桃太郎と猫

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桃太郎?と猫2

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昔むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。

おばあさんが川でせっせと洗濯をしていると、
「どんぶらこ、どんぶらこ」と、大きな大きな桃が流れてきました。

「……なんだか、気味が悪いねぇ」

おばあさんは顔をしかめると、その桃をスルー。
桃はそのまま、ゆらゆら揺れながら海の方へ流れていきました。

しばらくすると、今度は「どんぶらこ、どんぶらこ」と、なんとおじいさんが流れてきました。

「……帰りが面倒(めんどう)になって川で流れて帰ろうとしたのかい? まったくもう」

呆れたおばあさんは、これまた見なかったことにしてスルー。
おじいさんも桃と同じく、ぷかぷかと海へ流れていきました。

さらにしばらくすると、「どんぶらこ、どんぶらこ」と、不思議(ふしぎ)なものが流れてきます。
サングラスをかけ、ふてぶてしい表情の黒猫――その名もねこ丸です。

「……なんだって今日は変なものばっかり流れてくるんだい。縁起(えんぎ)でもないよ」

おばあさんはやはり無視(むし)を決めこみ、ねこ丸もすいすいと流れていきました。

* * *

桃→おじいさん→ねこ丸
三つの“どんぶらこ”はやがて、広い海を越え、鬼ヶ島へと辿り着きました。

鬼ヶ島では、恐ろしい鬼たちが宝物を奪い、人々を苦しめています。
桃は岩にぶつかって割れ、中から出てくるはずの桃太郎は――いません!
おじいさんは岸に打ち上げられ、ぼうぜんとしています。

そこへ、ねこ丸がズブ濡(ぬ)れで登場(とうじょう)。
サングラスをクイッと上げると、おじいさんにこう言いました。

「おじい、ここは任せろニャ。」

──次の瞬間(しゅんかん)。

ねこ丸は腰のポーチから手榴弾(てりゅうだん)を取り出すと、鬼ヶ島めがけて思い切り投げ込みました!

ドォォォォン!!

すさまじい爆音が響き渡り、鬼ヶ島は火の海に。
鬼たちは真っ黒こげになって逃げ出し、宝物はすべて吹っ飛びました。

──かくして、桃太郎が現れなかったにもかかわらず、
ねこ丸の手によって鬼退治はあっけなく完了してしまったのでした。

おじいさんは感動し、

「ねこ丸よ……おまえこそ真の英雄(ヒーロー)じゃ」

と涙を流しましたが、ねこ丸はそっけなくこう言います。

「礼はいらんニャ。洗濯ばあさんによろしくニャ。」

そう言い残すと、ねこ丸はどんぶらこどんぶらことまた海へ流れ去っていきました。

* * *

こうして鬼ヶ島は平和になり、
桃も、おじいさんも、ねこ丸も、それぞれの“どんぶらこ”の旅を終えたのでした。

めでたし、めでたし。
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