R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第18話 地下道での奇跡

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 セレイナは俺を背に乗せて舞い上がり、街へと向けて飛んでいく。

「凛人さん、速度を上げるのでしっかりと掴まっていてください」
「わかった!」

 俺は落ちないように、しっかりとセレイナにしがみついた。

 俺を背に乗せたセレイナは、グングンと速度を上げていく。
 地上にいる動物らしき物――あれは魔物の群れかな? それらがあっという間に後方に流れ、豆粒になっていく。

 セレイナの速度はさらに上がっていくが、不思議と風圧はあまり感じない。
 そして周りの空気が暖かい。多分、俺たちを包んでいる光の繭のようなものの影響だろう。



――ものの10分も経たないうちに、俺たちはエブンズダールへと帰ってきた。
 街の中心に大きな建物が見える。多分、あれが大聖堂だ。到着すると、セレイナは入り口の前にふわりと着地した。

 壮観な光景だ。地球では、数百年前の古めいた世界遺産としてしか目にすることが出来ないような産物が、まだそこまで古くはない、真新しい状態で俺の目前に建っていた。俺は思わず息を呑んだ。

 おっと、感動している場合ではない。「行こう」とセレイナに声をかけた俺は、大聖堂の扉を開けた。

 内部も非常に凝った作りだった。内部を彩る美しいステンドグラスには、神なのか歴代の王なのか、様々な人物が描かれている。

 奥の方に目をやると、人が何人か倒れているのが見える。
 俺たちは急いでその場に駆け寄った。

 「大丈夫ですか!!」

 俺は状況を確認した。
 ここに4人と奥に1人。5人が倒れている。1人だけ、他の4人と違う服装をしたこの人が司祭だろう。
 幸いにも、まだ5人とも息があった。生きている。

 一人がわずかに動いた。俺は、しっかりしてください!とその男性に声をかけた。
 男性は口をパクパクさせながら言葉を発した。

「ど、どうか……司祭様を……助けて……差し上げて……くだ……」
「あまり喋らないで! セレイナ!」
「はい、この方たちを助けるのですね? 死んでいなければなんとかなります。凛人さんは少し離れていてください」

 セレイナから4人を包む程度の光のドームが展開される。

「セイクリッド・ヒール」

 白金の光の柱が立ち上る。思わず俺はその光景に見惚れてしまった。

「凛人さんはあちらの方をお願いします」

 突然のセレイナの言葉に、美しさに見入っていた俺は驚き、そして少し戸惑った。まだ俺の回復魔法の精度は完璧ではない。
 大丈夫だろうか……

「凛人さんなら大丈夫です」

 俺はセレイナの言葉と笑顔に勇気をもらった。なぜか彼女の笑顔は俺を落ち着かせるだけじゃなく、奮い立たせてくれもする。これもセレイナの力なんだろうか。

 俺は少し離れた所に倒れている人のもとへ駆け寄り、傷の具合を確かめた。
 服が破け、背中に裂傷が見られる。刺し傷というよりは、すごく硬い、例えば鞭のようなもので打たれたような感じだ。

 集中、集中、集中、集中……
 彼に触れた俺は呼吸を整え、深く集中した。回復魔法の失敗で彼を死なせるわけにはいかない。



 ――――あれ?
 深く集中していくと、いつも感じている空間のマナの揺らぎと、彼が同化していくような感覚を感じた。
 さらに深く集中すると、けがをしたこの人が、まるで自分の体の一部になったような錯覚にとらわれていた。

 ――いや、錯覚じゃない。彼を構成しているマナは今、俺の中にいる。
 くすんでいた一部のマナも、正常な色へと戻っていく。

 何かを終えたような感覚を覚えた俺は、彼からそっと手を離した。

 彼の傷は、完全に治っていた。俺は回復魔法なんて使ってはいないはずなのに。

「……な、治ってる」

「成功したんですね、凛人さん」

 治療を終えたセレイナが歩いてきた。

「う、うん。成功したんだと……思う」

 けがが癒え、向こうの4人は起き上がった。司祭らしき男性は「わ、私たちはいったい……」と状況を飲み込めていない様子だったが、先ほど声を発した男性が俺たちの方を指さし、経緯を説明している。

 4人はこちらへと歩いてきて、跪いた。

「あ、あなたはもしや、聖女様では」

 司祭がセレイナを見上げながら言った。

「私はセレイナです」

 笑顔で答えるセレイナに、司祭たちは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
 おいおいセレイナ…… その返答じゃ、そりゃ意味が分からないしそんな顔にもなるよ。名前を聞かれたんじゃないんだから。

「せ、セレイナ……様ですか。我々の命を救って頂き、誠に感謝いたします」

 4人は深々と頭を下げた。
 すると、離れた所にいた彼が起き上がり、慌てたように小走りでこちらへと来た。そして彼は俺の前に跪き、変なことを口走る。

「私めなどを助けて頂き、恐悦至極に存じます。 ……神よ!」

 ん……? 神……?

 俺は辺りをキョロキョロと見回したが、彼は俺のことを強いまなざしで見つめている。
 ……お、俺のことっ!?

「ゼペタよ、それはどういうことだ。説明しなさい」

 司祭が彼に尋ねる。
 彼は興奮して話し始めた。

「私は怪我をして動けませんでしたが意識があったんです。そして、このお方が私に触れた瞬間、私の意識はこのお方の中へと吸い込まれました。 ……そこで見たんです!!大海に波打つ大波のように溢れかえるマナの本流を!! マナの大海を漂い、私の生物としての本能が感じました……大地の強さ、大きさ、温かみを。私などにはどう形容して良いのかわかりません。しかし私は確かに!あの一瞬!この星と同化していたんです!!間違いありません!!このお方は神の化身なのです!!」

「おお、なんということだ!それは本当なのかゼペタよ!」
「間違いではありません。私は……感動で、これ以上どう言葉を紡いでいいのかわかりません……」
「……か、神と聖女が我々の元に。……我々の日々の祈りは通じたのか」

 あ、あの……盛り上がってるところ申し訳ないんですが……
 確かにセレイナは聖女どころか、女神にさえ見えても仕方がない。 でも俺だぜ!? 俺が神に見えるわけないでしょ!セレイナと一緒にいることでの相乗効果がそうさせてるのか!?

 その時、祭壇の方から女性の叫び声が聞こえてきた。

「あそこにも人が!?」

 司祭が言うには、あそこには地下道へ通じる階段があるという。ってことは、声は地下道からか。

 俺とセレイナは、祭壇へと向かった。
 裏に回ると、奥の床板が外されていて、階段がむき出しになっている。
 地下道に耳を澄ましてみる。確かに女性の嗚咽のようなものが聞こえてくる。

 声はすぐ近くだ。俺とセレイナは階段を下りて行った。地下道は、高さが多分3メートルほどで、幅は4メートルほどだと思う。数人が並んで歩けるくらいの幅はあった。

 セレイナが灯す明かりを頼りに、俺たちは進んでいった。
 1分ほど歩くと、奥に松明たいまつのような揺らめく明かりが見えた。
 女性の声は激しさを増していく。


「そんな……噓でしょ……? ねえ、イーレ!息をしてよ!!お願いだから!! イーレ!!!! 上に行けば司祭様たちがいるの!!治してもらえるの!! ……ダメだってば」

 そこにいたのは、確か銀狼の3人だと思う。大きな男性が女性を抱え、もう一人の女性が抱えられている女性にすがりついている。

 そして、その後ろには泣いているフローラに支えられながら、かろうじて歩いているユリア様の姿があった。
 ユリア様は目に大けがを負っている。地下で何があったのか。

「どうしたんですか!? ユリア様もその目は!」

 俺が声をかけると、泣いていた女性は俺の姿を見るなり、目を見開いた。
 女性は鬼気迫る表情で走り寄ってくる。

「あ、あなたリント君よね!? 回復魔法使えるんでしょ!? お願い!!イーレを助けて!!」

 イーレ? あの魔女帽子を被った小さい子か。
 女性のその声と表情に、俺は一刻を争う状況なんだと感じた。

 やはり、エディアノイさんの妻であるユリア様の状況も気になったが、ユリア様は彼女の方を優先してと言ってきた。
 決して浅い傷ではなさそうだが、ユリア様の方は命に別状はなさそうな感じだ。

 大きな男性がこちらへ駆け寄ってくる。
 腕の中には、腹から大量の血を流したあの小さい魔女っ子がいた。

 顔からはすっかりと血の気が引き、俺からはすでに死んでいるようにも見えた。

「お願い!! なんでもするから!!!!」

 女性は必死の形相で俺にしがみついてくる。
 セレイナは、そんな女性に冷静に語った。

「彼女はもう手遅れです」
「そ……そんな…… お願いよ……お願い」

「彼女から霧散したマナが辺りに漂っています。これは、生物が死ぬときにしか起こらない現象なんです。最上位のアストラル・ヒールでも治せないでしょう。もう少し早ければなんとかなったかもしれませんが……」

 うああぁ――――っ!!!! と女性が絶叫して泣き崩れた。男性も、顔を背け悔しげな表情で涙を流している。

 俺は、イーレから漏れ出て、中空を漂っているマナを見ていた。マナはどこか、彷徨っているようにも見えた。
 自分が死ぬことに対して、心残りや迷いがあるんだなと俺は感じた。


 ――いや待てよ!? もしかしたら、さっきのあれで何とかなるかもしれない。
 俺は咄嗟に思った。
 マナはまだ彼女の周りを彷徨っている。そのマナを揺らぎに感じ取れれば……

「ねえセレイナ。死んだあとは、その人のマナはどうなるの?」
「死した後は、消えた魂と共にマナも消滅します」

 やっぱり! じゃあまだ彼女は完全に死んではいないってことだ!俺が何とか出来るかもしれない!

 俺は巨漢の男性に、彼女を地面に降ろすように伝えた。
 そして俺は、そっと彼女の身体に手を添えた。

「なんとか……なるの!?」

 彼女は、涙でくしゃくしゃになった顔を上げた。

 彼女の問いには答えず、俺は集中した。
 地下道内を漂っているイーレのマナ。それと、揺らぎを強く感じ取る。
 地下だからか、揺らぎが地上より濃く見える。

 イーレのマナと大地のマナの揺らぎを同調させ、それを自分の一部と捉える。

 よし、捉えた! その瞬間、よほど強い思いが残っていたのか、彼女が地下道で体験した記憶が俺の中に流れ込んできた。

 異形の怪人との戦い、そして女の影。 そこで彼女の記憶は途切れた。おそらくその直後に致命傷を負ったのだろう。

 さっきより時間がかかっている気がする。傷が深いからか?でも、なんとかなりそうな手応えを俺は感じていた。


 身体が熱い。そして視界に淡い光が揺らいでいる。
 俺の中のマナの粒子が、まるで生物のように、取り込んだイーレのマナに絡みつき飲み込んでいく。

 そして、その粒子は役目を終えたかのように、泡のように弾けて消えていった。




 ――――さっき感じたのと同じだ。多分、治癒が完了した。

 俺はイーレとのマナの繋がりを切るため、そっと手を離した。

「イーレは! イーレはどうなったの!?」

 彼女が四つん這いでこちらへと近づいてきた。
 流血は止まっている。大量の血で患部は見えないが、おそらく塞がっているはずだ。


 スーハ―…… スーハ―……


「イーレ!? い、息してる…… 助かったのね…… イーレェェ…… うわあああああ――!!!!」

 彼女は、息を吹き返したイーレを抱きしめ、泣いていた。
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