異世界で魔物と産業革命

どーん

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第1話 - 生贄

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今朝は妙にうるさい、ゴトゴトという物音で目が覚めた
強くゆすられている、今日は休日のはず、もう少し寝かせてほしい



おかしい、ゆすられているのではなく、動いている
目を開けてみると木製の格子のようなものが見える
ハッとして周りを見渡すと見慣れない服装の男女が複数人いる事が分かった
どうやら今、私は木製の箱の中にいて、どこかに輸送されているようだ

俺は、昨日....どうしてたっけ...

==========回想==========

俺は 井手 玄人イデ クロト 40歳 おっさんだ、数年前独立し、事業も軌道に乗り始めた。
昨夜はワガママを言う社員達を労い、打ち上げをしていたはずだった。
ここまで来るのは控えめに言っても人並みの苦労ではなかった。
仲間を集め、時には会社のお金目当てかと思うような人を見るたび嫌になったものだ。
いかに楽をし、働かずお金を得るか考えるだけの堕落した人
他者の苦労を認めず、理解せず、自分勝手を押し付ける人、いろんな人がいた
そうして人間不信になりそうな状況でも支えてくれる仲間のおかげでここまでこれた。
少ない人数でやってきたからこそ、これから給与も上げ、士気を上げ、さらにもう一回り成長しようと決起会を行っていた。
そしてその後、飲みすぎたと反省しつつ、家に帰り、寝たのだ。

==============================
それが、ここはどこだ。
注意深く周りを見渡してみる。

月明りがある、空は暗い、夜だ。そして木製の牢の中にいる。
周囲は森だ、森の奥は見えそうにない。

俺と同じ牢にいる他の人間は何人かは起きているようだが、うつむき
とても話しかけられる雰囲気ではない。

俺が昨日まで見ていた世界とは明らかに時代が違う
これは異世界転生というやつだろうか?
どこかの城に勇者として召喚されるばかりではないようだ...
それにしても牢の中とは、俺の異世界転生は大ハズレだ。

俺自身は召喚されたというより、この時代の人間と人格が入れ替わったかのようだ
おそらく成人しているであろう体だが、元の世界よりは若そうだ、この体の持ち主の人格はどこへ行ったのだろう...

そんなことを考えていると、荷車が止まった。
ガチャガチャと音がする、荷台の主が、牢の向こうに現れ、つぶやいた

「すまねぇ」

一言いうと、村人風の男は馬を走らせ、森の中へ消えていった。

「どういうことだ、牢に入れられて放置...島流しのような刑か?」

するとうつむいていた男が話し出した

「俺らは生贄だよ。あの村にはそういう習慣がある。
  宿に泊まった人間を眠らせて、生贄として運ぶらしい、そう言っていた。」

よくよく見ると男は傷だらけだ、しかも手足を縛られている。
何かしらの理由で抵抗し、強引に牢へ押し込まれたのか
寝ている人間は抵抗する心配がないからか、縛られてさえいない

「生贄...」

生臭い風が漂ってきた、森の奥からガサガサと音がする
足音も、だんだん大きくなってきた
人型の、巨大な、3体の怪物が姿を現した。

「オークだ...くそっ...」

オーク!?ここは本当に異世界のようだ。
中世ファンタジーによくいるオークだ、人型の巨体に豚の頭。
実物を見れるとは、俺が勇者なら感動したいところだが、今は生贄だ。

「俺たちは...どうなるんだ?」
「オークは女を攫って子を産ませる、男は、食料だ...」

男は涙を浮かべ、諦めたような顔でうつむいてしまった。
オーク達は荷車を運び始めた。
ほどなくして、荷車が止まった、オーク達は崖の上に集落を作っているようだ。
3体のオークのうち、1体が喋り始めた。

「人間だ、女は牢を移し、男は潰して肉にしろ」
「おいおいマジか、せっかく転生したのにもう死ぬのか...」

ただ黙って死ぬのは癪だ、せめて外に出た瞬間暴れてみよう...
オークが牢の扉を開け、一人ずつ運び出していく
やがて、手足を縛られた男の番になると、男は激しく抵抗した。

「死にたくない!死にたくない!!」

男は半狂乱になりながら手足をバタつかせ、荷車へしがみついている
そんな男を引き剥がすべく、オークが荷車に手を置き、男を引きはがす、男は怪我をしているせいか、簡単に引きはがされてしまった。

荷車はゆっくりと動きはじめたが、男が暴れているため皆気づいていない。
やがて、勢いを増し、坂を下り始めた、坂の先には崖が見える。

「これはこれでヤバいぞ、オークから逃げられるかもしれないが、このままでは大怪我してしまう」

まだ牢の中には数人の男女が眠っているが、さすがに担いでいく余裕はない
運が良ければ助かることを祈って、俺は牢の外へ飛び出した。

荷車が崖へ吸い込まれていく。
俺は後悔の念を抱きながら、森の中へ走り出した。

「みんなを見捨てたようで心が痛いが...連れ出す余裕もなかった...申し訳ない...」

俺は一心不乱に、ひたすら走り続けた。

………

空が明るくなりはじめ、近くに川があることに気づいた俺は休憩を兼ねて
川の側に落ち着いた。

「これからどうしよう、この世界の知識がまるでない」

しばらくふさぎこんでいると、森から音が聞こえてきた。
俺は隠れる場所を必死に探した、が、目の前に現れてしまった。
子牛ほどもあるだろうか、大きな、黒い、犬だ。

額に大きな傷がある、しかも、まだ生々しい、それほど時間がたっていない

「デカ...いな...怪我をしてるのか...」
「...」

犬は警戒しつつ、川へ向かい、水を飲み始めた。
ひとしきり水を飲み終えた後、こちらへ顔を向け、なんと言葉を話し始めた。

「おい、なぜお前は我々と同じ言葉を話すんだ?」

犬が喋った、異世界だからか?こいつも魔物なのだろうか
とにかく、話ができそうだ、襲われる可能性も捨てきれないが...

「どういう事だ?普通は喋れないのか?俺はここに来たばかりで何もわからないんだ」
「ニンゲンに我々の言葉が理解できるものは見たことがない、先ほど見たニンゲンも喋れなかった。」

犬は座り込み、話をつづけた

「まぁ、いいよ、ニンゲンとどんな会話ができるのか、楽しみだ」

俺も座り話をする姿勢を取った。
それに、先ほど見た人間と言っていた...

「ちょっと待ってくれ!他に人間がいるのか?」
「いるよ、すぐ近くに」

犬は森の中へ目をやった、すると10代くらいの女の子が出てきた。
女の子は、おそるおそる森から出てきた後、犬の側へ駆け寄った。

「え、君ここで何してるの?」
「わからない、目が覚めたらこの子と一緒にいた...
あなたは、この子と話ができるの?」
「そうみたい、後で説明する」
「その子は落ちてきたニンゲンの荷車の生き残りなんだ。
ひどく混乱していたけど、ボクに攻撃の意思がない事に気づいてからは落ち着いてる、なぜ離れようとしないのかわからない」

荷車...さっきの牢の事か?、崖から落ちたはずだが...なぜ彼女だけ無事なんだろう

「もしかして、その荷車が落ちてきて怪我をしたのか?」
「気持ちよく寝ていたら落ちてきた、まだクラクラするよ」

マジかー...たぶん俺らが入ってた牢だー...
それにしても大小数人は入れる牢だぞ、なんでこの犬も生きているんだ?

「よくその程度の傷で済んだね...」
「ボクはニンゲンでいう魔物だし、この森の中では頑丈なほうだからね」


それから、二人と一匹で話をした。


女の子も転生者であることが話していくうちにわかった。
転生時に何かスキル的なものを授かったのだろうか、転生モノにはよくある話だ
魔物と会話ができるのは俺だけだった。
崖から落ちて無傷に近いのも、何かしらスキルを授かったと考えるのが妥当だろう。
女の子は元の世界では25歳、OL、いわゆるブラック企業に勤めていたそうだ。
名前は社 まめいやしろ まめい
この世界と元の世界、どっちがマシだったのかわからないな...

犬は名前が無いらしい、何と呼べばいいかわからず、あまり話を続けることはできなかった。

しばらく話をして落ち着いてきた。
それにしても犬の怪我が気になる、かなり大きな傷だ、なぜ平気なんだろうか

「ところで、魔物ってどうやって傷を癒すんだ?その額の傷の手当をしたいんだけど」
「本当かい?助かるよ。額はボクの手ではどうにもならない
舌は届かないし、前足だとひっかいちゃうし、この川辺に生えている花の葉を集めてほしい」
「おっけい、まめいさん、一緒に手伝ってくれないかな?」
「何をすればいいの?」

そうか、彼女に犬の話は聞こえていないのか

「川辺に生えている花の葉がいるらしい」
「わかった」

二人で花を集め、10本ほど集まったところで合流した。
もう日も随分高くなってきた。

「その葉を石か何かで十分に叩いたら、傷口に貼ってほしい」

言われるとおりに集めた葉を石で叩き、傷口へ貼った

「魔物でもこんな治療をするんだな」
「しないよ?ボクの主がそうしたんだ」

主?俺たちのほかにも人がいるのか?そこならここより安全かもしれない。

「飼い犬なのか?主は近くにいるのか?」
「もういない。ずーっと昔の事だからね、ボクがもっと小さいころ」
「そっか、残念だな」
「これからどうするんだい?ニンゲンには住処がいるだろ?」
「そういえばそうだな、近くに村はあるかな?できれば、生贄の習慣がない村がいい」
「もうないよ」

もう、ない。とは、どういうことだろう

「唯一残ってた村の方向に、オークどもが向かっていってたからね
きっともう、村はないよ」
「マジか...なぜオークが村に向かったのかわからないが、俺らを生贄にした村だし、いいか」
「生贄が逃げたからじゃないかな」
「なるほど...自業自得だな」
「君の主が使ってた住処はまだ残ってるかな?」
「あるよ、家のようなものではなく、木の根で出来た、穴だけど」
「今は贅沢言えないし、一旦そこへ行きたい」
「いいよ、案内してあげる」
「助かる!」

まめいさんが明るい顔でこちらに話しかけてきた

「住処へ行くの?」
「よくわかったね、この子の言葉わかるようになったの?」
「玄人さんの言葉はわかるから、なんとなくそうなのかなって」
「なるほどね、じゃあ、行こう」

俺たちは大きな犬に連れられ、住処へ向かった
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