R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット

文字の大きさ
17 / 42
第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第17話 暗渠のセルド

しおりを挟む
「その女はもうじき死ぬだろう。 残念だ」

 女は冷酷に言い放った。ナイルの全身が怒りで震える。
 それに女の言っていることは正しい。重度の内臓損傷と、大量の出血。イーレの顔は生気を失っていて、呼気も弱くなっている。

「残念だ? ……ふざけんなテメ――――!!!!やったのはテメ―だろうが!!!!」
「ナイル!ユリア様の傷も治らない!」

 ユリアも重症だった。目は横一直線に深く切り裂かれている。

「その女の傷は人間に治癒はできない。傷に闇属性の高濃度の魔素を大量に流し込んである。人間に闇属性の使い手は今のところ確認されていないし、光属性でも干渉できない」

 ナイルはこの依頼を受けたことを激しく後悔していた。ギルド長からの指名に浮かれて、何も考えずに引き受けてしまった。この話が出た時イーレは、エレオナの所にいてあげたほうがいいと反対していた。
 それを無理に、ランク昇格もあり得るなど口八丁で丸め込んで押し通した。


 全部俺の責任だ……


「お前は誰だ。 魔将か?」
「将などと一緒にされるとは。少し不愉快だ」

 女は美しく長い髪を手でかき上げると、頭に付けていた大きなリボンを解き、それを鞭のようにしならせて床を叩いた。
 地面がひび割れ、銃を発砲したような衝撃音が辺り一面に響き渡る。


「私は暗渠あんきょのセルド。エビルロードと呼ばれている王直属の五柱の一人だ」


「なるほどね……」

 そう言うと、ナイルは下を向きながら肩を震わせて笑った。

「……領主様の家族を街の外に逃がす、それだけだったはずなのに。魔族の大将格のご登場とは。へへ……ほんと、ついてねぇ」

「どうした、恐怖で気でも触れたか? 安心しろ。私は無駄な殺しは好きではない。エディアノイの妻も、殺す気ならさっきそうしている。お前たちも逃げるなら勝手にしろ。あの女の目を奪った時点で、私の目的は終わっている」

 イーレの腹部を抑えながら、涙で顔をぐしゃぐしゃにしたアイラがセルドを睨みつける。

「ふ、ふざけないで…… じゃあ、イーレになんでこんなことしたのよ!!魔族!!」
「そのウィザードは、私のペットのシャドウマヌーバーたちを殺したわ。そして仮に戦いになった場合、そのウィザードが邪魔だった。それだけ、私にとって無駄な殺しではない。許してほしい」

「許して……ほしいですって……!? この人殺しの悪魔めっ!!!!」
「わからない。お前たち人間もこの200年、同族同士で醜い殺し合いをしているではないか。私たちとどこが違うのだ?」


「だまれだまれだまれだまれっ!! だまれ――――っ!!!!」

 アイラは自分の腰に手を回す。

「や、やめろ!! アイラ!!!!」

 ナイルの制止も聞かず、アイラは腰に携えていた短刀を、セルドに向けて投げつけた。
 短刀はセルドの心臓に向かい、一直線に飛んでいく。しかし、セルドは飛んでくる短刀を冷静な目で見つめ、避ける動作すら取る気配がなかった。

 アイラの短刀は、セルドの胸に深く突き刺さった。 
 ……しかし、セルドは顔色一つ変えず、それを抜き取った。刺さった個所は、まるで泥が流れこむようにズブズブと元に戻っていく。

「私に、物理攻撃の類は効果はない」

 残酷な宣告が告げられた。
 銀狼の残り三人は全員剣士。セルドとの相性は最悪だった。


 辺りの空気が一変した。セルドから威圧とも取れる強い魔力が漏れ出てくる。
 ビリビリとした鋭い空気がナイルたちを突き刺した。

 ナイルとアイラは、その魔力に威圧され、目を見開き呼吸を荒くしている。


 そして、さらに追い打ちをかける言葉が投げかけられる。

「今の行為は、私を殺す気で行ったものだな。そうなると、私もその女を殺さなければならない意味が出来たことになるが……」

「待ってくれっ!!!!」

 セルドの言葉を遮り、ナイルの声が地下道に響き渡った。
 そして、ナイルは壁に突き刺さった剣を抜くと、セルドの方へ数歩歩み寄り膝をついた。

「どうか、ここは俺との一騎打ちで終わりにしてほしい!それで……アイラを見逃してくれないか!」

 ナイルは魔族に頭を下げた。もはやAランク冒険者としてのプライドも何もない。自分の責任でこれ以上仲間を失いたくなかった。
 一人でも助けたい。その一心だった。

「だ、だめよ、ナイル! エレオナは、エレオナはどうするのよ!!」
「これは……全部俺の責任だ。 リーダーとしてケジメを取る。エレオナには……お前から謝っておいてくれ。 ……そして、もっといい男を見つけろって伝えてくれや」

 ナイルは、いつも通りのいたずらっ子のような、屈託のない笑顔でアイラに笑いかけた。

「そ、そんなこと……言えるはず、ないじゃない……」

 アイラの涙が湿った地下道の地面に零れ落ちる。
 気を失っているユリアとフローラの盾になっていたモントンも、重い口を開いた。

「ナイル、俺も残ろう。お前だけの責任ではない。リーダーの決断は、俺の決断でもある」
「いや、モントンはユリア様とイーレを地上へ運んで行ってくれ。アイラ一人では無理だ」
「ナイル……」

 ナイルは剣を持ち立ち上がった。
 仲間を守る決意と、死ぬことへの覚悟。両方が入り混じった、諦めとも違うどこか落ち着いた表情をしていた。

 モントンはユリアとイーレを担ぎ、アイラに「男の覚悟を無駄にするな」と言い聞かせ、地上へと歩き出した。

「いい目だ。お前の覚悟をもって、その女の行為を不問にしよう。いくぞ?」
「感謝する」

 ナイルは剣を握り締め、決死の表情で構えた。



 ――――この出来事より、遡ること30分ほど前。
 国境での戦闘は収束を迎えつつあった。魔族兵はほぼ壊滅状態にあり、生き残ったわずかな兵も逃走を始めている。

 「逃げている兵を追って殲滅しますか?」

 兵士の言葉に、師団長は「これ以上無駄な戦闘は必要ない。我々の勝利だ!」と剣と国旗を掲げた。
 兵士たちは狂喜乱舞だ。肩を組んで泣いてる者たちもいる。

「ふい~。やっと終わったね」
 俺はセレイナの元へ戻ってきた。セレイナは、相変わらず聖域を展開し、追加で怪我を負った負傷者たちを治療している。

「おかえりさない、凛人さん。お怪我はありませんか?」
「ただいま、セレイナ。うん大丈夫だよ、っていうか怪我しても治っちゃうからね」

「リント、大活躍だったじゃない。あの炎の弾幕はちょっとした兵器クラスよ」

 メイさんが笑いながら戻ってきた。それにしてもあの暴れっぷりは圧巻だった。
 将を倒して戻ってきたメイさんは、敵陣の渦中に躊躇なく突っ込み、大勢の敵兵が華麗に宙を舞いまくっていた。

 さながら魔族兵の噴水だなと思って俺は見ていた。

 そして当然のように無傷である。肉体のみを武器にした恐ろしいまでのタンク性能と、あの体躯からは考えられないほどのスピード。人間とは思えないほどの破壊力。彼女に傷を付けられるやつがいるのだろうか?と思う。

 続いて、エディアノイさんがこちらへ歩いてきた。手には見慣れない剣を持っている。
 エディアノイさんは、戻ってくるなりセレイナの前で跪いた。

「セレイナ様、あなたのお力添えで、我々は窮地を脱することが出来ました。なんと感謝を申し上げていいか」

「顔を上げてください。私は凛人さんの望むままに動いただけです。感謝なら凛人さんにしてください」


 ……え、俺!? 意表を突かれ過ぎて、エディアノイさんとセレイナの前でとんでもなくマヌケな顔をしてしまった……


 ま、まあ確かに俺も、たぶん数百の敵はやっつけたけど、不利だった戦況をひっくり返したのも、大勢の怪我人を治癒したのもセレイナだ。セレイナは凄いし誇らしい。

 しかし…… ニコニコと純粋な目でこっちを見ているセレイナに、俺は何も言えなかった。


「リント君。君の活躍も素晴らしかった、ありがとう」
「い、いえいえ!俺なんか、まだ自分の力もうまくコントロールできてない未熟者ですし」
「そう謙遜しないでくれ、君の戦いは見ていた。あの尽きることのない膨大なマナと魔力、是非うちのウィザード部隊……いや、宮廷魔導部隊にほしいくらいだ」


 その時、一人の兵士が俺たちの元へと走ってきた。手にはあの水晶の魔導具を持っている。
 なにやら急いでいる様子だ。

 俺は、何故か嫌な胸騒ぎがした。


「エディアノイ様!街の警備兵から連絡が!」
「何事だ!?」
「大聖堂の司祭と、修道士数人が何者かに深手を負わされ、重体だとのことです!」
「なにっ!? だ、大聖堂だと!!?」
「パパ! 大聖堂にはママとフローラが!」

 エディアノイは、額を手で押さえしゃがみこんだ。

「クソ!! 敵の対処に追われて、目が行き届いていなかった!!魔族の隠密部隊か!? なぜピンポイントで大聖堂へ……」
「ママの目じゃないかしら。魔族は何度もこの国への侵入を試みていた。ママの目は障害だったんだと思うわ。……それにしても何故ママたちの居場所が」

「すぐに馬を走らせよう。ユリアたちには、ルーガスが手配したAランクパーティが付いている。まだ間に合うかもしれん」
「でも、ここからじゃ1時間ちょっとはかかるわ」

 治療を終えたセレイナがメイとエディアノイの元へと歩み寄った。

「私たちが行きます」
「セレイナ……さん」

 メイが突然の申し出に驚いている。

「私の飛行魔法なら、全力で飛べば10分ほどで街へと着きます。凛人さん、よろしいですか?」
「ああ! 行こう、セレイナ!」

「あなたたち……」
「セレイナ様、感謝いたします。どうか……妻と娘を……」

 エディアノイにはいつもの威厳はなく、憔悴しきっていた。

 セレイナは街の方角を見つめた。額の紋様が薄く光り出す。

「街の中央、その下の方から六体の魔力反応を感じます。その一つは強い魔力を有しているようです」
「強い魔力?将かしら……」
「いえ、先ほどここにいた者たちよりも、格段に強い魔力です」
「将より上ですって!? まさか」

「急ごう、セレイナ」

 そう言うと、セレイナは背に掴まるように俺に言ってきた。

「頼んだわよ!あなたたち!」

 その言葉にうなずいた俺たちは、エブンズダールへと向かい飛び立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々
ファンタジー
ソドムの少年から平安武士、さらに日本兵から二十一世紀の男子高校生へ。 一つ一つの人生は短かった。 しかし幸か不幸か、今まで自分がどんな人生を歩んできたのかは覚えている。 だからこそ今度こそは長生きして、生きている実感と、生きる希望を持ちたい。 そんな想いを胸に、青年は五度目の命にして今までの四回とは別の世界に転生した。 早死にの男が、今まで死んできた世界とは違う場所で、今度こそ生き方を見つける物語。 本作は、「小説家になろう」、「カクヨム」、にも投稿しております。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...