「俺、女子高生になります

あさき のぞみ

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学校

第26話 4日目 通常授業開始

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朝、目が覚めて、今日の時間割を確認した。

生徒手帳に書いてある、二年A組の時間割。

『9月4日(木)
1限 現代社会
2限 数学
3限 数学
4限 古文
5限 日本史
6限 美術
7限 美術』

「今日から、通常授業か……」

昨日までは、テストと体力テストで特別日程だった。

でも、今日からは普通の授業。

前もって調べておいたおかげで、忘れ物はない。

教科書、ノート、筆記用具――全部、カバンに入れた。

美術は、スケッチブックと画材セットが必要だ。

それも、美山理事長から支給されたものがある。

「よし、準備OK」

学校に着いて、教室に入る。

「おはよー、みゆきちゃん!」

桜井さんが、手を振ってくれた。

「おはよう」

席に座る。

周りの女子高生たちも、おしゃべりしている。

「今日から普通授業だね」

「やっと落ち着くー」

「でも、数学二時間連続とか地獄……」

チャイムが鳴った。

ホームルームが始まる。

田中先生が、教室に入ってきた。

「はい、おはよう。今日から通常授業です。気を引き締めて頑張りましょう」

-----

一限目。現代社会。

五十代くらいの男性教師が入ってきた。

「おはよう。私が現代社会を担当する山田です」

山田先生は、教科書を開いた。

「今日は、日本国憲法について勉強します」

授業が始まる。

板書をノートに写す。

周りの女子高生たちも、真面目にノートを取っている。

「佐伯さん」

突然、名前を呼ばれた。

「は、はい!」

立ち上がる。

「帰国子女だそうだけど、イギリスの政治制度について何か知ってる?」

「え、えっと……」

焦る。

イギリスの政治。

議院内閣制、君主制――。

「イギリスは、立憲君主制で、議院内閣制を採用しています。女王――いや、今は国王が象徴的な存在で、実際の政治は首相と議会が行います」

「そう、正解。さすが帰国子女だね。座って」

「ありがとうございます……」

座る。

心臓が、バクバクしていた。

-----

二限目、三限目。数学。

若い女性教師が入ってきた。

「おはよう。数学の佐々木です」

二時間連続で、二次関数の応用問題。

「この問題、解ける人?」

何人かが手を挙げる。

私も――

いや、目立たない方がいい。

手は挙げない。

でも、佐々木先生は私を指名した。

「佐伯さん、やってみて」

「は、はい……」

黒板の前に立って、問題を解く。

グラフを描いて、式を立てて――。

「正解です。よくできました」

「ありがとうございます」

席に戻る。

周りから、小さな拍手。

「みゆきちゃん、数学得意なんだね」

桜井さんが、囁いてきた。

「ま、まあ……」

-----

四限目。古文。

中年の女性教師が入ってきた。

「古文の田村です。今日は『源氏物語』を読みます」

古文。

正直、苦手だ。

でも、授業は何とかついていける。

「この『をかし』の意味は?」

「趣がある、という意味です」

「そう、正解」

-----

昼休み。

お弁当を食べる。

美山理事長から支給された、お弁当。

「みゆきちゃん、そのお弁当美味しそう!」

桜井さんが、覗き込んできた。

「あ、うん……叔母が作ってくれたんだ」

「いいなー。私、コンビニ弁当……」

周りの女の子たちと、雑談をする。

芸能人の話。

SNSの話。

恋愛の話――。

「みゆきちゃんは、彼氏いるの?」

「え……いない、よ」

「ほんとー? 可愛いのに」

「そ、そんなことないよ……」

誤魔化す。

彼氏。

半年前まで、俺には彼女がいた。

花奈。

でも、今は――

俺が、女の子のフリをしている。

「……」

複雑な気持ちになる。

-----

五限目。日本史。

六十代くらいの男性教師。

「日本史の小林です。今日は、江戸時代について」

授業は、淡々と進む。

ノートを取りながら、少しずつ眠くなってくる。

「……」

まぶたが、重い。

「佐伯さん、起きてる?」

「は、はい! 起きてます!」

慌てて、背筋を伸ばす。

周りから、クスクスと笑い声。

-----

六限目、七限目。美術。

美術室へ移動する。

「今日から、静物画を描きます」

美術の先生が、テーブルの上にリンゴと花瓶を置いた。

「好きな角度から描いてください」

スケッチブックを開く。

鉛筆を手に取る。

デッサン。

久しぶりだ。

大学の時、教養科目で取ったくらい。

でも、意外と覚えている。

輪郭を描いて、陰影をつけて――。

「佐伯さん、上手ね」

美術の先生が、後ろから覗き込んできた。

「あ、ありがとうございます……」

「帰国子女だから、芸術教育もしっかり受けてたのかしら」

「ま、まあ……」

適当に誤魔化す。

二時間、ひたすら描き続けた。

-----

放課後。

「やっと終わったー……」

教室で、みんながため息をついている。

「七時間授業、長すぎ……」

「明日も、同じくらいあるよね……」

私も、疲れていた。

一日中、緊張していた。

バレないように。

自然に振る舞うように。

「みゆきちゃん、一緒に帰らない?」

桜井さんが、声をかけてきた。

「あ……ごめん、今日は用事があるんだ」

「そっか。じゃあ、また明日ね」

「うん、また明日」

一人で、学校を出る。

帰り道。

「……疲れた」

呟く。

四日目。

通常授業。

何とか、乗り切った。

でも、まだまだ続く。

家に帰って、制服を脱ぐ。

鏡を見る。

胸の膨らみは――

また、少し大きくなっている。

測ってみる。

昨日より、1センチ増えている。

「……やばい」

明らかに、成長している。

「何が起こってるんだ……」

不安が、大きくなる。

報告書を書く。

『9月4日 四日目の記録

通常授業開始。
七時間授業。

各教科、何とかついていけている。
でも、目立ちすぎないように注意が必要。

クラスメイトとの関係は良好。
桜井さんが、よく話しかけてくれる。

体の変化:

- 胸の膨らみが、明らかに大きくなっている
- 昨日より1センチ増
- 原因不明
- 非常に不安……』

書き終えて、近藤に送る。

そして――

美山理事長にも、メールを送った。

件名:体の変化について

本文:
『美山理事長

相談があります。
最近、胸の膨らみが明らかに大きくなっています。

何か、原因に心当たりはありますか?

お時間のある時で構いませんので、
ご返信いただけますと幸いです。

斎藤』

送信。

返信は――

すぐには来なかった。

「……」

不安を抱えたまま、私は夜を過ごした。

四日目が、終わった。

でも、謎は深まるばかりだった。​​​​​​​​​​​​​​​​
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