サラリーマン、少女になる。

あさき のぞみ

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ショッピングモールへの潜入

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まいが俺のスマホを持って部屋を出てから数分後、彼女は俺の財布とキャッシュカードを手にリビングに戻ってきた。
「はい、ユミ。会社への連絡はLINEで済ませたわ。『体調不良で数日休む』って。財布もカードもちゃんとあったわよ。でも、この女の子の姿で大人のカードを使うのは目立つから、当面は私の財布のお金を使うわね」
手際よく、俺の社会的な存在を一時停止させてくれたことに安堵する。これで時間が稼げる。
「じゃあ、ユミ。必要な物、買いに行こ!」
まいは、先ほどの真剣な顔から一転、いつもの屈託のない笑顔を見せた。この笑顔が、この非現実的な状況を、まるでちょっとした遠出のイベントのように感じさせる。内心、早く行きたがっている彼女の天然ぶりに、また少し苛立ちを覚えそうになるが、すぐに「今は頼るしかない」と理性を効かせた。
俺は、新しい名前**「ユミ」**として、まいさんに続いて玄関へ向かう。
外に出ると、まいの車に乗り込む。チャイルドシートはなかったが、俺の小さな体は助手席に埋もれるようにして座れた。
「それにしても、この**『ユミ』**って名前、すごく可愛くて、気に入っちゃったかも!」
運転中も上機嫌なまいを見て、俺は改めて、彼女の状況適応能力の高さに舌を巻いた。
車はすぐに走り出し、目指すは近くの大型ショッピングモールだ。平日の昼間とはいえ、人目が多い場所へ、この「ユミ」の姿で乗り込むのは、かなりのリスクがある。
「まい、目立つぞ。私、こんな格好だし、子ども一人でうろついてるって思われたら……」
「大丈夫よ。私がお母さんのフリをするから。ほら、ちゃんと手をつないで。いい? ユミちゃん」
そう言って、まいはいたずらっぽく笑った。俺は内心、「誰がお前の子どもだ」と毒づきながらも、そのアイデアを受け入れるしかない。
車が広い駐車場に滑り込み、停車する。
「さあ、着いたわよ、ユミちゃん! 今日からのお買い物大作戦、開始!」
まいさんは車のドアを開け、俺に手を差し伸べた。ショッピングモールの巨大な入口を見上げ、俺は固唾を飲んだ。ここから、幼女「ユミ」としての初めての社会生活が始まるのだ。
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