R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット

文字の大きさ
19 / 42
第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第19話 凛人、覚醒の片鱗

しおりを挟む
 地下道には、彼女の泣き続ける声が響いていた。
 パーティの二人は、固まってイーレの復活を喜んでいる。 ……ん? 三人?
 そういえば、ナイルの姿が見えない。彼は別任務なのだろうか。

「すごいです凛人さん!アストラル・ヒールでも無理な怪我を治癒するなんて!」
「いやぁ……なんかコツを掴んじゃってさ。ハハハ」

 ってそんな場合じゃない!ユリア様だ!
 ユリア様も大怪我をしている。早く見て差し上げないと。

 二人の元へ俺たちは駆け付けた。セレイナは、彼女の傷を見て神妙な顔をしている。

「どうしたの?セレイナ」
「この傷には、闇属性の魔力が大量に混ぜ込まれています。私のヒールでは……」

 じゃあ、俺のはどうだろう。もしかしたら……
 そう思って俺流の治癒を試そうとしたが、黒い魔力に阻まれ、マナを同化しようとしても弾かれてしまう。

「クソ!だめだ!」

「ママの目…… 治らないの?」
 フローラ様が不安そうに尋ねてきた。
 こんな時、どう気の利いた言葉をかけていいのか俺にはわからなかった。ただ一言。

「絶対に治すから!」

 と俺は答えた。根拠はない、ただ、そう答えるが精一杯だった。
 フローラ様は薄く微笑んでくれた。その返答は、その場に限っては間違いではなかったと思いたい。

 落ち着いた銀狼の二人がこちらに歩いてきた。巨漢の男性はイーレを抱きかかえている。まだ目を覚ましてはいないようだ。

「リント君、本当にありがとう。この恩はいつかきっと返すわ、何があっても」
「いえ、これも何かの縁ですから、気にしないでください」
「そんなわけにはいかないわ! あ、そういえばギルドでも自己紹介してなかったわね。私はアイラ」
「モントンだ。本当に感謝している、ありがとう」

 二人が言うには、俺はイーレにただ触れていただけに見えたらしい。
 周りからはそう見えるのか。確かにセレイナが使うヒールは、光が出たり神々しいもんな。
 俺のは……性能の割に見た目はちょっと地味なのかもしれない。

「そういえば、ナイルさんの姿が見えないんですが」

 アイラは深刻な顔つきに戻り、経緯を話してくれた。

「ナイルは、自分を身代わりに、私たちを逃がしてくれたの……」
「じゃあナイルさんは!?」
「ええ…… 魔族の女と戦っているはずよ」
「じゃ、じゃあ早く戻らないと!」
「わかってる! わかってるけど…… 私たちじゃ、戻っても共倒れになるだけ…… 戻ったら、ナイルの覚悟が無駄になってしまう……」

 アイラさんは悔しそうに涙を流し、震える拳を握り締めている。本当は今すぐにでも戻りたいんだろう。

 だとしても、ナイルさんにはエレオナさんという奥さんもいる。助太刀しないわけにはいかない。

「俺が行きます!」
「だ、ダメよリント君!あなた、剣士かパグナリスト拳闘士でしょ!?あの魔族には物理攻撃は無駄なのよ……」

「大丈夫です」

 俺は空中に炎の塊を何個か出して見せた。

「俺はウィザードです。ナイルさんは俺が助けます!」

 二人は口を開けて驚いている。

「私もご一緒します。凛人さん」
「いや、セレイナはみんなを守ってあげて」
「ですが……」
「これは俺のだよ。頼むセレイナ、みんなを守ってあげてくれ」
「……わかりました。本当に……お気をつけてください。凛人さん」
「ありがとう。セレイナ」

 俺は松明たいまつを受け取り、地下道を奥に向かって走り出した。

「ウィザードなのに、スナッシュを殴り飛ばして勝ったの?……それに空中に炎だなんて」
「うむ。不思議な青年だ」

 


 ――ナイルは、セルドの鋼鉄の鞭を剣で受け続けていた。
 全身に、痛ましい切り傷が無数に刻まれている。

 しかし、セルドが全く本気でないことはわかっていた。

 あの女はただ単調に、一定のリズムで帯の鞭を打ち続けてきているだけ。
 それなのに近づくことさえできない…… まあ、近づいたとして、どうしようもないんだけどな。ナイルは自分の無力さを笑った。

 またセルドの鞭が、鋭い風切り音を鳴らし襲いかかる。なんとか剣で受け止めるが、一発一発が、岩でもぶつけられているように重い。
 ナイルの剣は、持ち主の反撃を待たずして、すでにボロボロになってきていた。
 自身も同じだ。息も切れ、無数の切り傷からの出血で、立っているのもやっとの状態だった。

「……あの意気込みからして、何か秘策でもあるのかと思って様子を見ていたが。何もないのか?Aランクと言うのはこんなにも弱いのだな」
「くっ…… クソがぁ――!!!!」

 挑発されたナイルが、決死の反撃に出る。
 しかし、セルドは鞭を振るのをやめ、無防備な状態でそれを見ている。

 ナイルの剣がセルドの身体を切り裂いた。しかし、案の定セルドは何事もないように、その場に立っていた。

 ナイルはフラフラと数歩下がると、ついに膝をつき、うなだれる様に肩で息をしていた。

「クソったれ……なんなんだよお前の身体は!」
「私の身体はだ。斬撃も打撃も、私には意味をなさない」

 そう言いながら、セルドは自分の手を身体の中にズブズブと入れて見せた。

「冥土の土産に一太刀入れさせてやったのだが。満足したか?」
「へっ……好きにしやがれ、化け物め」

 セルドの帯の鞭が生き物のように動き出し、ナイルの腹部を貫いた。




「…………誰だ?」

 セルドは俺のほうを振り向かずに尋ねてきた。

 少し遅かったか。俺が着いたのは、ナイルさんが前のめりに倒れた瞬間だった。だけど……

「お前は誰だと聞いている」

 自分の横を無言で通り過ぎる俺に、セルドはもう一度尋ねた。

 俺は松明たいまつを置くと、伏しているナイルの身体に手を触れ、立ち上がった。
 少し遅れてナイルが身体を起こす。そして、その場に胡座をかいて座った。

「お前……いったい何をした?」
「治させてもらった。知り合いには、なるべく死んでほしくないんだよ」
「……治した?」

 この世界は過酷で残酷だ。これから先、全員を救うことはできないだろう。でも、せめて手の届く範囲の命は拾い上げたい。

「お、俺は死んだんじゃなかったのか……?」

 ナイルさんは少し混乱している様子だ。致命傷を負い意識が途切れ、目覚めたら無傷の自分がいる。
 混乱しても仕方がない。

「無事でよかったです。ナイルさん」
「お、お前、リント……なのか?」

 ギルドの時と装備している鎧が違うので、声を聞くまで気づいていなかったようだ。

「あいつは俺が何とかします。下がっていてください」
「何とかって。リント!あいつは……!!」

 俺は強く地面を蹴り、飛び出していった。スピードは速い方だと自負している。
 セルドも帯を鞭のようにしならせて俺を迎え撃つ。

 セルドの鞭は予想よりも速かった。紙一重でかわしたつもりが俺にかすり、鎧の肩当てが吹き飛んだ。
 俺は拳を握り締め突進する。セルドは、またもや無防備な状態となり、俺を迎え撃つ。

 渾身の右ストレートがセルドに直撃する。セルドの腹部は弾け飛び、大きな風穴が空いた。

 俺は違和感を覚えた。スナッシュの時と違い、拳に手ごたえがない。
 セルドがにやりと笑うと、真横から意志を持ったような動きで、帯状の鞭が俺を襲う。

 何とか回避の態勢を取ったが、帯状の鞭は、俺の左腕を貫通する。

 「くっ……!!」痛みに顔を歪ませながら、俺はセルドの顔をめがけて拳を放つ。しかし、またも顔が液体のように飛散し、俺の拳は空を切るだけだった。

 一旦距離を取り、自分を落ち着かせる。

「リント!あいつには斬撃も打撃も効かねえんだ!」
「……その通りだ」

 セルドの顔がどろどろと元に戻っていく。

「鎧を着ているから剣士だと思ったが、パグナリスト拳闘士だったか。どちらにせよ無駄な事だ」

 俺は、「ふぅ……」と息を吐いた。

「なるほどね。みんなのお礼に一発殴りたかったんだけど、やっぱり無理か。あとさ……」

 俺は空間に無数の炎の玉を出した。


「俺は、パグナリストじゃない。ウィザードだ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...