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第1章 ゼノビア王国編
第7話 主席挨拶
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プランタジネット共・王立アカデミー初等部への入学式の日を迎えていた今日、私、ティア・ゼノビアには重要な任務があった。それは主席挨拶だ。
事前に書いた挨拶文は無難なものにまとめていた。というのも、その内容は詳細な検閲を受けるため、適切な内容でないと何度でも書き直させられるからだ。
どうでもいいことに時間を割くのは苦痛なので、適当に書いた。まあ、あまり関係ないのだけれど。
父の要望通り、私はアカデミーへの入試試験を首席で突破したため、古代図書館地下1階への入室許可が下りていた。
意外だったのは、試験の採点に際して、私の成果を公正に評価してくれたことだ。正直、なんらかの手を加えられて、合格なのに落とされるなんてシナリオもなんとなく想定はしていた。
採点なんて、いくらでも操作出来るもんね。そのあたりはちゃんとやってくれたようで少しホッとした。
また、試験結果を伝えられ入室許可を得る際、父は私にとても気になることを言っていた。
「地下1階程度の書物では、おまえの知識欲は満たせないかもしれないな」
私の能力をすでに認めているような言い方だ。しかもそう思われているのは、なにも試験結果が良かったからだけではないだろう。
これまでの行動についてはティベリウスなどから報告を受けているだろうから、総合的に優秀だと判断されているようだった。
しかも、含みがある言い方。地下1階程度。古代図書館にはさらに下層があるということを暗にほのめかしている。
そしてその情報は、エマ時代を含めて初耳だったので、私は心が躍らずにはいられなかった。
「地下2階へ行くには、アカデミーで無双すればいいのかしら?」
地下は何階まであるかは知らないが、当たり前であるかのように、私は冗談ぽく王に聞いてみた。
ま、地下1階同様、認可に相当するなにかがなければ、当然入れないだろうけど。
「調子に乗るな。まずは大人しくアカデミーへ通え」
すいません。とりあえず、言われた通り大人しく地下1階の書物から読み漁っていこうと思う。アカデミーは、まあ適当に。
……などということを思い出していたら、挨拶の時が来た。
そういえば、入学式の途中だった。
「それでは。新入生代表挨拶を、ティア・ゼノビア王女。よろしくお願いします」
「はい」
司会の教師から紹介を受けた私は、大きくも小さくもない冷静な声で返事をし、演題へと上がった。
薄い拍手が申し訳程度に起こる。まるでこの茶番のような入学式の雰囲気を物語っているようだ。
おそらく、だれも新入生代表挨拶など興味がない。当然私もない。
そもそも、入学式のような特に意味もない式典など、実力者揃いのこの学園の生徒や教師がやりたいと思っていることはないんじゃないかな。
いや、普通どこの式典でも参加させられほうは嫌なものか。
あくまで体裁。形式的イベントの一つ。付き合わされているだけだろう。
「敬愛する学長先生、教職員の皆様、そして今日一緒に新たなスタートを切る仲間たち、こんにちは。私の名前はティア・ゼノビア。新入生代表として皆様の前に立ち、こうしてご挨拶させていただけることを大変光栄に思います」
用意されていた拡声器で無難に話し始める私。事前に書いた挨拶文通りだ。
特に緊張はない。緊張はないが、目の前に広がる光景に目をやると、別の感情が沸いてくる。
「新たな生活の始まりに立つこの瞬間、私たち全員が感じているであろう期待と緊張、そして何よりも希望に満ちた気持ちを代弁させていただきます」
冷静な語り口だが、実は内心腹が立ってきていた。何故この私、天才魔術師であるエマ・ヴェロニカ様がこんな茶番に付き合わなければいけないのか。
そもそもアカデミーへの入学は図書館の地下で書物を読み漁るのが目的。条件は一応クリアされている。特に付き合わなければいけない理由もないはずだ。
しかも目の前の光景がひどい。欠伸をする奴、寝ている奴、こそこそ後ろでしゃべっている奴、にやにやしながら挑発的な視線を送ってくる奴。むかつく奴等がたくさんいて、余計に火に油を注いでくる。
いくら参加させられていると言っても、態度ってもんがあるでしょ!この私がわざわざ挨拶をしてあげていると言うのに!
「このアカデミーは私たちに数多くの可能性を提供してくれます。知識を深め、新しい友人を作り、そして自分自身を発見する場です。私たちはこれから自己の成長と学問への情熱を追求するための時間を共有し、互いに高め合い、支え合います」
まだ冷静さは保っている。保ってはいるが、限界は近い。
だんだん語尾にも力がこもってくる。
「特に難しくもない入学試験を適当に解いてここに集まった私たちは、それぞれ異なる未熟な経験と視点を持っています」
あ、なんかちょっとおかしくなってきた。
「これらの違いは私たちのコミュニティに負の感情を生み、自分こそが唯一絶対の存在で、他の無能な者達を軽蔑し、個の違いを受け入れず、他人を理解しようと努力するつもりなど到底なく、支配的な立ち位置と権力を手にし、気持ちの良い学園生活を送ることが、この上ない喜びとなるはずです」
ああ。もうだめだ。
事前に書いた挨拶文は無難なものにまとめていた。というのも、その内容は詳細な検閲を受けるため、適切な内容でないと何度でも書き直させられるからだ。
どうでもいいことに時間を割くのは苦痛なので、適当に書いた。まあ、あまり関係ないのだけれど。
父の要望通り、私はアカデミーへの入試試験を首席で突破したため、古代図書館地下1階への入室許可が下りていた。
意外だったのは、試験の採点に際して、私の成果を公正に評価してくれたことだ。正直、なんらかの手を加えられて、合格なのに落とされるなんてシナリオもなんとなく想定はしていた。
採点なんて、いくらでも操作出来るもんね。そのあたりはちゃんとやってくれたようで少しホッとした。
また、試験結果を伝えられ入室許可を得る際、父は私にとても気になることを言っていた。
「地下1階程度の書物では、おまえの知識欲は満たせないかもしれないな」
私の能力をすでに認めているような言い方だ。しかもそう思われているのは、なにも試験結果が良かったからだけではないだろう。
これまでの行動についてはティベリウスなどから報告を受けているだろうから、総合的に優秀だと判断されているようだった。
しかも、含みがある言い方。地下1階程度。古代図書館にはさらに下層があるということを暗にほのめかしている。
そしてその情報は、エマ時代を含めて初耳だったので、私は心が躍らずにはいられなかった。
「地下2階へ行くには、アカデミーで無双すればいいのかしら?」
地下は何階まであるかは知らないが、当たり前であるかのように、私は冗談ぽく王に聞いてみた。
ま、地下1階同様、認可に相当するなにかがなければ、当然入れないだろうけど。
「調子に乗るな。まずは大人しくアカデミーへ通え」
すいません。とりあえず、言われた通り大人しく地下1階の書物から読み漁っていこうと思う。アカデミーは、まあ適当に。
……などということを思い出していたら、挨拶の時が来た。
そういえば、入学式の途中だった。
「それでは。新入生代表挨拶を、ティア・ゼノビア王女。よろしくお願いします」
「はい」
司会の教師から紹介を受けた私は、大きくも小さくもない冷静な声で返事をし、演題へと上がった。
薄い拍手が申し訳程度に起こる。まるでこの茶番のような入学式の雰囲気を物語っているようだ。
おそらく、だれも新入生代表挨拶など興味がない。当然私もない。
そもそも、入学式のような特に意味もない式典など、実力者揃いのこの学園の生徒や教師がやりたいと思っていることはないんじゃないかな。
いや、普通どこの式典でも参加させられほうは嫌なものか。
あくまで体裁。形式的イベントの一つ。付き合わされているだけだろう。
「敬愛する学長先生、教職員の皆様、そして今日一緒に新たなスタートを切る仲間たち、こんにちは。私の名前はティア・ゼノビア。新入生代表として皆様の前に立ち、こうしてご挨拶させていただけることを大変光栄に思います」
用意されていた拡声器で無難に話し始める私。事前に書いた挨拶文通りだ。
特に緊張はない。緊張はないが、目の前に広がる光景に目をやると、別の感情が沸いてくる。
「新たな生活の始まりに立つこの瞬間、私たち全員が感じているであろう期待と緊張、そして何よりも希望に満ちた気持ちを代弁させていただきます」
冷静な語り口だが、実は内心腹が立ってきていた。何故この私、天才魔術師であるエマ・ヴェロニカ様がこんな茶番に付き合わなければいけないのか。
そもそもアカデミーへの入学は図書館の地下で書物を読み漁るのが目的。条件は一応クリアされている。特に付き合わなければいけない理由もないはずだ。
しかも目の前の光景がひどい。欠伸をする奴、寝ている奴、こそこそ後ろでしゃべっている奴、にやにやしながら挑発的な視線を送ってくる奴。むかつく奴等がたくさんいて、余計に火に油を注いでくる。
いくら参加させられていると言っても、態度ってもんがあるでしょ!この私がわざわざ挨拶をしてあげていると言うのに!
「このアカデミーは私たちに数多くの可能性を提供してくれます。知識を深め、新しい友人を作り、そして自分自身を発見する場です。私たちはこれから自己の成長と学問への情熱を追求するための時間を共有し、互いに高め合い、支え合います」
まだ冷静さは保っている。保ってはいるが、限界は近い。
だんだん語尾にも力がこもってくる。
「特に難しくもない入学試験を適当に解いてここに集まった私たちは、それぞれ異なる未熟な経験と視点を持っています」
あ、なんかちょっとおかしくなってきた。
「これらの違いは私たちのコミュニティに負の感情を生み、自分こそが唯一絶対の存在で、他の無能な者達を軽蔑し、個の違いを受け入れず、他人を理解しようと努力するつもりなど到底なく、支配的な立ち位置と権力を手にし、気持ちの良い学園生活を送ることが、この上ない喜びとなるはずです」
ああ。もうだめだ。
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