R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット

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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第21話 ベルセフォネ

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「――ん、んん…… あれ……?」

 イーレは目を開けた。
 ムクりと上体を起こし、あたりをキョロキョロしている。

「イーレ!? イーレェ――!!!!」

 そばに付いていたアイラがイーレに抱き着いた。イーレは、何が起こっているのかわからず
 放心した顔をしている。

「おお!イーレ、目が覚めたか!」

 モントンもイーレの復活を喜び、うむっ、うむっ、と頷きながら泣いている。

 「どうしたの?イーレ?」

 何やら考え込んでうつむくイーレに、アイラは声をかけた。

「夢を見てた……気がする。ものすごいマナの海に、私は浮いてた。とても気持ち良くて、暖かくて、まるで……」

「神ですねっ!?」

 急にゼペタが割り込んできた。

「わぁ!! あなただれよ!」

 驚くアイラを気にもせず、ゼペタは語り出した。

「あなたも神の存在を感じたんですね!?そうですよね!?」
「うん。……よくわからないけど、もし神様がいるなら、あんな感じなのかなって……思った」

 ゼペタはくるくると回りながら、舞っている。神(と思ってる凛人)を共有できることが余程うれしいのだろう。

「神がいるなら。ではないんです!リント様こそがその神の化身なんですよー!」
「リント?」

 イーレはセルドの攻撃で貫かれたお腹に手を置いた。
「これを治してくれたのは誰?」
 アイラは「リント君よ、最上級ヒールでも治せない傷を彼が治してくれたの」とイーレに伝えた。

 イーレはお腹をさすりながら、あの時の不思議な体験のことを考えていた。
 自分が消滅していくのを、あの時確かに実感していた。上から見下ろす感じで、泣いているアイラの姿が見えて、もう会えないんだ、自分は死ぬんだ……と悲しかった。

 その時、誰かが消えていく私の手を掴んでくれて、そっちに行くなと言われているような気がした。
 そして、朦朧とした意識の中、マナの海を漂っていた私を、ずっと誰かが優しく包んでくれていた。
 すごく暖かくて、心地よくて、そこでずっと眠っていたいとさえ思えた。

「リント……様」

 イーレは、潤んで輝いた瞳にいろんな思いを巡らせて、ぽつりと呟いた。



 ――――「凛人さん」
 指を組み、祈っていたセレイナが笑顔で声に出した。

 するとすぐに、地下道の階段から凛人とナイルが姿を見せた。
 凛人はもちろん、ナイルも、どこもケガをしている様子はなく、パーティの姿を見つけると元気に手を振って見せた。

 アイラたちもその姿に目一杯の笑顔で答え、みんなで駆け寄った。
 凛人の活躍で、銀狼の四人は危機的な状況から抜け出すことが出来た。

 凛人の姿を目にしたイーレはそばに駆け寄り、思い切って声をかけるが……

「あの……リントさ……」
「凛人さん! お待ちしていました!」
「セレイナ!ただいま」

 セレイナにかき消されてしまった。

 仲のいい二人の姿に、うつむいて少し落ち込むも……

「どうしたんだよイーレ!お前良かったなぁ!本当によかった!」

 後ろからガシリと肩を組んでくるナイルにセンチな時間は一瞬でぶち壊された。
 いや、ほんとはちょっと助けられたのかも。

「ナイル。無神経、ダメ男、あっち行って」
「何怒ってんだよイーレ!銀狼の復活だぜ?もっと喜べよ!」

 皆笑顔で笑い合い、銀狼のいつも通りの光景が繰り広げられていた。



 ――俺は、セレイナと無事に帰還したことを喜び合うと、すぐにユリア様の元へと駆け付けた。
 その姿を見た銀狼のみんなも、すぐにこちらへと駆け寄ってきた。

 今回の一連の騒動は、全員が無事と言うわけにはいかなかった。ユリア様を溺愛しているエディアノイさんにどう伝えたらいいのだろう。きっとすごく悲しむに決まっている。もしかしたらナイルさんたちに怒りが向くかもしれない。

 銀狼のパーティも、護衛を任されていた自分らの不甲斐なさに、皆うつむき、ナイルは歯を食いしばっていた。

「ユリア様!俺たちが未熟なせいでこんなことになってしまって……申し訳ありませんでした!」

 ナイルが土下座をして謝罪をする。
 しかし、目の見えないユリア様は、ナイルを探すように手を伸ばし、ナイルの肩に手を触れた。

「気にしないで。あのような恐ろしい魔族が出てくるなんて、誰も思ってなかったでしょう。あなたたちのせいではないわ。あなたたちは、命を惜しまずフローラのことも守ってくれた。感謝しているわ」
「いえ!俺たちは、いや俺はAランク冒険者失格です!どんな処罰でも甘んじて受けさせて頂きます!」

 ナイルは床に頭をこすりつけた。

「ナイル、銀狼はあなただけじゃないのよ、この責任はみんなの責任。罰を受けるなら全員だわ」

 アイラの言葉にイーレとモントンもうなずいている。

 直に任命を受けていた銀狼のみんなはさぞ辛く、悔しいだろう。
 俺自身も、メイさんやエディアノイさんにどう説明したらいいのか、考えると気が重くなる。
 そんな俺の気持ちを察してか、セレイナが声をかけてきた。

「凛人さん、彼女なら多分大丈夫です。気を落とさないでください」
「え、大丈夫って?」

「お話し中申し訳ございませんリント様、我々に何かできることがございましたら何なりと」

 四人の修道士を引き連れて司祭が俺の前に膝まづいた。

「何やらお悩みのご様子でしたので」
「そうですリント様!なんなりと!なんなりとわたくし目にお申し付けください!」

 正直、この人たちに今してもらいたいことはない。っていうか今後もあるのかわからない……
 とりあえず、大丈夫なので、何かあったらその時にお願いしますとだけ伝えた。
 それでも彼らは喜び、俺に祈りをささげていた。
 正直やめてほしい…… 俺はおかしな新興宗教の教祖になるつもりはない。

 そんなことより、ユリア様の件を早く伝えないといけない。銀狼の四人にも声をかけ、俺たちはメイさんの屋敷へ向かうことにした。

 銀狼の皆もそうだが、俺は、メイさんやエディアノイさんが落胆する顔を見たくはなかった。
 戦争には勝ったのに、俺の中ではなんとも後味の悪い物となってしまった。



 ナイルさんが通信魔導具で屋敷の者と連絡を取り、馬車が迎えに来ることになった。
 目の不自由なユリア様を、歩いて帰らせるわけにはいかない。

 しばらく待つと、豪華な馬車と質素な馬車の二台が到着し、セドリックが下りてくる。セドリックは、ユリア様の状態を目にするなり、驚愕し、固まってしまっていた。

 その状況に、俺自身も胸が苦しくなった。



 ――――このまま着かない方がいっそ楽なのに、馬車に揺られながら不義理な事が脳裏をよぎりつつ、俺たちは屋敷の前に着いてしまった。

 
 ユリア様とフローラ様は、セドリックに付き添われ屋敷へと歩いている。
 俺たちもその後を追うように、敷地内の長いアプローチを歩いた。

 屋敷に入ると、仕事をしていたメイドたちもユリア様の姿を見て動きを止めている。
 口を両手で覆い、泣いている人も多くいる。
 ユリア様の人徳なのだろう。雇い主としても、とても慕われていたんだろうなと俺は思った。

 俺たちは客室に通され、二人がもうじき到着することを告げられた。
 部屋の空気が重い…… 誰も口を開こうとせず、聞えるのは時計の秒針の音だけ。時間だけが刻々と過ぎて行った。

 静かな空間は、マイナスな思考を助長させ、不安を余計に煽ってくる。きっと、銀狼の四人も同じ気分なんだろうなと思いながら、俺は揺れる時計の振り子を見つめていた。



 ――馬の駆ける音が聞こえ、少しすると勢いよく扉を開ける音が静かな部屋に響いた。

「ユリア!!!! フローラ――!!!!」

 玄関ホールからエディアノイさんの声が聞こえたので、俺たちもエディアノイさんの所へ向かうことにした。ナイルさんたちは、まだ覚悟を決めきっていない感じで、顔がこわばっている。

 事情はセドリックから聞いているはずなので、エディアノイさんたちは、ユリア様の部屋に向かうはずだ。
 俺たちは重い足取りで、部屋を出た。


 ユリア様の部屋からは、エディアノイさんの嗚咽が聞こえてきた。

「ユ、ユリア……なんて痛ましい姿に…… お前の、美しい瞳が……」

 エディアノイさんは、ユリア様を抱きしめて涙を流していた。
 あとから来たメイさんも、下を向いて険しい顔をしている。

「エディ、私は大丈夫よ。それより、私とフローラの命を守ってくれた方々に寛大な対応をしてあげて」

 その言葉に、エディアノイさんはこちらを振り向いた。
 全員にピリッと電気が走る。

 エディアノイは、セレイナの姿を見つけると、周りにいる者を気にも留めずに駆け寄ってきた。

「セレイナ様!どうか、どうか、あなたの力でユリアの目を癒してくださいませんか!」

 セレイナはうつむく。

「……申し訳ございません。私の力では、その傷は治せなのです」
「なお……せない」

 エディアノイは、力なく膝をついた。


「ですが、"彼女"ならその傷を治せるかもしれません」

 エディアノイが、憔悴した顔を上げる。

「彼女……とは」



「私と同じ星骸の一人、ベルセフォネなら」
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