異世界で魔物と産業革命

どーん

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第3話 - 訪問者

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二人と一匹で過ごす日常に慣れたころ
住処の様子がいつもと違う

アヌビスは寝転んでいるが、視線をそらさない
耳が立っており、ピクピクと物音に集中している様子だ

俺はそんなアヌビスの様子に気づき、声をかけた

「アヌビス、なんかいるのか?」
「我々に興味を持つ生物がいる」

ここ数日平和な生活をしていたが自分が生贄だったことを思い出し
身構え、小声でアヌビスに語り掛けた

「オークか?俺たちを捕まえに来たのかな...」
「オークではないね、臭くない」

正直ほっとした、我々にはまだ武器もなく戦闘力は皆無だ。

「じゃあ、訪問者かな?人なのかな?」
「警戒してるね、木の上から様子を見てるみたいだ」
「監視されているのか...あまりいい気はしないな...」
「捕まえてみるかい?」
「できるの?」
「ボクは強いからね!」
「そうか、じゃあ、頼んだよ」

するとアヌビスはゆっくりと起き上がり、伸びをした後、ブルブルと体を震わせ
木の上を凝視した。

監視している何者かはアヌビスの視線に気づき、音を出した。
距離をとるのだろうか?木の葉がこするような音が聞こえた

アヌビスの毛が逆立ち、ゆらゆらと動き始めるとどこからともなく風が吹くと
風と共にアヌビスはたった1回の跳躍で音のした枝まで飛び上がった
その後、すぐに追いかけっこが始まったようだ。

ガサッ ガサッ と何度か音がしたがすぐに静かになった

遠くで何かが叫ぶ声が聞こえる...人だったのだろうか...

しばらく待っているとアヌビスが戻ってきた
口には大人ほどもあろう人間がくわえられていた。

監視者は銀髪、容姿端麗、尖った耳の男、エルフだ
気を失っている...とりあえず手当てしたほうがいいだろう
アヌビスにエルフを住処の前へ降ろしてもらい、手当をした



しばらくしてエルフが目を覚ました。

「大丈夫?」

俺が声をかけるとハッと目を見開き、動こうとしたが
アヌビスが上に乗り、すぐに動けなくなった。

「ぐ...俺を、どうするつもりだ...」

「いや、どうするも何も俺たちに敵意はないよ。
アヌビスが監視されてるっていうから捕まえてきてもらったんだ」

「アヌビス...この魔物、ミストラル・ガルムか...?」

アヌビスは勝ち誇った顔でエルフを見つめている
アヌビスはミストラル・ガルムという種族なのか...
エルフをあっという間に捕縛するあたり、強いのだろう
俺からしたら食い意地のはった犬だが。

「お前たちはなんだ、人間の形をしているが、魔物か?」
「俺は人間だよ、数日前、生贄としてこの森へ運ばれたんだ。」
「ではこの魔物はなんだ?なぜミストラル・ガルムと一緒にいる」
「俺にもわからん、怪我の手当てをしてから一緒にいる」
「もう少しマシな嘘を考えろ!魔物と暮らす人間などいるわけがない」
「俺は魔物と会話ができる!こいつは無害だ!
今から話をして座らせる、頼むから落ち着いてくれ」

そして俺はアヌビスの方を向き、アヌビスに話しかけた

「アヌビス、下りて、座ってくれないか。このままだとまともに話できそうにない。」

アヌビスはしぶしぶ、エルフの上から降り、床へ座り込んだ。

「ふぅ...本当に会話したのか?」
「本当だ、何か他にしてもらいたいことがあるか?」
「いや、取り乱してすまない」

エルフは目をつむり、反省している様子を見せた

「君は、エルフ族っていうやつか?」
「そう、エルフ族だ。森の見回りをしていたんだ。
斥候も兼ねている、ここ数日このあたりに人がいると聞いて害がないか見回りに来た。そしてミストラル・ガルムに見つかって、あとはご存じの通りだ。
斥候として君たちを知る必要があったんだ、監視していたことは謝る。」

紳士的なエルフだ、話が通じるタイプでよかった...
俺はほっと胸を撫でおろし、会話をつづけた

「俺は何日か前に、生贄として連れてこられたんだ、君はどこから来たんだ?」
「エルフの住処を明かすことはできない、だが人間の足では数日はかかるくらいには、遠いよ。
ここには君とそのミストラル・ガルムだけかい?」
「いや、もう一人人間がいるけど、めんどくさい性格でね」
「変わり者か。我々の種族にもいるな」

その様子を住処の中から見ていたまめいが聞いてゆっくりと姿を現した

「聞こえているぞ」

俺はため息をつきながら紹介した

「この子がもう一人だ、料理はうまいんだが、なんというか、アホの子だ」

紹介の仕方に不満をもったまめいが眉間にしわを寄せ、目を見開きながら煽り口調で反論してきた

「それは私の事かー?この森に女の子は私だけだぞー?つまり私は美少女だぞー?もっと敬えー!?チヤホヤしていいんだぞー?」
「この通り、めんどくさい」
「ハハハッ面白い人じゃないか、この子も生贄だったのか?」
「そうだね」

意外にも気さくなエルフだ、エルフは排他的な種族だったような気がするが
この世界では違うのだろうか
それから俺たちがここへたどり着いたいきさつを話した
帰るところがないのでここにしばらく住みたいという話をしたところ、エルフから提案があった

「なるほど、それは大変だったね、ここに住むことについては問題ないと思う
我々の住処は結構遠いからね、君らでは見つけることはできないだろう。」

「そっかぁ、うーん、厚かましいお願いかもしれないけど、何かここから提供できるものがあれば物々交換などもできたらよかったんだけど。
最低限は生活できるんだけど、それ以上の事ができなくて...」

エルフは顎に手をあて、周りを見渡しながら話してくれた

「うーむ、エルフのモノと交換できそうなもの...はさすがにこの様子だとないな
ただ、君の魔物と会話できる能力があればもしかしたら、交易できるかもしれないな」

「どういうことだ?」

「ここから少し離れたところ、川の上流に岩山があるだろ?あのあたりにアラクネという魔物がいるんだ。上半身は女性、下半身は蜘蛛の姿をしている
彼女と、言っていいのか...アラクネたちと交流をもつことができたらきっといい交易ができる。
アラクネたちは織物の達人なんだ、アラクネたちが作る織物はエルフのものさえ遥かに凌ぐ品質なんだ。それがあれば我らとの交易も一部容認されるだろう」
「ほぉ~、それは面白い。でも、それを知っているならエルフは交易しないのか?」
「エルフは閉鎖的な種族だし、プライドが高いからな、魔物と取引なんて絶対にしないな、人間なら少ないが、前例はある。
そして人間でもアラクネの織物はあまり扱っていない。つまり希少なんだ。
その取引ができるなら望みはある」
「なるほど。ふむ、我々の特産品となるわけか、いいな。
早速明日向かってみよう。」
「定期的にここへ寄るよ、アラクネの織物が手に入ったら見せてくれよ?」
「わかった。明日向かってみるよ!貴重なアドバイスありがとう!」
「どういたしまして、アラクネの織物が手に入るなら我々としてもありがたい」

それから夕食を一緒に食べ、談笑しながら次の日を迎えた。

「エルフは排他的な種族だと思ってたけど、実際は違うんだな」
「いやいや、排他的ではあるよ。私が斥候であることと、いわゆる変わり者だという事さ。」
「そうなんだ。初めて会ったエルフが君でよかった。」
「ハハハッ、これがよい縁になるといいね」
「こちらこそ、また来てくれよ。」
「必ず、ここはそう安全な森ではない、人間には特に、死ぬなよ」
「ありがとう、また」

エルフは片手を上げ、振り向くと信じられないような跳躍力で森の木の枝へと飛び移り、あっという間に見えなくなってしまった。

あれほどの機動力なら1日でここまで来れたりするのだろうか...うらやましい身体能力だ。


さて、せっかくアドバイスを貰ったことだし、アラクネを探しに行こう
話すのは俺にしかできないので俺が行く事は確定しているが...
道中何かあると困るのでアヌビスも連れていきたい
だが、ここに一人でまめいを残すのもさすがにかわいそうだ。

「まめい、アラクネ探しに一緒に行く?」

まめいはうつむき、どんよりとした表情で話し始めた

「クモか...」
「苦手か?」
「虫ぜんぶ無理、平気なやつなんておるんか?」
「この世界だと苦労しそうだな、人より大きな虫もいそうだ」
「やーめーろー」

まめいは頭を抱えさらに落ち込んだ

「とはいえ、行くとしたら俺とアヌビスは確定だ。
まめいは一人でお留守番できるか?」

まめいはパッと顔を上げ、不安げな表情を見せながら必死に訴えてきた

「女の子一人残していくとか鬼かキサマー!つれてけー!」
「そうなるね。じゃあ一緒にいこうか。」
「虫かぁ...やだなぁ...」

がっくり肩を落としながら準備を始めている

俺たちはアラクネの巣を探す旅にでかけた
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