R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第31話 スリの少年、エルマとの再会

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「おえぇぇぇ…… ま、まっずぅぅぅ……」ガクッ
「こ、これは……これはなかなかに……うっ」


 俺とフェリドゥーンは、テーブルに並べられた料理を食べて大ダメージを負っていた。

 苦虫を噛み潰したような顔なんていう例えがあるが、絶対にそれよりひどい顔をしていると思う。

 フェリドゥーンなんて、背を向けて小刻みに震えている。

「あ、あれ?お気に召しませんでしたか?」

 フロリス六花のメイド長(隊長)であるリヴィアが、俺たちの様子を見てオロオロとしている。

 初仕事として、昼食の買い出しと調理を頼んだのだが……

 お決まりのパターンだと、見た目からしてまずそうな料理を出されて断り切れず決死の覚悟で食べる、なんてものがあるけど、これは逆パターン。

 見た目はすごく美味しそうだったのだ。

 さすがは俺が生み出した従者だ! なんて思いながら食べたらこれだ。
 美味そうに見えて超まずいパターンかい!!!! と思わず突っ込みたくなった。


 俺なんて一瞬、生死の境をさまよったからね……


「あ、味見とかはしたのかな?」
「いえ、創造主様の口にするものを先に食べるなんて無礼なことはできませんので」
「いや、してよ!! 味見!! 大事だよそれ!!」

 このパターンは予想していなかった。
 でも、もしかしたら料理が得意な子がいるかも?

「他のフロリスは料理とかできないの?」
「申し訳ございません……生まれたての私たちは料理は初めてなもので」

 あ、そうだよな。さっき生まれたばかりなんだ……何でもできるってわけではないか。
 "戦闘侍女"と言っていたから、本来は戦いが得意分野なんだろうし、色々と求めるのも酷だ。

 長い付き合いになるんだ、彼女たちも色々と学んでいけばいい。

 それはそれとして……

「さっき俺、死んだかもしれないんだけど…… 何入れたの?」
「い、いえ、私は買ってきた食材と調味料以外はなにも…… アキノ、心当たりは?」

 いつも試験管ホルダーを持っているアキノが、自信満々な顔をしてズイっと前へ出てきた。

「とっても美味しいので、アペトサキテルを10滴ほど入れましたぁ」

「あ、アペトサキテルを10滴……」

 その名前を聞いてフェリドゥーンが青ざめている。

「なに?アペトサキテルって」
「一滴で屈強な竜種も即死させる……特殊な錬成でしか生み出せない猛毒です」
「え…… んなもん入れちゃダメでしょっ!!!!アキノ!!!!」
「ええ~、甘くて舌がピリピリっとして、とっても美味しいんですよ? 凛人様」
「料理に毒はダメ!! ってか人に毒食わせちゃダメ!!一番のタブーだよそれ!!」


 はぁ…… そこから教育しないといけないのか、食べたのが俺でよかった。

 となると、飯は外で食べるしかないのか?
 いや、これは飯くらい自分で作れという戒めなのかもしれない。主主あるじあるじと言われて自惚れるなと。

 まあ、一人暮らしが長いおかげで料理は苦手じゃないけどさ。

 とりあえず、空腹のままだし俺が食材を買いに行くとするか。

「フェリドゥーン、食材を買うから街へ付き合ってくれる?」
「かしこまりました」


 庭園に出ると、コラールの美しい歌声が聴こえてきた。
 セレイナはその歌を聴きながら、花壇へ水やりをしている。

「セレイナ、ちょっと街へ出かけてくるね」
「はい凛人さん、いってらっしゃい」
「うん、いってきます」


 いってらっしゃい。いってきます。

 ただそれだけのやり取りなのに、俺は心の安寧を感じていた。この時がずっと続けばいいのにな。

 門へと続くアプローチでは、メルティナとリーヴェが掃き掃除をしている。

 メルティナは俺の姿を見ると、即座に駆け寄ってきて跪いた。

「お出かけでしたら私がお供いたします。凛人様!」
「ありがとう。フェリドゥーンがいるから大丈夫だよメルティナ」
「そ、そうですか……」

 メルティナがものすごく落ち込んでしまったので、俺は一緒に行こうとメルティナに声をかけた。
 彼女はポニーテールをパタパタとさせて、オレンジの瞳を輝かせて喜んでいる。

 まさに戦闘侍女!という凛々しさを持った彼女なんだけど、こうやって甘えられると、とても可愛らしい女の子なんだと再認識させられる。さすがは俺の従者、隙がない!

「凛人様ぁ、夜眠れない時は私をお呼びくださいねー」
「うん、お願いす……る…… いや大丈夫大丈夫!一人で眠れるから!」

 あぶないあぶない。リーヴェのたおやかな雰囲気にのまれるところだった。
 彼女は危ない。男にとって危険な女性だ。



 ――屋敷は街外れなので、めぼしい店までは少し歩かないといけない。
 辺りの家々をこうやってじっくり見て回るのは初めてだけど、平均的な暮らしはできていないようだ。

 だから、尚のこと俺の屋敷は周囲から浮いている存在なのだ。
 屋敷を建てた商人は、なぜここにしようと思ったんだろうか。



 繁華街の入り口に差し掛かると、人だかりができていて何やら揉めている。

「ん?なんだろう」

 近づいてみると、身なりの良い男性が少年を蹴り、何度も踏みつけている。

「ぐあっ!! ご、ごめんなさい!ちゃんと返すから!ぐふっ!」
「このクソガキ!!汚い手でこの私に触れやがって、半殺しにして突き出してやる」

 これは見ていられない。俺は現場へ駆け寄った。

「もうやめましょう!相手は子供じゃないですか!」
「うるさい!私の財布を盗みやがったんだ、このガキ!ぶち殺してやる!」

 倒れているのは、この間のスリの少年だった。
 懲りずにまたスリをやったのか。仕方のない子だ。

「落ち着いてください、財布はお返しします。俺たちが守衛に連れて行きますから」
「黙れ!!さてはお前もこいつのグルか?このゴミが!!お前も突き出してやる!!」
「ち、違います、俺は……」

 後ろから焼けるようなマナが漏れ出してきている。

 振り向くと、メルティナが鬼のような形相でその男性を睨みつけていた。

「きさま……今誰をゴミと言ったんだ? ああんっ!!?」
「ヒ、ヒエ!!!!」
「凛人様の言ってることが聞こえねーのかコラッ!! ――灰も残さず吹き飛ばすぞ」

 メルティナはどこからか、火花のような金連花の紋様が刻まれた大型の魔砲を取り出し、男に向けていた。

 魔砲の銃口には、激しい炎が渦巻いている。

「わわわ、わかった!財布は返してもらったしな。あ、あとは君たちに任せることにしよう!」

 そう言うと、男は脱兎のごとく走り去っていった。

「ふう、ありがとうメルティナ。助かったよ」
「めめ、滅相もございません、凛人様。お恥ずかしい姿をお見せしてしまって……」
「やっぱ俺の従者だ、頼りになるね」
「――はああああ!!」

 メルティナはとてもうれしそうに目を輝かせていた。本当に可愛い奴だ。

「ごふっ、ごふっ……うっ」

 さて、この子はどうしようか。置き去りにするわけにはいかないし。

「大丈夫か?」
「うっ…… オレを、突き出すの?」
「ううん。でも、その代わり話は聞きたいかな、家はどこ?」

 俺たちは少年の道案内で家へと向かうことにした。
 少年はフェリドゥーンが背負って歩いている。


 俺たちは裏路地を進む。
 表の繁華街とは違い、雨風を凌ぐためのような古びた家屋が立ち並んでいる。
 どこかジメジメとした湿気を感じ、カビのような臭いが鼻につく。

「あの角の家が俺んちだよ」

 窓はひび割れ、壁はところどころ劣化で剥げている。

 フェリドゥーンがドアノブに手をかけると、軋むような耳障りな音を鳴らしドアは開いた。

「だ、誰ですか!? うっ、ゴホッ!ゴホッ!」
「か、母ちゃん!大きな声出しちゃダメだって」
「エルマ!その怪我はどうしたの!?」

 女性はベッドに寝ていたが、俺たちが急に入ってきたことで起き上がった。
 年は30歳くらいだろうか、痩せていて顔色も悪い。

「仕事はどうしたの?」
「し、仕事は……その……」

 なるほど。多分母親には仕事に行くと嘘をついていて、スリに手を染めていた。何か事情がありそうだ。

 でも、このまま隠してまたスリをしても、いつか命を落とすかもしれないと俺は思った。

「エルマ、だっけ?母さんにはちゃんと話したほうが良い。病気の母親を置いて捕まりたいのか?」

 その言葉に、エルマはハッと目を見開いた。

「つ、捕まるって!エルマが何かしたんでしょうか」
「母ちゃん……ごめん。仕事してたって言ってたろ?あれ、嘘なんだ」
「嘘って。ちゃんと説明して、エルマ」

 エルマは言葉に詰まっていた。
 言いにくいのはわかる。でも、ここは勇気を出して告白するべきだ。俺は、勇気を出せとエルマの肩に手を置いた。

「――仕事じゃなくて、人からお金を盗んでたんだ……それで、見つかっちゃって……」
「エルマ……なんでそんなこと!」
「だって、仕方ないじゃないか!ギャンブルで借金作って逃げた奴の子供なんて、どこも雇ってくれないんだよ!」
「エルマ……」

 何やら複雑そうだ。俺は母親に尋ねてみた。

「何があったか聞かせてもらえますか?言いにくいのでしたら無理にとは言いませんが」

「――はい。私の夫、エルマの父親はこの辺りでも人気の食堂を経営していた料理人だったんですが、いつしかギャンブルと酒場の女にどっぷりとハマってしまい多額の借金を……その噂はすぐに広まり、客足は遠のきました。レストランは経営が難しくなり廃業を余儀なくされると、夫は借金を残して蒸発してしまったのです」

 妻と子供を残して逃げるなんてとんでもないクソな父親だ。
 会うことがあったらぶん殴ってやりたい気分だ。

「借金って言うのはいくらなんですか?」
「40万ディーツです」

 40万ディーツなら金貨4枚か。
 確か、学校に通えた王都の労働者の年収が、だいたい金貨2枚の20万ディーツだったよな。まあ、日本でそこそこの大学を出たと仮定して、年収500~600万って所だろう。

 ってことは借金は1000万くらいか。よくもまあそんなに使い込んだもんだ……

 その時、ドアを激しく叩く音がした。

「おい!いるんだろ!?今日こそは全額支払ってもらうぞ!払えねえならガキも一緒にオルディアで奴隷として売っぱらうからな!」

 母親とエルマは身を寄せ合って怯えている。

 俺は考えた。このままでは、この家族には不幸な未来が待っている。
 せめて手の届く範囲の人は救いたい。前に俺が思ったその言葉は、この二人にも当てはまるんだろうか。


 今それを考えても仕方がない。


 俺は、ドアノブに手をかけて扉を開けた。
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