異世界で魔物と産業革命

どーん

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第2話 - 新生活

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住処へ到着した俺たちは仮住まいの準備を始めた。
もう日は沈みかけている、もう夕方に差し掛かるころだ。

住処へ目をやると確かに、洞穴だった。
作りは質素で、家具はほとんどない、簡単な寝床と焚火の跡があるくらいだ。
多少古いが、少し掃除をすればまだ使えそうだ、少なくとも、当面は。

寝床はひとつだが、簡単な作りなのでもう一つ作ることは難しくなさそうだ
まめいがあっという間に寝床を占領してしまった、早めに寝床はもう一つ用意しよう...
トイレも一応ある、そして川が近い
一通り揃っており、食料さえ取れれば生活できそうだ。

「はー、やっと落ち着ける。」
「ほんと、一時はどうなるかと思った」

「ほんとだよ、まめいさんは寝てたかもしれないけど、オークの集落に連れていかれてたんだぞ」
「あやうく豚面の魔物の嫁になるとこだった」
「うわー、豚面はやだな」
「クッサイし、ほんと生きた心地がしなかったよ。」
「玄人さんも嫁にされるところだったの?玄人さん生活力ありそうだからなー」

「なんて?」

あれ、おかしいぞ、頭打ったのかな?緊張がほぐれて話しやすくなっただけだよね

「いや、オークは女は繁殖用、男は食料にするらしいし、そう言ってた」
「そっかー、残念だねー」

「なんて?」

「お嫁さんになれなかったから」

...アホの子だったか...面白いからいいか
犬が楽しそうにこちらを見ながら、話しかけてきた

「オークの言葉もわかるのか、面白い才能だね」
「そうなのかなぁ、有用だといいけど。」

ところで、この大きな犬はいつまでいてくれるんだろう
正直俺たちに戦闘力はなさそうだし、用心棒としていてくれると助かるんだけど...

「君は、いつまでいてくれるの?」
「当分はいるよ。傷の手当てもしてもらったし、ニンゲンの作るご飯はうまいんだ」

一緒に食べる気まんまんかよ
まぁ、頼りにさせてもらおう

「そういえばお腹空いたな、ご飯どうしようかな」
「近くに川あるし、魚でも取れたらいいな」
「じゃあ私が調理する!」

さっきの言動を見る限り不安しかない
とはいえ俺は作れる技量がないし、一旦作ってもらうしかないか...

「おいしいの頼んだ!」
「まかせろー」

不安だ...

「その前に、大きな犬さんに名前をつけたいな」
「名前?いいね、カッコイイのにしてね」
「大きくて黒くて、希少種...」

まめいがふんぞり返り自慢げに声を張り上げる

「ビッグディック!」
「意味わかってんの?黙っててくれる?」
「ションボリーヌ」
「うーん...」
「クロちゃん」

「呼んだか?そう呼ぶのはお袋くらいだ、却下」
「二人とも呼べるし便利じゃん」
「混乱するだろ黙ってろ」

「アヌビス、なんてどうかな」
「元いた世界では犬型の神様の名前なんだ、黒い犬の神」
「いいね、ボクは今日からアヌビス」

アヌビスは満足げに話し出した

「ふふふ、名前っていいものだね」
「特別だからね」
「そうだね、こんなにも誇らしいものだったんだ」

まめいが閃いたように目を輝かせてまた声を上げる

「アヌス!」
「台無しだろ、飯でも作ってろ」



「さて、名前も決まったし、ご飯の準備しよう」
「まずは魚でも取りにいくか」

アヌビスがゆっくりと起き上がり、声をかけてくれた

「ちょっと待ってて」
「?...いいけど」

そういうと、アヌビスは崖の下へ飛び降りて行った
驚いたが、魔物だしこれくらい簡単なんだろうか...
身体能力はとても高そうだ、これなら用心棒として頼りにできるな
俺は火をおこすための薪でも拾ってこよう

しばらくすると、大きな音が鳴った
雷鳴に似た音だ、バリバリと鳴ったが、一瞬だった

それからすぐにアヌビスが帰ってきた、イノシシのような大きな獲物をくわえていた

「マジか...」
「これくらいで足りるかな」
「お、おう、たぶん8割アヌビスの分だな」
「ご飯が楽しみだ」

獣の解体はやったことなかったが、まめいさんと二人で頑張った
調理器具は大切に使われていたのか、時間が経っているにも関わらず
かなり状態はよく、すぐに使う事ができた。

「このままだと火であぶるくらいしかできないんだよなー」
「それでいいじゃん、焼いた肉は臭みがなくていい」
「せめて塩がな...」

「塩はないけど、レモンに似た果実があったよ。
 あとこんなキノコ、これも焼いてみよ」

「お!まともなことも言えるのか!そうしよう!」
「私はずっとまともですぅー」
「ハイハイ」

「あ、薪は集めたけど火を起こさないと」
「火?その枯れ枝で焼くの?」

「そのつもりだよ」
「おっけい」

そういうとアヌビスは薪へ目をやり、ほんの少し、集中するようなそぶりを見せた
すると、アヌビスの鼻先に光が集まり、光が消えると同時に薪へ火が付いた

勢いよく燃え、あっという間に薪が焚火になった

「なにそれ」
「魔術だよ」
「魔術...そうか異世界だもんな」
「すごいね、便利!さっそく使わせてもらおう」

魔術、便利だけど、それがなければ俺たちは本当に原始的な生活しかできなかった
アヌビスがいてくれたのはまさに地獄に仏だったわけだ

ご飯を食べ終わり、一息つきながら考えてみた、魔術がある世界ならもしかして俺も使えるのだろうか?

「魔術、俺も使えるのかな」
「やってみる?」
「もちろん!やる!」
「できるの?私もしたい!!」
「お、出来たら便利だし、アヌビスの言葉を伝えるから一緒にやってみよう」

アヌビスの手ほどきを受けながら、この世界には精霊がいる事
それら精霊の力を借りる事などを知った。

まずは精霊が見えるようになることが重要らしい
精霊たちの言葉を聞き、よい関係を築くことで力を貸してもらえるのだとか

その他、体に宿る魔力を消費する魔術
術式を構築して魔力を望む形に変換する魔術があることを教えてもらった

アヌビスが使っているのは精霊魔術
魔力を使う魔術は魔族、魔物の上位にあたる存在が使うものらしい
術式を構築するものは主に人間が使うのだとか、呪文とか唱えるんだろうな

アヌビスは術式魔術の知識はないらしいので精霊魔術を教えてもらうことになった
その土地の精霊をまとめる存在に祝福されれば精霊は見えるようになるのだとか

「その精霊をまとめているボスはどこに?」
「君らが住んでる木がそうだよ。前の主はここで訓練してたんだ。」
「なるほどなー、どうやって祝福してもらえばいいんだろう」
「まずはお供えだね、精霊の存在を認める事と感謝をする事、そして精霊たちの話を聞いて、よい環境を提供するんだ、そしたら、力を貸してくれる」
「お供え物は何がいいんだ?」
「主に食料だね、その辺の果実でもいい」
「じゃ、さっきうちらが食べたやつと同じものをお供えしよう、まめいさん頼めるかな」
「まかせろー」

ほどなくして、1品できた
簡単ではあるが、祭壇を設け、祭壇の前に料理を置く
そしてまめいさんと二人でお祈りをした

「これで儀式は終わり、ボクもいるし、もう祝福は授かってる」
「どう?光の粒のような小さな光を感じられるかな」

「...」
「...」

何にも感じない、いつもと変わらない

「まめいさん感じる?」
「全然」
「ダメっぽい、何も変化は感じられない」
「そっか、向いてないかもね
精霊は見えなくても、祭壇にお供え物とお祈りをするのをかかさないでね、いつか見えるかもしれないし、見えないかもしれないけど
土地の神を敬う事を忘れれば恵みを授かることはできないよ」

「そうだね、お祈りは続けよう」
「うん」

大変残念だが、精霊魔術の適正はないようだ...
四元素適正とか精霊の姿とか見たかったなー
ファンタジーらしく

ともあれ、そうなると薪が必要になるな
いつでも火を起こせるように、こっちの世界でも労働から逃げることはできないようだ。
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