R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

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第二章 オルディア王国編

第36話 オルディア王国と初仕事

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 仄暗い森の中には、疾走する女性の荒い息づかいと草木の擦れる音。そして、それを追う不規則に奏でられる金属の摩擦音が響いていた。

 女性にとって迫りくるその音が、その後の人生を地獄へと導く不協和音に聞こえていたのはその表情から容易に見て取れる。

 すぐ後ろまでその音が近づいてくる。

 女性の息づかいは迫真のものへと変わり、助けを求める声なき悲鳴のようにも聞こえた。

「あっ!!」

 女性の足がもつれ倒れ込むと、複数の足音は背後で止まった。

 耳の長い、透き通った白い肌の秀麗な顔立ちをした女性は、怯えた顔で追ってきたそれらを見上げた。

「お願い……こ、こないで」

 女性の前に立ちはだかっていたのは、白金に輝く鎧を身に纏った騎士たちだった。
 兜には国家のものと思われる紋章が刻まれている。

「お嬢さん、無駄な抵抗はせずに大人しく付いてきてもらおう」赤いマントを身につけた男がいった。

「いや!!」

 女性は胸の前で手を結んだ。

「眠れる大地よ、我が声に応えよ。礎となり、盾となれ ――アースウォール!!」

 地面から女性を囲むようにそびえたつ壁がせり出す。

 どよめく声をしり目に、赤いマントの男は冷静だった。
 口を一文字に結び、金色に輝く剣を横一閃に走らせると、女性を囲むようにそびえたつ壁はいとも簡単に切断され、崩れ落ちた。

「そ、そんな……」

「おお! さすが将軍殿!!」

 周りの感嘆の声たちに耳を貸さず、男は怯え切った女性に尋ねた。

「歳はいくつだ」
「―― 23……です」
「ほう、これは珍しい。まだ子供だな、相当な値が付く。――魔法が厄介だ。魔封石の手枷を付けて逃げられない程度に痛めつけておけ。大事な商品だ、顔には傷を付けるな」
「かしこまりました!」

 鎧の男たちがにじり寄る。

「い、いや!! お願い、許して!! ……お、お母さん、お父さん助けて!!」


 そして、女性から捻りだされた金切り声が明け方の森に響き渡った。



*************



 俺たち一行は、ヴォルフ・ガーナイン王国の南南東に位置する国境へと来ていた。

 メンバーは俺とセレイナとフェリドゥーン、そして隠密と狙撃が得意なアルマだけど、アルマは偵察のために一足先に入国してもらっている。

 オルディア王国との国境だが、閑散としていてこちら側からの通行人は自分たち以外はおらず、向こう側から国境を越えてくる人がぽつぽつといる程度だ。

 国境を越えてくる人たちは、豪華な馬車に冒険者の護衛を付けた富裕層ばかりだ。

 俺はその光景に少しばかり違和感を覚えた。


「――ここから先がオルディア王国か」

 国境の砦を出た俺は、オルディアの地を踏みしめた。

 ようやく、第一歩を踏み出せた気がする。この先どうなるか頭で考えていても時間が過ぎるだけだ。
 伸るか反るか、出たとこ勝負。

 このオルディアの地は、紛争が続いているため瘴気の濃度も高く広範囲に広がっているという。その影響か魔物も狂暴化し、強力な個体も生まれているという話しだ。

 以前は、猛者の多いエブンズダールの冒険者ギルドに、よく応援要請が届き派遣されて護衛などをしていたみたいだけど、ここ数年はほとんど依頼が来なくなったという。

 その様子見もルーガスさんに頼まれている。

 ヴォルフ・ガーナインとは違い、街道はあまり整備されておらずうっすらと道らしきものが見える程度だ。

 ――おかしいな。この国は世界有数のミスリル鉱山があると聞いたから、インフラはしっかりしていると思っていたんだけど……

 地方の農村部ならわかるけどここは国境、いわば国の顔だ。そこがこんなんでは他もあまり期待できそうにないな。

 目の前に標識が立っている。

「えーと、南がデレノバ、西がアルギスで東がモルノ。 ――地図でもあればなぁ、どっちに行こうか」
「リント様、南のデレノバが国境の街として栄えております。情報もかねてそちらに向かってはどうでしょう」
「なるほど、それじゃあデレノバに行ってみようか」

 そんな話をしていると、後ろから男が話しかけてきた。

「そこの君たち! そのリングは冒険者とお見受けしたが」

 身なりの整った、恰幅のいい男だ。
 笑顔を張り付けたような顔が、なんか胡散臭い雰囲気を漂わせている。

「はい、そうですけど」
「おお! しかもSランクではないですか! これは頼もしい」
「あ、あの。 ご用件は何でしょう?」
「失礼ながらお話を聞かせてもらっておりました。デレノバに向かうのでしたら、街まで私の護衛をして頂けないかと」

 護衛か!俺は冒険者としての初めての依頼に少し高揚感を感じていた。
 今までただの便利アイテムだった冒険者リングがようやく日の目を見るわけだ。

「報酬は弾みますよ、いかがですかな?」
「わかりました。お任せください」
「おお!それはよかった。では、今馬車を持ってきますので少々お待ちください」

 そういうと、男は馬二頭に馬車を引かせ、こちらへとやってきた。
 重い荷物なんだろうか。

「それでは参りましょう」

 俺たちは南へ向かって歩き出した。

「ごめんセレイナ。俺の勝手で歩かせることになっちゃって」
「いえ、天気も良いですしピクニックみたいで楽しいですよ」

 本当に良い陽気だ。こうして荷馬車の音を聞きながら歩いていると、ここが情勢の荒れている国だということを忘れそうになる。





「――馬車を止めるんだ」何事もなく小一時間ほど過ぎたその時、フェリドゥーンが御者に指示をした。

「ど、どうかしたのですかな?」男が尋ねる。
「魔物だ、狙われている。 リント様、わかりますか?」
「うん。 言われるまで気づかなかったけど、人のものとは違うマナが近づいてくるね。右から」

 馬車が余裕を持ってすれ違えるほどの広さの街道だが、この辺りは2メートル以上の高さの茂みに覆われている。

 茂みに身を潜めて、横から一気に襲い掛かる気なんだろう。バレているとも知らずに。
 気配は一体だけだ。このマナの感じだと大した魔物じゃない。


 ――マナの流れが変わった。来る!


 茂みから巨大な影が飛び出してきた。

 その咆哮は耳を覆いたくなるほどの勢いで空気を振動させた。

 虎!? いや虎というよりサーベルタイガーに近い。大きさはアフリカゾウほどある巨大な肉食獣だ。

「ひ、ひいいいいっ!!!! 」男と御者が醜い悲鳴を上げる。


 よし!ここは修行の成果を!


「下がって!こいつは俺が倒すか――――」

 その刹那、フェリドゥーンのかざした手の平から凄まじい稲妻が魔物へとほとばしり、魔物の爪は俺たちに届くことなく、その巨体は目の前に力なく落下した。

「ら…………」

 魔物の腹部には巨大な風穴が空き、舌を出して絶命している。

「大分制御はしましたが、おそばにて失礼いたしました。お怪我はありませんか? リント様」
「う、うん。大丈夫だよ~」

 フェリドゥーン!! せっかくの俺の出番が!! 優秀過ぎるんだからこの従者は!!

「エルギガント・タイガーを…… い、一瞬で」

 馬車を引いていた御者が顔面蒼白で驚いている。

「エルギガント・タイガー?」
「は、はい。本来生息地はもっと南の湿地帯のはず。Sランクパーティでも死者が出ることもある危険な魔物なんですが……」
「そうなんですか。うーん、やっぱ瘴気の影響なのかな」
「そ、そうなんですかって…… 討伐にはS+パーティが推奨されている魔物なんですよ!?」
「え? あ、そ、そうなんですか!それは怖いなぁ、運がよかったんですかねぇ、ははは」
「…………」

 依頼をした恰幅の良い男が御者台から飛び降りてきた。

「いやぁ素晴らしい!!  あの恐ろしい魔物を一撃で仕留めるとは!! 是非うちの専属護衛になっては頂けませんかな!?」
「い、いえ。 ありがたいお話ですが、わけあって方々を旅してるもので」
「それは残念だ…… では、街まで急ぎましょう。あなた方がいるならもう安心だ」

 馬車は街を目指し若干速度を上げた。

 この辺りは特に整備がされてなく、道が非常に悪い。

 大きなくぼみに馬車の車輪が落ちたその時だった。

「きゃっ!」


 ――ん? きゃ?


 荷台のほろの中から女性の声が聞こえた。

 他にも帯同者がいるのか?そういえば、積み荷のことも俺たちは何も知らない。

 あの男に聞いてみたいけど、護衛がそこまで踏み込んでもいいものなんだろうか。

 でも、なぜか俺はさっきの声が気になって仕方がなかった。


 よし、思い切って聞いてみよう。俺は、御者台にいる男に尋ねてみることにした。
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