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学校
第24話 テスト
しおりを挟む朝、目が覚めた時、胸の違和感はまだあった。
でも、考えないようにした。
今日も、学校がある。
メイクをして、ウィッグをつけて、制服を着る。
もう、慣れた。
二日目。
「今日も、頑張らないと……」
学校に着いて、教室に入ると――
黒板に、大きく書かれていた。
『課題テスト』
「……え?」
隣の席の女の子が、ため息をついていた。
「やだー、もう課題テスト? 夏休みの宿題、ギリギリで終わらせたから全然覚えてない……」
課題テスト。
聞いてない。
そんなの、聞いてない!
慌てて、生徒手帳を確認する。
年間予定表のページを見ると――
『9月2日 課題テスト(全教科)』
書いてあった。
「まじか……」
美山理事長からの資料にも、あったかもしれない。
でも、見落としていた。
田中先生が、教室に入ってきた。
「はい、おはよう。今日は課題テストです。みんな、準備はいい?」
教室中から、ため息の声。
「じゃあ、机の上は筆記用具だけ。カバンは後ろに」
みんな、カバンを片付けている。
私も、慌てて片付ける。
「最初は国語から。30分です」
テスト用紙が配られる。
『二学期 課題テスト 国語』
問題用紙を見る。
現代文、古文、漢文――。
「……」
楽勝って言いたかった。
でも、正直なところ――
難しかった。
現代文は、まだいい。
読解問題なら、何とかなる。
でも、古文。
『いとをかし』
『あはれなり』
意味は、わかる。
でも、文脈を読み取るのが難しい。
漢文も、返り点を追うのに必死だ。
「時間です。ペンを置いてください」
田中先生の声。
「次は、10分休憩です」
休憩時間。
周りの女の子たちが、ざわざわ話している。
「やばい、全然わかんなかった……」
「古文、捨てた」
「次、数学だよね? もっとやばい……」
私も、同じ気持ちだった。
10分後。
「では、次は数学です。30分」
テスト用紙が配られる。
『二学期 課題テスト 数学』
問題を見る。
二次関数、三角関数、微分積分――。
「……」
大学受験の時に勉強したから、わかるはずだ。
でも、問題が難しい。
応用問題ばかり。
「くそ……」
ペンを走らせる。
でも、時間が足りない。
「時間です」
また、10分休憩。
そして、次は英語。
次は理科。
次は社会。
30分のテスト、10分の休憩。
それを、繰り返す。
昼休み。
お弁当を食べる時間もあったけど、みんなグッタリしていた。
「疲れたー……」
「午後も、まだあるんだよね……」
私も、机に突っ伏した。
「大丈夫? みゆきちゃん」
隣の女の子が、声をかけてきた。
名前は、確か――桜井さん。
「あ、うん……ちょっと疲れただけ」
「わかるー。私も、もう脳みそパンクしそう」
桜井さんは、笑った。
「でも、みゆきちゃん、帰国子女なんでしょ? 英語とか余裕だったんじゃない?」
「あ、まあ……それは」
英語は、確かに他の教科よりはできた。
でも、完璧ではない。
「すごいなー。私、英語苦手なんだよね」
桜井さんは、お弁当を食べ始めた。
「今度、教えてくれる?」
「うん、いいよ」
そう答えた。
でも、心の中では――
『俺も、そんなに得意じゃないんだけど……』
そう思っていた。
午後も、テストは続いた。
全部で五教科。
終わったのは、午後三時。
「お疲れ様でしたー!」
田中先生の声で、ようやく解放された。
教室中から、ため息。
「やっと終わったー……」
「帰りたい……」
みんな、疲れ切っていた。
私も、同じだった。
放課後。
帰り道。
「……難しかったな」
呟く。
女子高生の勉強、甘く見ていた。
大学を出ているから、余裕だと思っていた。
でも、現実は違った。
高校の勉強は、高校の勉強で難しい。
「まずいな……」
成績が悪かったら、怪しまれるかもしれない。
帰国子女って設定なのに、全然できないとか。
「次からは、ちゃんと勉強しないと……」
家に帰って、制服を脱ぐ。
Tシャツとハーフパンツに着替える。
鏡を見る。
胸の膨らみは――
まだ、ある。
「……」
測ってみようか。
メジャーを取り出して、胸囲を測る。
数値を確認する。
昨日より、0.5センチ増えている。
「気のせいじゃ……ない?」
不安が、じわじわと広がる。
でも、今はそれよりも――
報告書を書かないといけない。
ノートパソコンを開く。
『9月2日 二日目の記録
課題テスト。全教科。
予想以上に難しかった。
女子高生たちの学力は、侮れない。
みんな、真面目に勉強している。
今日の観察:
- テスト中、カンニングをする生徒はいなかった
- 休憩時間、みんな疲れた顔をしていた
- でも、お互いに励まし合っている様子
- クラスの雰囲気は、思ったより良好
クラスメイトとの関係:
- 桜井さんが話しかけてくれた
- 英語を教えてほしいと頼まれた
- 少しずつ、馴染んできている……?』
書き終えて、近藤に送る。
返信は、また短かった。
『お疲れ。
テスト、頑張れ。』
スマホを置いて、ため息をつく。
「明日も、学校か……」
窓の外は、もう暗くなっていた。
二日目が、終わった。
でも、まだ始まったばかり。
四ヶ月間。
この生活が、続く。
「……大丈夫かな、俺」
不安を抱えながら、私は夜を過ごした。
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