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六年後
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六年が経った。
保は通信制大学の卒業証書を手にしていた。
教育学部。特別支援教育課程。
六年かけて取得した学位。
「美樹……やったよ」
保は仏壇の前で報告した。
「これから、支援員として働くことになった」
障害者支援施設での正職員としての採用が決まっていた。
給料は以前より少ないが、安定した収入が得られる。
「美保のことも、もっと支えられる」
保は微笑んだ。
美樹の写真も、微笑んでいる気がした。
その日は、美保の特別支援学校初等部の卒業式だった。
美保は十二歳になっていた。
身長は伸び、体つきも女性らしくなってきていた。
初潮も迎えた。保は戸惑ったが、加藤主任や女性職員に助けてもらいながら、対応した。
体育館に並ぶ小さな椅子。
壇上には、卒業生たちが座っていた。
美保もいた。
発達検査では「一歳未満相当」という結果だった。
言葉は相変わらず話せない。
視線も合いにくい。
でも——。
美保は、笑うようになった。
保の顔を見ると、小さく笑う。
ぬいぐるみを抱いて、嬉しそうにする。
音楽が流れると、体を揺らす。
小さな、本当に小さな変化。
でも、確かな成長だった。
卒業証書授与が始まった。
一人ずつ、名前が呼ばれる。
「田中美保さん」
美保の名前が呼ばれた。
職員に手を引かれて、美保が壇上に上がった。
校長先生が、卒業証書を手渡した。
美保は証書を受け取った。
そして——。
保の方を向いた。
視線が合った。
美保が、笑った。
保の目から、涙が溢れた。
「美保……」
小さく呟いた。
式が終わった後、保は美保を抱きしめた。
「卒業おめでとう」
美保は何も言わなかった。
ただ、ぬいぐるみを抱きしめていた。
加藤が近づいてきた。
「田中さん、美保ちゃん、本当によく頑張りましたね」
「ありがとうございます。加藤さんのおかげです」
「いえ、お父さんが諦めなかったからですよ」
加藤は続けた。
「美保ちゃん、中等部でも頑張れると思います」
保は頷いた。
「これからも、よろしくお願いします」
帰り道、保は美保と手を繋いで歩いた。
美保の手は、以前より大きくなっていた。
でも、まだ小さい。
「美保、これからもっと大きくなるんだな」
保は呟いた。
美保は何も答えなかった。
ただ、ぬいぐるみを抱いて歩いていた。
夕方、保は美保をひまわり学園に送り届けてから、家に帰った。
仏壇の前に座り、美樹の写真に卒業証書を見せた。
「美樹、美保が卒業したよ」
写真の美樹は、変わらず微笑んでいた。
「俺も、大学を卒業した。これから、支援員として働くことになった」
保は続けた。
「美保みたいな子供たちを、支える仕事だ」
美樹の写真を見つめた。
「美樹、お前がいたから、ここまで来れた」
保の目から、涙がこぼれた。
「ありがとう」
窓の外には、夕日が沈んでいた。
オレンジ色の空。
保は立ち上がった。
これから、まだ長い道のりが続く。
美保は十二歳。
これからの人生の方が、ずっと長い。
思春期、青年期、そして成人期。
美保の障害は、一生続く。
支援も、一生必要だ。
困難も、苦しみも、きっとまだある。
でも——。
保には、歩く力があった。
美樹の思い出。
佐々木さんの優しさ。
美保の笑顔。
それらが、保を支えてくれる。
「まだまだ、これからだな」
保は呟いた。
美保は今頃、ひまわり学園で夕食を食べているだろう。
職員に見守られながら、ゆっくりと。
来週末、また会いに行こう。
保はそう思った。
そして、明日からまた、新しい職場で働く。
障害のある子どもたちを支える仕事。
保は、自分の使命を見つけていた。
美樹の分まで。
佐々木さんの分まで。
そして、美保のために。
保は生きていく。
保は通信制大学の卒業証書を手にしていた。
教育学部。特別支援教育課程。
六年かけて取得した学位。
「美樹……やったよ」
保は仏壇の前で報告した。
「これから、支援員として働くことになった」
障害者支援施設での正職員としての採用が決まっていた。
給料は以前より少ないが、安定した収入が得られる。
「美保のことも、もっと支えられる」
保は微笑んだ。
美樹の写真も、微笑んでいる気がした。
その日は、美保の特別支援学校初等部の卒業式だった。
美保は十二歳になっていた。
身長は伸び、体つきも女性らしくなってきていた。
初潮も迎えた。保は戸惑ったが、加藤主任や女性職員に助けてもらいながら、対応した。
体育館に並ぶ小さな椅子。
壇上には、卒業生たちが座っていた。
美保もいた。
発達検査では「一歳未満相当」という結果だった。
言葉は相変わらず話せない。
視線も合いにくい。
でも——。
美保は、笑うようになった。
保の顔を見ると、小さく笑う。
ぬいぐるみを抱いて、嬉しそうにする。
音楽が流れると、体を揺らす。
小さな、本当に小さな変化。
でも、確かな成長だった。
卒業証書授与が始まった。
一人ずつ、名前が呼ばれる。
「田中美保さん」
美保の名前が呼ばれた。
職員に手を引かれて、美保が壇上に上がった。
校長先生が、卒業証書を手渡した。
美保は証書を受け取った。
そして——。
保の方を向いた。
視線が合った。
美保が、笑った。
保の目から、涙が溢れた。
「美保……」
小さく呟いた。
式が終わった後、保は美保を抱きしめた。
「卒業おめでとう」
美保は何も言わなかった。
ただ、ぬいぐるみを抱きしめていた。
加藤が近づいてきた。
「田中さん、美保ちゃん、本当によく頑張りましたね」
「ありがとうございます。加藤さんのおかげです」
「いえ、お父さんが諦めなかったからですよ」
加藤は続けた。
「美保ちゃん、中等部でも頑張れると思います」
保は頷いた。
「これからも、よろしくお願いします」
帰り道、保は美保と手を繋いで歩いた。
美保の手は、以前より大きくなっていた。
でも、まだ小さい。
「美保、これからもっと大きくなるんだな」
保は呟いた。
美保は何も答えなかった。
ただ、ぬいぐるみを抱いて歩いていた。
夕方、保は美保をひまわり学園に送り届けてから、家に帰った。
仏壇の前に座り、美樹の写真に卒業証書を見せた。
「美樹、美保が卒業したよ」
写真の美樹は、変わらず微笑んでいた。
「俺も、大学を卒業した。これから、支援員として働くことになった」
保は続けた。
「美保みたいな子供たちを、支える仕事だ」
美樹の写真を見つめた。
「美樹、お前がいたから、ここまで来れた」
保の目から、涙がこぼれた。
「ありがとう」
窓の外には、夕日が沈んでいた。
オレンジ色の空。
保は立ち上がった。
これから、まだ長い道のりが続く。
美保は十二歳。
これからの人生の方が、ずっと長い。
思春期、青年期、そして成人期。
美保の障害は、一生続く。
支援も、一生必要だ。
困難も、苦しみも、きっとまだある。
でも——。
保には、歩く力があった。
美樹の思い出。
佐々木さんの優しさ。
美保の笑顔。
それらが、保を支えてくれる。
「まだまだ、これからだな」
保は呟いた。
美保は今頃、ひまわり学園で夕食を食べているだろう。
職員に見守られながら、ゆっくりと。
来週末、また会いに行こう。
保はそう思った。
そして、明日からまた、新しい職場で働く。
障害のある子どもたちを支える仕事。
保は、自分の使命を見つけていた。
美樹の分まで。
佐々木さんの分まで。
そして、美保のために。
保は生きていく。
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