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猶予期間
第4話 過去問
しおりを挟む家に帰り、パソコンを開いた。
『私立聖ヶ丘女子学園』
検索バーに打ち込むと、すぐに学校の公式サイトが表示される。
創立は1986年。もうすぐ40年になる、都内では名門と呼ばれる私立女子校だ。偏差値は中堅からやや上。お嬢様学校というほどではないが、それなりに裕福な家庭の子女が通っている。
卒業生の欄を見ていくと、アナウンサー、女優、実業家……そこそこ有名人も輩出している。
そして、ある名前に目が止まった。
『相原サナ』
人気アイドルグループ「Crystal☆Girls」の元センター。三年前に卒業して、今は女優として活動している。テレビでもよく見る顔だ。
「この学校だったのか……」
制服姿で笑顔を浮かべる相原サナの写真。確かに、聖ヶ丘の制服を着ている。
僕は他にも学校行事の写真や、部活動の情報を見ていった。文化祭は『聖ヶ丘祭』と呼ばれ、毎年一般公開されている。体育祭も盛大らしい。
ダンス部が全国大会に出場、吹奏楽部も金賞受賞、演劇部も――
その時、スマホが震えた。
近藤からのメールだった。
件名:【重要】
本文:
『このことは当然ながら社外秘だからな。他言した時点でこの仕事は無くなるからな。』
たった二行。
でも、その重みは十分に伝わってきた。
僕は周りを見回した。一人暮らしのワンルーム。誰もいない。当たり前だ。でも、なぜか誰かに見られているような気がした。
友人にも言えない。家族にも言えない。同僚にも言えない。
この秘密を抱えたまま、四ヶ月間を過ごす。
もし、誰かにバレたら? もし、生徒たちに気づかれたら?
パソコンの画面には、笑顔の女子高生たちの写真が映っている。
彼女たちを、騙すことになる。
「これは……取材なのか? それとも……」
僕は頭を抱えた。
画面の中の女子高生たちは、何も知らずに笑っている。
もうすぐ、僕はその中に紛れ込む。
『斎藤みゆき』という男が、女子高生になる。
スマホを握りしめたまま、僕は天井を見上げた。
返事の期限は、一週間後。
長いようで、短い時間だ。
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