「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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学校

第25話 3日目 体力テスト

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朝、目が覚めて、今日の予定を確認した。

生徒手帳の予定表。

『9月3日 体力テスト』

「……体力テスト」

それも、書いてあった。

でも、見落としていた。

昨日のテストで疲れ切っていて、ちゃんと確認していなかった。

「まあ、体力テストくらいなら……」

そう思った。

走ったり、跳んだり。

男の体力なら、むしろ有利かもしれない。

学校に着いて、教室に入ると――

「今日、体力テストだよね」

「やだー、運動苦手……」

「体育館で着替えるんだっけ?」

女子高生たちが、ざわざわ話している。

田中先生が、教室に入ってきた。

「はい、おはよう。今日は体力テストです。体操服に着替えて、体育館に集合してください」

体操服。

「……あ」

そういえば、体操服。

美山理事長から、もらっていたはずだ。

家に届いた荷物の中に――。

慌てて、カバンを確認する。

入っている。

白い半袖のシャツと、紺色のブルマ――じゃなくて、ハーフパンツ。

「良かった……持ってきてた」

でも。

でも、それ以上に厄介なことが、すぐに出てきた。

「みんな、体育館の更衣室で着替えてください」

田中先生の言葉。

更衣室。

つまり、みんなで一斉に着替える。

「……まずい」

心臓が、バクバクと鳴り始めた。

みんなで着替える。

女子高生たちと、一緒に。

服を脱ぐ。

下着姿になる。

もし、バレたら――。

「大丈夫、大丈夫……」

自分に言い聞かせる。

タッキングしてる。

ブラジャーもつけてる。

見た目は、完璧に女の子だ。

「行くしかない……」

体育館へ向かう。

廊下には、他のクラスの生徒たちも歩いている。

みんな、体操服の袋を持っている。

体育館に着くと――

「うわ……」

学校中の生徒が、一斉に集まっていた。

二年生、全クラス。

数百人の女子高生たち。

「更衣室、こっちだよ」

桜井さんが、声をかけてきた。

「あ、うん……」

更衣室へ向かう。

中は、すでにたくさんの生徒で溢れていた。

ロッカーの前で、制服を脱ぐ女の子たち。

下着姿の女の子たち。

体操服を着る女の子たち。

「……」

目のやり場に困る。

でも、じっと見ていたら怪しまれる。

自然に、自然に――。

ロッカーを開けて、体操服を取り出す。

周りを見ないように、でも不自然にならないように。

制服のブラウスを脱ぐ。

スカートを脱ぐ。

下着姿になる。

ブラジャーとショーツ。

周りも、同じ格好だ。

誰も、私を見ていない。

みんな、自分の着替えに集中している。

「ふう……」

体操服を着る。

白い半袖シャツ。

紺色のハーフパンツ。

スニーカーに履き替える。

「よし……」

鏡で確認する。

体操服姿の女の子。

胸の膨らみも、ブラジャーのおかげで自然に見える。

「みゆきちゃん、着替え終わった?」

桜井さんが、隣で声をかけてきた。

「うん、終わった」

「じゃあ、一緒に体育館行こ」

「うん」

更衣室を出る。

無事に、着替えられた。

誰にも、バレなかった。

「……良かった」

でも、安心するのは早かった。

体育館のフロアには、すでに他のクラスの生徒たちが並んでいた。

体操服姿の女子高生たち。

数百人。

「すごい人数……」

「二年生、全員だもんね」

桜井さんが、呟いた。

体育の先生が、前に立った。

「はい、静かに! これから体力テストを始めます」

先生の説明が始まる。

「種目は、50メートル走、立ち幅跳び、ハンドボール投げ、反復横跳び、握力測定、上体起こし、長座体前屈、持久走です」

全部で八種目。

「各種目、順番に回ってください。測定結果は、後日発表します」

そして、クラスごとに分かれて、測定が始まった。

最初は、握力測定。

「佐伯さん、どうぞ」

測定器を握る。

全力で、握る。

「……28キロ」

記録係の生徒が、数値を書き留める。

「次、立ち幅跳び」

ラインの前に立つ。

ジャンプ。

「……165センチ」

「おお、すごい! みゆきちゃん、運動神経いいね」

桜井さんが、拍手してくれた。

「あ、ありがとう……」

でも、心の中では焦っていた。

『まずい、頑張りすぎた』

男の体力で、全力を出したら不自然だ。

次からは、少し抑えないと――。

「次、50メートル走」

スタートラインに立つ。

「位置について、よーい――」

ピストルの音。

走る。

でも、全力は出さない。

70%くらいの力で。

「……8秒2」

「速いね、みゆきちゃん!」

周りの女の子たちが、驚いている。

「い、いや、そんなことないよ……」

次は、ハンドボール投げ。

次は、反復横跳び。

次は、上体起こし。

一つ一つ、力を加減しながら。

でも、それでも――

「みゆきちゃん、運動神経良すぎ!」

「帰国子女って、やっぱりスポーツもできるの?」

注目を浴びてしまった。

「そ、そんなことないよ……」

誤魔化しながら、測定を続ける。

最後は、持久走。

グラウンドを、何周も走る。

「きつい……」

でも、これは女子高生たちも同じ。

みんな、息を切らしながら走っている。

「頑張れー!」

「あと一周!」

応援の声。

ゴール。

「お疲れ様ー!」

桜井さんが、水を渡してくれた。

「ありがとう……」

飲む。

冷たくて、美味しい。

「みゆきちゃん、本当にすごいね。全部、クラスで上位じゃない?」

「そ、そうかな……」

誤魔化す。

でも、確かに――

力を抑えても、上位に入ってしまった。

『まずい、目立ちすぎた……』

午後三時。

全ての測定が終わった。

「お疲れ様でしたー!」

体育の先生の声で、解散。

更衣室で、また着替える。

体操服を脱いで、制服を着る。

周りには、また下着姿の女の子たち。

でも、もう慣れた。

自然に、着替える。

誰にも、バレなかった。

帰り道。

「今日も、疲れたー……」

呟く。

でも、無事に終わった。

三日目。

体力テスト。

バレずに、乗り切った。

家に帰って、制服を脱ぐ。

鏡を見る。

胸の膨らみは――

また、少し大きくなっている気がする。

「……本当に、何なんだ」

測ってみる。

昨日より、また0.5センチ増えている。

「まずい……」

このままだと――

いや、考えたくない。

報告書を書く。

『9月3日 三日目の記録

体力テスト。
更衣室での着替え、無事にクリア。

測定結果は、力を抑えたつもりだったが、
それでもクラスで上位に入ってしまった。

今後、注意が必要。

今日の観察:

- 女子高生たちは、思ったより体力がある
- でも、運動が苦手な子も多い
- お互いに応援し合う雰囲気が良い

体の変化:

- 胸の膨らみが、また少し大きくなっている
- 原因不明
- 要観察……』

書き終えて、近藤に送る。

返信は来なかった。

「……」

スマホを置いて、天井を見上げる。

三日目が、終わった。

でも、まだまだ続く。

この生活が。

そして、体の変化も――。

不安を抱えながら、私は夜を過ごした。​​​​​​​​​​​​​​​​
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