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文化祭あと
第53話 写真データ
しおりを挟む金曜日。
写真販売の日。
「見て見て、文化祭の写真!」
昼休み、教室は盛り上がっていた。
廊下には、各クラスの写真が掲示されている。
生徒たちが、気に入った写真を注文する仕組み。
「これ可愛い!」
「これ買おう!」
楽しそうな声。
私は――
遠くから、様子を見ていた。
掲示されている写真。
メイドカフェの様子。
接客している私と近藤さん。
紅茶を運んでいる写真。
笑顔で話している写真。
でも――
着替えている写真は、なかった。
準備室の写真は、なかった。
「……良かった」
美山理事長が、守ってくれた。
田中先生が、チェックしてくれた。
あのデータは、公開されなかった。
「終わった……」
ホッとした。
これで、本当に終わった。
そう思った。
-----
でも。
そう言われることは、想定していた。
桜井さんたちは。
週末。
土曜日の夜。
スマホが、震えた。
LINEの通知。
クラスのグループLINE。
『見て、これ』
誰かが、リンクを貼っていた。
「……?」
リンクを開く。
SNS。
Twitterのようなサイト。
そこには――
『2人の女子◯生』
というタイトルで、動画が投稿されていた。
「……!」
再生ボタンを押す。
動画が、始まった。
準備室。
制服を脱ぐ姿。
下着姿。
メイド服を着る姿。
「嘘……」
あのカメラの映像だった。
でも――
制服とメイド服は、モザイクのような形で加工されていた。
学校が特定されないように。
顔も――
ぼかされている。
でも、体型。
髪型。
動き。
『見る人が見れば、誰かわかる』
そのレベルの加工。
「くそ……!」
スマホを握りしめる。
クラスのグループLINEでは――
『これ、誰?』
『わかんない』
『どこの学校?』
『制服、見えないね』
みんな、気づいていない様子。
でも――
桜井さんは、何も言っていない。
投稿もしていない。
ただ、黙って見ている。
「……」
わかった。
これが、桜井さんたちの最終的な仕掛け。
学校には、出さない。
でも、SNSで拡散する。
特定されないように加工して。
でも、クラスメイトには――
『もしかして……』
そう思わせるレベルで。
「まずい……」
近藤さんに、連絡しないと。
LINEを開く。
『近藤さん、見た?』
すぐに、返信が来た。
『見ました……どうしよう』
『わからない。でも、学校には特定されないと思う』
『でも……クラスの人たちは?』
『……』
答えられなかった。
クラスメイトたちは、どう思うだろう。
『もしかして、あれ……みゆきちゃんと近藤さん?』
そう気づく人は、いるだろうか。
「……」
動画をもう一度見る。
再生回数は――
『523回』
すでに、500回以上も再生されている。
コメント欄には――
『エロい』
『誰?』
『もっと見たい』
下品なコメントが並んでいる。
「気持ち悪い……」
スマホを置く。
どうすればいい。
美山理事長に、相談する?
でも、SNSの投稿は――
削除できるのか?
「……」
わからない。
わからないことだらけ。
-----
月曜日。
学校。
登校すると――
何人かの視線を感じた。
廊下を歩いていると、ヒソヒソと話している生徒たち。
「ねえ、あれ……」
「わかんない。でも、似てる気がする……」
「まさかね……」
噂が、広がっている。
教室に入ると――
桜井さんが、いつもの笑顔で迎えてくれた。
「おはよう、みゆきちゃん」
「……おはよう」
何食わぬ顔。
まるで、何も知らないかのように。
でも、わかっている。
桜井さんが、やったんだ。
あの動画を、投稿したのは。
「週末、どうだった?」
「……普通」
「そっか」
桜井さんは、自分の席に戻った。
近藤さんと、目が合う。
彼女も、不安そうな顔をしている。
「……」
どうすればいい。
この状況を、どう乗り越えればいい。
その時。
田中先生が、教室に入ってきた。
「はい、みんな。今日は大事な話があります」
「……?」
「週末、SNSに不適切な動画が投稿されました」
教室が、ざわつく。
「本校の生徒ではないかという噂もありますが……」
田中先生の視線が、私たちに向いた。
一瞬だけ。
「もし、そのような動画を見つけた人は、すぐに先生に報告してください」
「はーい」
「また、そのような動画を拡散することは、絶対にやめてください」
「……」
でも、もう遅い。
もう、拡散されている。
もう、何百人もの人が見ている。
「以上です」
田中先生は、それだけ言って職員室に戻った。
『形だけ』の注意。
本気で対応する気はない。
「……」
私は、机に突っ伏した。
どうすればいい。
誰に相談すればいい。
美山理事長?
近藤?
それとも――
答えは、まだ見つからなかった。
でも、一つだけ確かなことがあった。
桜井さんたちの仕掛けは――
完成した。
そして、私の試練は――
まだ、終わっていない。
あと、一ヶ月半。
十二月末まで。
この地獄が、続く。
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