかける。
「ふふっ、しっかりと自分の気持ちを持っているようで何よりだわ。朱里ちゃんは何かと自分で背負ったまま一人で解決しようとするから、勇気を持てたのはカムイちゃんのおかげかしら?」
「ちが!......くはないです......はい......」
朱里の言葉はだんだんと尻すぼみになっていく。その行動はやはり認めているようなものだ。少なくとも、他の人達からすれば確実にわかるぐらいに。
だからこそ、そのことを初めて知った雪姫は驚きで思わず口を覆った。そして、すぐに手をパチパチと叩きながら、「おめでとう」と言葉を呟いていく。正直、雪姫自身もどうして「おめでとう」と送ったのかわかっていない。
「朱里ちゃん、認めるように諭すわけじゃないけど、憧れや尊敬って特に異性に対しては案外移ろいやすいものよ。もちろん、『案外』だから全てがそうなるわけじゃないけど。でも、その気持ちはとても大切なことよ。頼れる人がいるというのはとても心強いこと。それはしっかりと覚えておきなさい」
「私は......」
朱里はその言葉に迷う。自分はその気持ちを本当はどう捉えているのだろうかと。憧れという気持ちは確かにある。しかし、それは案外その言葉で片付けようとしているのではないか?
どうしてこの言葉に詰まっているのかはわからない。いや、わかろうとしていないだけかもしれない。だからこそ、迷う。自分の気持ちはどうだから、どうしたいのか。
カムイの精神は未だ正常な状態ではない。むしろ、この国に来てさらに深く傷ついているかもしれない。そんなカムイを支えたい。力になってあげたい。でも、こんな迷っている状態で言葉をかけたとして、それは迷惑にならないのだろうか。
そんな気持ちが朱里の中でぐるぐると何回も何回もめぐってその度に迷いのふくらみは大きくなっていく。
焦土から漂ってくる焦げた臭いが鼻孔をくすぐる。そしてふと見た焦土から思わず襲われて逃げ惑う人々を想像させて、それが余計に何もかかわりのない自分がかかわっていいのかと思ってしまう。
するとそんな時、雪姫が朱里へと近づいていく。そして、背中に手を触れさせると魔法を発動させた。
「――――――心静の子守歌」
「!」
その瞬間、朱里の背中からじんわりと温かさが伝わってくる。背中からゆっくりと肩や腰に伝わっていき、手先まで温かくなっていく。まるで小さい頃に母親に頭を撫でてもらったような安心感であった。
それ故か、頭の中で巡り過ぎてぐちゃぐちゃになった気持ちの糸がゆっくりとほどけていくように、頭の中がスッキリしていく。
すると、心の中にある一つの小さな気持ちを見つけた。その気持ちはとても暖かく、優しくなるような感じであった。
「朱里ちゃん、落ち着いた?」
「雪姫......その魔法はどこで?」
「私がずっと冒険者ギルドの診療所で働いていたのは覚えてる? まあ、本当は仁のためなんだけど、そのためにずっと練習して使っていた魔法の一つだよ。これで朱里ちゃんが楽になればと思って」
「ありがとう、雪姫。おかげで大事な気持ちが見えて来たような気がするよ。でも、完全にわかったわけじゃないけどね。それでも、先ほどよりも見えたものは確かにあるよ」
朱里は雪姫の方へと体を向き直すと触れていた手を両手で握って告げた。その手は温かく、ほっこりするような気持になる感じであった。
風が少し強く吹く。その風は二人の髪をたなびかせ、漂っていた嫌なにおいを消し飛ばしていく。少し遠くではロキが子供達を追いかけながら走っている。
そんな様子を二人は顔を向けて眺め、顔を合わせると互いに笑みを浮かべる。優しさが二人を包むように空間が柔らかくなっていくようで居心地がいい。
すると、朱里はエキドナの方を向いて自分のわかった気持ちを告げていく。
「エキドナ、私は結局のところまだ気持ちははハッキリとしなかったよ。でも、憧れや尊敬の裏側に隠れていた好きという気持ちはあった。だからかなのかはわからないけど、私はカムイさんを、恩人を助けたい。私に何ができるかはわからないけど、役に立ちたいという気持ちは確かにあるんだ」
「ふふっ、いいじゃないそれで。気持ちに答えはないの。その時その時に出した気持ちが答えになり、言葉になる。ただ、それは心を落ち着かせて、しっかりと自分と向き合った時にしか見えてこないのよ。それが出来た時点で朱里ちゃんは偉大なことをしたのよ」
「海堂君はそれが出来ているの?」
「旦那様はまだ複雑な自分と向き合っている途中よ。今はまだそっとしておいてあげて。それじゃあ、朱里ちゃん、あなたの向かうべきところは?」
エキドナは答えがわかっていたが、それでも朱里からあえて言葉を求めるように聞いた。その質問に朱里は強い瞳で答える。
「恩人のところです」
雪姫はその荒れ果てた土地を見て思わず呟いた。そして同時に、それ以上は言葉にするのも辛いのか手で口を覆うようにして口を塞いだ。
現在いるエキドナ、雪姫、朱里の三人の目の前に広がる光景はススで汚れた木や衣服、それから完全に燃えて灰となった民家や人の姿。それが少なくとも地平線まで続いている。
来た時に見たあの賑わっていた光景はまるでハリボテであったかのように落差が酷い。それこそ見なかった方がいいと思うほどに。
「これがカムイさんの国に起きたことなんだね......人一人を攫うためにこんなことまでなんて。これをした相手があの神の使徒って人達なの?
「まあ、そうでしょうね。彼らはこの世界の生物のことなんてどうとも思っていないんでしょうね。だから、こんな惨いことが出来る。それにここが全てじゃないわ」
「それじゃあ、リリスちゃんも、ベルちゃんもエキドナさんも皆あの神の使徒に何かされたということ?」
「そうね。その被害をもたらした人は違えど、共通して言えること全員が神の使徒であるということね。そう考えると正しく宿敵と呼べる相手でしょうね」
「それじゃあ、仁も? 少なくとも私達がしてしまったあの日までは何もなかったよ?」
「何もないように動いていたんじゃないかしら? ほら、あなた達も見たでしょ? 神の使徒が空間を伝って移動していることに。なら、私達が知らないところで企みをすることも不自然ではないはずよ。ただ、旦那様が神を恨む本当のことは知らないわ......誰もね」
「エキドナ達にも言えないことが海堂君にはまだあるって言うの?」
「それは当然あるでしょうね。仲間だからといって心を開いていても言えないことの一つや二つはあるでしょう。まあ、ただ聞かれてないから言わないというのもあるでしょうけど」
エキドナは目の前の焦土を見ながら言葉を告げていく。そしてふと合掌し始めた。
その行動の意味するところがわからない二人ではない。なので、エキドナの行動に合わせるように亡くなった人達に向けて弔いの念を送った。
するとその時、後ろから子供達の賑わう声が聞こえる。こんな変わり果てた土地があろうとも変わらない笑顔がある。
その子供達の声が自国にもあるような気がして、そんな気持ちを抱きながら振り返るとそこにはベルとロキがいた。
ベルはロキの傍に歩きながら、同じように焦土と化した大地を見ていて、一方ロキはというとやんちゃな子供達を背中の上に乗せていた。
その子供達は焦土を目の前にしてもやんややんやと楽しそうに騒いで、ロキの毛を引っ張ったり、背中を叩いたりしている。
ロキはそんな子供達に対して、怒るようなこともせずただただ好きなようにさせている。その程度なら露ほども気にならないのか涼し気な顔をしている。
すると、エキドナ達の存在に気付いたベルがロキを引き連れながら向かって来る。
「エキドナ様達もこちらに来ていたです? ちなみに、私はロキ様が向かっていった方向に歩いて行ったらここに辿り着いたという感じです」
「私達は私が情報をもとにここまで来たという感じね。まあ、想像の斜め上をいく悲惨さではあったけど。ところで、その子供達は?」
「向かっている最中に遊びに来たスラムの子達です。何人か私を狙おうとするやからがいたですが、ロキ様がいたおかげで物騒なことにならなくて良かったです」
「ふふっ、ベルちゃんは可愛いから仕方ないわよ。それに狙って行動したとしても、相手が悪いとしか言いようがないけれど。それで、あなた達は旦那様とリリスちゃんには会ってないの?」
「私達は会ってないです。ただ、途中でカムイ様がどこかへと歩いて行かれる様子は見かけたです。向かっている方角は違うですけど、確かにこの土地に向かっているような方向です」
「そう......なら、ここは朱里に任せようかしら」
「ん? 自分?......え?」
朱里は思わずエキドナは二度見した。それはエキドナの言葉があまりにも予想外であったからだ。だからこそ、思わず声が漏れる。「どうして自分なのか?」と。
すると、エキドナはにこやかな笑みを浮かべて朱里へと告げた。その顔に対して、朱里は嫌な予感が拭えない。
「だって、朱里ちゃんって恐らくカムイちゃんのこと好きでしょ?」
「~~~~~~~~!」
朱里はその言葉に思わず顔を赤くさせる。それはもはや図星であると言っているような顔であった。また、その質問が来ること自体も朱里自身気づいていた。
とはいえ、ここでなんと答えればいいのだろうか。心細かった時やどうすればいいか迷っていた時に助けてもらったことを自分は恩義に感じているだけ......なはずなのに、やたらと顔が熱く感じる。
まあ、その時に感じた頼もしさや温かさに確かに憧れはした。だが、それだけのはずだ。最近、やたら寝ていて夢に出てくるようになったけど、それだけのはずだ......はず。
朱里はいまいち自分の答えを出しきれずにいた。自分の中でそうではないと言う勢力は過半数を超えているのだが、認めて言うような勢力がやたらと強固なのだ。
だから、言葉が思い浮かばない。ここで認めてしまえば恥ずかしさで大声で叫ぶ自信すらある。まあ、実際に動くかどうかは別であるが。
すると、そんな朱里にエキドナはがぜん笑顔で話しかける。
「ふふっ、しっかりと自分の気持ちを持っているようで何よりだわ。朱里ちゃんは何かと自分で背負ったまま一人で解決しようとするから、勇気を持てたのはカムイちゃんのおかげかしら?」
「ちが!......くはないです......はい......」
朱里の言葉はだんだんと尻すぼみになっていく。その行動はやはり認めているようなものだ。少なくとも、他の人達からすれば確実にわかるぐらいに。
だからこそ、そのことを初めて知った雪姫は驚きで思わず口を覆った。そして、すぐに手をパチパチと叩きながら、「おめでとう」と言葉を呟いていく。正直、雪姫自身もどうして「おめでとう」と送ったのかわかっていない。
「朱里ちゃん、認めるように諭すわけじゃないけど、憧れや尊敬って特に異性に対しては案外移ろいやすいものよ。もちろん、『案外』だから全てがそうなるわけじゃないけど。でも、その気持ちはとても大切なことよ。頼れる人がいるというのはとても心強いこと。それはしっかりと覚えておきなさい」
「私は......」
朱里はその言葉に迷う。自分はその気持ちを本当はどう捉えているのだろうかと。憧れという気持ちは確かにある。しかし、それは案外その言葉で片付けようとしているのではないか?
どうしてこの言葉に詰まっているのかはわからない。いや、わかろうとしていないだけかもしれない。だからこそ、迷う。自分の気持ちはどうだから、どうしたいのか。
カムイの精神は未だ正常な状態ではない。むしろ、この国に来てさらに深く傷ついているかもしれない。そんなカムイを支えたい。力になってあげたい。でも、こんな迷っている状態で言葉をかけたとして、それは迷惑にならないのだろうか。
そんな気持ちが朱里の中でぐるぐると何回も何回もめぐってその度に迷いのふくらみは大きくなっていく。
焦土から漂ってくる焦げた臭いが鼻孔をくすぐる。そしてふと見た焦土から思わず襲われて逃げ惑う人々を想像させて、それが余計に何もかかわりのない自分がかかわっていいのかと思ってしまう。
するとそんな時、雪姫が朱里へと近づいていく。そして、背中に手を触れさせると魔法を発動させた。
「――――――心静の子守歌」
「!」
その瞬間、朱里の背中からじんわりと温かさが伝わってくる。背中からゆっくりと肩や腰に伝わっていき、手先まで温かくなっていく。まるで小さい頃に母親に頭を撫でてもらったような安心感であった。
それ故か、頭の中で巡り過ぎてぐちゃぐちゃになった気持ちの糸がゆっくりとほどけていくように、頭の中がスッキリしていく。
すると、心の中にある一つの小さな気持ちを見つけた。その気持ちはとても暖かく、優しくなるような感じであった。
「朱里ちゃん、落ち着いた?」
「雪姫......その魔法はどこで?」
「私がずっと冒険者ギルドの診療所で働いていたのは覚えてる? まあ、本当は仁のためなんだけど、そのためにずっと練習して使っていた魔法の一つだよ。これで朱里ちゃんが楽になればと思って」
「ありがとう、雪姫。おかげで大事な気持ちが見えて来たような気がするよ。でも、完全にわかったわけじゃないけどね。それでも、先ほどよりも見えたものは確かにあるよ」
朱里は雪姫の方へと体を向き直すと触れていた手を両手で握って告げた。その手は温かく、ほっこりするような気持になる感じであった。
風が少し強く吹く。その風は二人の髪をたなびかせ、漂っていた嫌なにおいを消し飛ばしていく。少し遠くではロキが子供達を追いかけながら走っている。
そんな様子を二人は顔を向けて眺め、顔を合わせると互いに笑みを浮かべる。優しさが二人を包むように空間が柔らかくなっていくようで居心地がいい。
すると、朱里はエキドナの方を向いて自分のわかった気持ちを告げていく。
「エキドナ、私は結局のところまだ気持ちははハッキリとしなかったよ。でも、憧れや尊敬の裏側に隠れていた好きという気持ちはあった。だからかなのかはわからないけど、私はカムイさんを、恩人を助けたい。私に何ができるかはわからないけど、役に立ちたいという気持ちは確かにあるんだ」
「ふふっ、いいじゃないそれで。気持ちに答えはないの。その時その時に出した気持ちが答えになり、言葉になる。ただ、それは心を落ち着かせて、しっかりと自分と向き合った時にしか見えてこないのよ。それが出来た時点で朱里ちゃんは偉大なことをしたのよ」
「海堂君はそれが出来ているの?」
「旦那様はまだ複雑な自分と向き合っている途中よ。今はまだそっとしておいてあげて。それじゃあ、朱里ちゃん、あなたの向かうべきところは?」
エキドナは答えがわかっていたが、それでも朱里からあえて言葉を求めるように聞いた。その質問に朱里は強い瞳で答える。
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連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
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