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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編
第16話 大聖堂地下通路での危機
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「なな、な、何なのだあの女は!!?」
映像を眺めていたシュバールツは焦燥していた。
一瞬で5000以上もの魔兵を消滅させた、セレイナの一撃はそれほどまでに脅威だった。
「それにあの男はなんだ!まるで魔力が尽きる気配がない」
映像には、ファイア・バレットを無尽蔵に撃ちまくっている凛人の姿が映し出されている。
「クソッ!キャンディ・メイとエディアノイにも手を焼いているというのに!……あわよくばどちらかでも殺せればと考えていたが…… 何なのだあいつらは!!」
片眼鏡の男がワインボトルを持ち歩いてきた。相変わらず、シュバールツに対しては冷ややかな視線をこの男は送っている。どこか軽蔑をしているようにも見えるその視線に、シュバールツは映像に夢中で気づいていない様子だ。
「シュバールツ様。これは我々にとって致命的な大損害でございます。ウォルボレン様にどう説明を?」
「黙れっ!!今あやつの名前を出すでない!!」
「これは、失礼をいたしました」
シュバールツは男から乱暴にワインボトルを取り上げると、ボトルのままワインを一気に口の中へと運んだ。口の横からワインが滴り落ちるのも気にせず、やけを起こしたように飲み干すと、テーブルの上に叩き付けるように置いた。
「……まだだ、ユリアさえ亡き者にできれば、我々はまた栄華を取り戻すチャンスをつかめる。この戦争はそのための陽動でもあったのだからな」
シュバールツはニチャッと不敵な笑みを浮かべた。
--------
「ユリア様、フローラ様。足元に気を付けてくださいよ」
「はい、大丈夫です」
ここはエブンズダール大聖堂の地下通路。戦況が非常に不利だという連絡を受けて
ユリアたちは、脱出するべく地下へと避難していた。
警護には、ナイル率いるAランクチーム『銀狼』が付いていた。スナッシュらSランクの稲妻の騎士は、あの一件以来姿を見せていなかったため、ダンジョンの経験もありパーティのバランスの取れた、ナイルたちをルーガスは起用した。
「しかし、戦況がヤバいとなると、この街も落とされちまうかもな。クソ! エレオナ……」
「ギルド長も他の冒険者も大勢ついてるし、私たちが戻るまではきっと無事よ、ナイル」
「ああ……そうだな」
ナイルたちは、ウィザードのイーレが出している魔法の光を頼りに、薄暗い地下道を進んでいた。
「パパとお姉ちゃん、大丈夫なの?」
心配そうにフローラがユリアに尋ねる。
「パパとお姉ちゃんはとっても強いのよ、魔族をやっつけてちゃんと戻ってくるわ」
その時、通信用の水晶が音を発し光出した。ナイルはすぐに応答した。
「どうした!」
「こちら国境師団、戦況は敵軍の殲滅間近!ユリア様とフローラ様は無事か?」
「ほ、本当か!? 二人とも無事だ!」
その通信を聞き、その場にいた全員から安堵の息が漏れる。
「まだ気を抜かず護衛を頼む」
「了解!」
ユリアとフローラが手を合わせ、笑顔で顔を見合わせる。
街の陥落を覚悟していたナイル一行にとって、これ以上ない嬉しい知らせだった。
「よし、もう大丈夫そうだ。引き返して大聖堂で待機するか」
「はぁ。 無事に任務を終えられそうね」
「ウン。ウン。 ギルド長からの直々の依頼だし、ランクの昇格もあるかな」
「うむっ!」
ナイルは、ユリアにその主を伝え、来た道を引き返していった。
安堵からなのか、来るときよりも一行の足取りは軽い。口数は増え、和やかな雰囲気で地下道を歩いていく。
――最初の異変に気付いたのは、副リーダーのアイラだった。「ちょっと待って」と一行の足を止めさせる。
「今、なにか聞えなかった?」
続いて、ウィザードのイーレも異変を察知した。フンフンと鼻を鳴らし、辺りの臭いを嗅ぐ。
「臭いが増えた。私たちのものじゃない」
ナイルは考えた。イーレの鼻は確かだ、何かがいるのは間違いない。
しかしここは、けして広くはない地下道。前後も一本道で薄暗い以外は見通しは良い。誰かがいたとして、隠れるような場所どこにもない。
背筋がゾクッとした。
まさか幽霊でもいるんじゃないだろうな。ナイルは自分のバカげた思考を嘲笑する。
しかし、こめかみから滴る汗は何かを確実に警戒していた。
沈黙が続く中、イーレが叫ぶ。
「ユリア様、うしろ!」
その声に全員がユリアの方を向く。
「な、なんだこいつ!」ナイルは驚きの声を漏らす。ユリアの影から不気味な怪人が顔を覗かせていた。
その怪人は陰から這い出して来ると、ユリアに向けて襲い掛かろうとする。
地下道にユリアとフローラの悲鳴が響き渡った。間一髪のところで、ナイルの剣が怪人に届き、斬撃を喰らわせる。
怪人は奇声を上げ、また影へと潜って行った。
「イーレ!うしろ!」
アイラの声が響き渡り、今度はイーレの影から怪人が這い出した。
「うおおおおおおおっ!!!!」
巨漢のモントンが盾で突進し、怪人を吹き飛ばす。3年ローンで買った自慢の大型ミスリルシールドだ。
気づけばナイルたち囲まれていた。一行の影から、怪人たちが這い出して来ていた。
ナイルたちはユリアたちを囲むように陣形を取った。
「五体か、まだ隠れてねーだろうな!」
怪人たちは不気味な動きでナイルたちににじり寄ってくる。
「ナイル、どうする?」アイラが隣に来て尋ねと
「一匹残らずぶった斬るまでよ!!」とナイルは剣をかざす。
「私がやる、下がって」
イーレが杖を構えている。
「多分あいつらの属性は闇。光魔法なら、苦手じゃない」
「よし、任せたぞ、イーレ!」
「光の女神よ、その加護をもって我が矛とならん。浄化の光よ、その輝きをもって闇を祓え!」
突き出した杖の先から白い魔法陣が展開され、その光で地下道が昼の地上ように照らし出されていく。
「ライトニングレイ」
まばゆい光を発しながら、魔法陣から大きな光線が発射される。
その光線は、地下通路一帯に広がり、怪人たちを消滅させていった。
光が落ち着くと、イーレは「フゥ……」とため息をついた。
パーティの皆がイーレの元に集まり、勝利を喜んでいる。
ナイルはイーレの肩にガシリと手を回し「さすがだぜ!イーレ!」と声をかけた。
「魔力半分くらい使っちゃった。疲れた。 それよりナイル離れて。ウザい。臭い」
「きゃああああ――――っ!!!!」
地下道にユリアの絶叫が響き渡る。喜びもつかの間、またもや一行に緊張が走った。
油断した!ナイルは自分の軽薄さに自分を殴り付けたい衝動にかられた。
絶対に死守しなければならなかったユリアが、両目から血を流し倒れていく。
銀郎のパーティは、取り返しのつかない失態に固まっていた。
「ママ! ママぁーーーー!!!!」
フローラの悲痛な叫びが響き渡る。
ユリアは目に深い傷を負い、気を失っている。
――その時。
「カ、カフッ」
声の先に銀狼の三人が目をやる。そこには……
帯状に伸びてきた何かが、腹部に突き刺さったイーレの姿があった。イーレの杖が床に転がり落ちる。
「イーレェ――――――――ッ!!!!!!」
ナイルの声が地下道にこだまする。
イーレは、口と鼻から大量の血をドロリと流し、帯が抜かれると同時に倒れ込んだ。
「イーレ!! イーレェ!!!!」
駆け寄ったアイラが、必死にイーレの腹部を両手で抑え叫んでいた。手は、大量の漏れ出た血液で血まみれになっている。
「ポーション!! みんなのポーションを持ってきて!!早く!!」
「モントンはユリア様にポーションを!!俺のをイーレに持って行く!!」
「うむ! 了解した!」
ナイルはアイラの元へ急いで駆け付け腹部にポーションをかける。
アイラも自分のポーションを取り出し、腹部へとかけた。
――な、治らない…… 二つのポーションをかけたはずのイーレの傷は、ほとんど回復していない。
「どうして…… どうして治らないの!!!!」
アイラが叫ぶと、奥から誰かの歩いてくる足音が聞こえてくる。
「だ、誰だ!! 新手か!!!!」
ナイルが剣を構えると、その剣は帯の鞭のようなものではじかれ、壁に突き刺さった。
「くっ!!」
「その傷はポーションじゃ治らない。 刺した時に内臓をかき回してグチャグチャにしたから」
そこには、長い髪を腰まで伸ばした黒髪の女が立っていた。
映像を眺めていたシュバールツは焦燥していた。
一瞬で5000以上もの魔兵を消滅させた、セレイナの一撃はそれほどまでに脅威だった。
「それにあの男はなんだ!まるで魔力が尽きる気配がない」
映像には、ファイア・バレットを無尽蔵に撃ちまくっている凛人の姿が映し出されている。
「クソッ!キャンディ・メイとエディアノイにも手を焼いているというのに!……あわよくばどちらかでも殺せればと考えていたが…… 何なのだあいつらは!!」
片眼鏡の男がワインボトルを持ち歩いてきた。相変わらず、シュバールツに対しては冷ややかな視線をこの男は送っている。どこか軽蔑をしているようにも見えるその視線に、シュバールツは映像に夢中で気づいていない様子だ。
「シュバールツ様。これは我々にとって致命的な大損害でございます。ウォルボレン様にどう説明を?」
「黙れっ!!今あやつの名前を出すでない!!」
「これは、失礼をいたしました」
シュバールツは男から乱暴にワインボトルを取り上げると、ボトルのままワインを一気に口の中へと運んだ。口の横からワインが滴り落ちるのも気にせず、やけを起こしたように飲み干すと、テーブルの上に叩き付けるように置いた。
「……まだだ、ユリアさえ亡き者にできれば、我々はまた栄華を取り戻すチャンスをつかめる。この戦争はそのための陽動でもあったのだからな」
シュバールツはニチャッと不敵な笑みを浮かべた。
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「ユリア様、フローラ様。足元に気を付けてくださいよ」
「はい、大丈夫です」
ここはエブンズダール大聖堂の地下通路。戦況が非常に不利だという連絡を受けて
ユリアたちは、脱出するべく地下へと避難していた。
警護には、ナイル率いるAランクチーム『銀狼』が付いていた。スナッシュらSランクの稲妻の騎士は、あの一件以来姿を見せていなかったため、ダンジョンの経験もありパーティのバランスの取れた、ナイルたちをルーガスは起用した。
「しかし、戦況がヤバいとなると、この街も落とされちまうかもな。クソ! エレオナ……」
「ギルド長も他の冒険者も大勢ついてるし、私たちが戻るまではきっと無事よ、ナイル」
「ああ……そうだな」
ナイルたちは、ウィザードのイーレが出している魔法の光を頼りに、薄暗い地下道を進んでいた。
「パパとお姉ちゃん、大丈夫なの?」
心配そうにフローラがユリアに尋ねる。
「パパとお姉ちゃんはとっても強いのよ、魔族をやっつけてちゃんと戻ってくるわ」
その時、通信用の水晶が音を発し光出した。ナイルはすぐに応答した。
「どうした!」
「こちら国境師団、戦況は敵軍の殲滅間近!ユリア様とフローラ様は無事か?」
「ほ、本当か!? 二人とも無事だ!」
その通信を聞き、その場にいた全員から安堵の息が漏れる。
「まだ気を抜かず護衛を頼む」
「了解!」
ユリアとフローラが手を合わせ、笑顔で顔を見合わせる。
街の陥落を覚悟していたナイル一行にとって、これ以上ない嬉しい知らせだった。
「よし、もう大丈夫そうだ。引き返して大聖堂で待機するか」
「はぁ。 無事に任務を終えられそうね」
「ウン。ウン。 ギルド長からの直々の依頼だし、ランクの昇格もあるかな」
「うむっ!」
ナイルは、ユリアにその主を伝え、来た道を引き返していった。
安堵からなのか、来るときよりも一行の足取りは軽い。口数は増え、和やかな雰囲気で地下道を歩いていく。
――最初の異変に気付いたのは、副リーダーのアイラだった。「ちょっと待って」と一行の足を止めさせる。
「今、なにか聞えなかった?」
続いて、ウィザードのイーレも異変を察知した。フンフンと鼻を鳴らし、辺りの臭いを嗅ぐ。
「臭いが増えた。私たちのものじゃない」
ナイルは考えた。イーレの鼻は確かだ、何かがいるのは間違いない。
しかしここは、けして広くはない地下道。前後も一本道で薄暗い以外は見通しは良い。誰かがいたとして、隠れるような場所どこにもない。
背筋がゾクッとした。
まさか幽霊でもいるんじゃないだろうな。ナイルは自分のバカげた思考を嘲笑する。
しかし、こめかみから滴る汗は何かを確実に警戒していた。
沈黙が続く中、イーレが叫ぶ。
「ユリア様、うしろ!」
その声に全員がユリアの方を向く。
「な、なんだこいつ!」ナイルは驚きの声を漏らす。ユリアの影から不気味な怪人が顔を覗かせていた。
その怪人は陰から這い出して来ると、ユリアに向けて襲い掛かろうとする。
地下道にユリアとフローラの悲鳴が響き渡った。間一髪のところで、ナイルの剣が怪人に届き、斬撃を喰らわせる。
怪人は奇声を上げ、また影へと潜って行った。
「イーレ!うしろ!」
アイラの声が響き渡り、今度はイーレの影から怪人が這い出した。
「うおおおおおおおっ!!!!」
巨漢のモントンが盾で突進し、怪人を吹き飛ばす。3年ローンで買った自慢の大型ミスリルシールドだ。
気づけばナイルたち囲まれていた。一行の影から、怪人たちが這い出して来ていた。
ナイルたちはユリアたちを囲むように陣形を取った。
「五体か、まだ隠れてねーだろうな!」
怪人たちは不気味な動きでナイルたちににじり寄ってくる。
「ナイル、どうする?」アイラが隣に来て尋ねと
「一匹残らずぶった斬るまでよ!!」とナイルは剣をかざす。
「私がやる、下がって」
イーレが杖を構えている。
「多分あいつらの属性は闇。光魔法なら、苦手じゃない」
「よし、任せたぞ、イーレ!」
「光の女神よ、その加護をもって我が矛とならん。浄化の光よ、その輝きをもって闇を祓え!」
突き出した杖の先から白い魔法陣が展開され、その光で地下道が昼の地上ように照らし出されていく。
「ライトニングレイ」
まばゆい光を発しながら、魔法陣から大きな光線が発射される。
その光線は、地下通路一帯に広がり、怪人たちを消滅させていった。
光が落ち着くと、イーレは「フゥ……」とため息をついた。
パーティの皆がイーレの元に集まり、勝利を喜んでいる。
ナイルはイーレの肩にガシリと手を回し「さすがだぜ!イーレ!」と声をかけた。
「魔力半分くらい使っちゃった。疲れた。 それよりナイル離れて。ウザい。臭い」
「きゃああああ――――っ!!!!」
地下道にユリアの絶叫が響き渡る。喜びもつかの間、またもや一行に緊張が走った。
油断した!ナイルは自分の軽薄さに自分を殴り付けたい衝動にかられた。
絶対に死守しなければならなかったユリアが、両目から血を流し倒れていく。
銀郎のパーティは、取り返しのつかない失態に固まっていた。
「ママ! ママぁーーーー!!!!」
フローラの悲痛な叫びが響き渡る。
ユリアは目に深い傷を負い、気を失っている。
――その時。
「カ、カフッ」
声の先に銀狼の三人が目をやる。そこには……
帯状に伸びてきた何かが、腹部に突き刺さったイーレの姿があった。イーレの杖が床に転がり落ちる。
「イーレェ――――――――ッ!!!!!!」
ナイルの声が地下道にこだまする。
イーレは、口と鼻から大量の血をドロリと流し、帯が抜かれると同時に倒れ込んだ。
「イーレ!! イーレェ!!!!」
駆け寄ったアイラが、必死にイーレの腹部を両手で抑え叫んでいた。手は、大量の漏れ出た血液で血まみれになっている。
「ポーション!! みんなのポーションを持ってきて!!早く!!」
「モントンはユリア様にポーションを!!俺のをイーレに持って行く!!」
「うむ! 了解した!」
ナイルはアイラの元へ急いで駆け付け腹部にポーションをかける。
アイラも自分のポーションを取り出し、腹部へとかけた。
――な、治らない…… 二つのポーションをかけたはずのイーレの傷は、ほとんど回復していない。
「どうして…… どうして治らないの!!!!」
アイラが叫ぶと、奥から誰かの歩いてくる足音が聞こえてくる。
「だ、誰だ!! 新手か!!!!」
ナイルが剣を構えると、その剣は帯の鞭のようなものではじかれ、壁に突き刺さった。
「くっ!!」
「その傷はポーションじゃ治らない。 刺した時に内臓をかき回してグチャグチャにしたから」
そこには、長い髪を腰まで伸ばした黒髪の女が立っていた。
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