「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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学校

第21話 到着

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アトリエに到着したのは、午後一時五十五分だった。

深呼吸をする。

メイクは完璧。

ウィッグも、自然に装着できた。

服装も、問題ない。

タッキングも、うまくいっている。

「大丈夫……」

自分に言い聞かせて、ドアを開けた。

「失礼しまーす」

受付のスタッフが、笑顔で迎えてくれる。

「あ、みゆきさん。お待ちしておりました。奥の部屋へどうぞ」

案内された廊下を歩く。

ドアの前で、また深呼吸。

ノックする。

「どうぞ」

美山理事長の声。

ドアを開けると――

「あ、みゆきちゃん! また会えたね」

そこには、花奈がいた。

「か、香山さん……」

驚きを隠せなかった。

なんで、花奈がここに?

「びっくりした? 私も今日、お手伝いで呼ばれたの」

花奈は、にこやかに笑っている。

美山理事長も、隣に座っていた。

「斎藤さん、いらっしゃい。今日は制服の最終フィッティングと、写真撮影ですね」

「は、はい……」

「香山さんには、着付けと写真撮影を手伝ってもらいます」

「よろしくね、みゆきちゃん」

花奈が、ウインクした。

美山理事長は、書類を取り出した。

「それでは、改めて説明を。香山さんにも、みゆきさんのことをお話ししてあります」

「え……?」

「みゆきさんは、私の姪っ子なんです」

美山理事長が、静かに言った。

「イギリスに住んでいたのですが、この度、日本に戻ってきました。帰国子女として、聖ヶ丘女子学園に編入する予定です」

姪っ子。

帰国子女。

そういう設定なのか。

「そうなんだ! だから、ちょっと雰囲気が違うのね」

花奈が、納得したように頷いた。

「英語、ペラペラなの?」

「あ、まあ……それなりに」

咄嗟に答える。

幸い、俺は英語はそこそこできる。

「すごーい! 私も海外営業やってたから、英語話せる人って羨ましいな」

花奈は、本当に嬉しそうだった。

その笑顔を見て――

私は、ふと気づいた。

『姪っ子だから、うまくいけば出世コース』

花奈は、そう思っているのかもしれない。

美山理事長の姪っ子。

つまり、コネ入社のエリート候補。

だから、私に良い顔をしている。

そう考えると――

複雑な感じだった。

半年前、俺と別れた理由。

『周りのハイスペック男子と比べて、みゆきは……』

そう言われた。

でも、今の花奈は、私に対してすごく優しい。

それは、私が『美山理事長の姪っ子』だから。

「……」

少し、胸が痛んだ。

でも、仕方ない。

それはそれで、ビジネスライクで良いのかもしれない。

と、自分に言い聞かせた。

割り切るしかない。

「では、制服を着てみましょう」

美山理事長が、立ち上がった。

奥の部屋へ案内される。

そこには、マネキンに掛けられた制服があった。

聖ヶ丘女子学園の制服。

夏服。

白いセーラー服。紺色のスカート。

「わあ、懐かしい……私も昔、セーラー服着てたな」

花奈が、目を輝かせている。

「じゃあ、着替えてみて。私たち、外で待ってるから」

二人が部屋を出て、一人になる。

鏡の前で、服を脱ぐ。

そして、制服を手に取った。

「これを、着るのか……」

ブラウス。

スカート。

セーラー服の上着。

リボン。

一つ一つ、丁寧に着ていく。

スカート丈は――

膝上、15センチくらい。

「短いな……」

でも、今の女子高生は、これくらいが普通なんだろう。

全部着終えて、鏡を見る。

そこにいたのは――

女子高生だった。

『佐伯みゆき』

聖ヶ丘女子学園、二年A組。

「……本物だ」

ノックの音。

「みゆきちゃん、着替え終わった?」

花奈の声。

「は、はい……」

ドアが開く。

「わあ! 似合ってる!」

花奈が、拍手した。

「すっごく可愛い! これは、学校でモテるよ絶対」

美山理事長も、満足そうに頷いている。

「サイズもぴったりですね。では、写真撮影をしましょう」

証明写真用の背景の前に立つ。

「はい、姿勢を正して。笑顔は控えめに」

カメラのシャッター音。

何枚か撮影して――

「これで、OKです」

美山理事長が、タブレットで写真を確認している。

「この写真を、生徒手帳に貼ります」

画面を見せられる。

そこには、制服を着た私が映っていた。

真面目な表情。

でも、どこか初々しい。

本物の、女子高生みたいだ。

「じゃあ、私がこれ、プリントしてくるね」

花奈が、タブレットを持って出て行った。

部屋に、美山理事長と二人きりになる。

「斎藤さん」

美山理事長が、静かに言った。

「いよいよ、ですね」

「……はい」

「不安ですか?」

「正直……はい」

美山理事長は、微笑んだ。

「大丈夫。あなたなら、できます」

その言葉が、少しだけ心を軽くしてくれた。

数分後、花奈が戻ってきた。

「プリントできたよ!」

手には、証明写真。

生徒手帳を開いて、写真を貼る。

「はい、完成!」

生徒手帳を見る。

『私立聖ヶ丘女子学園
2年A組
佐伯みゆき』

写真付き。

これで、本当に――

私は、女子高生になった。​​​​​​​​​​​​​​​​
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