異世界で魔物と産業革命

どーん

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第33話 - 勇者召喚

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収穫祭の季節

今年は前年の参加者に加え、ルガランド、ヘルミナも招待に加え開催

祭りを楽しんだあと、有力者たちの間に向かうと、開幕からルシファーがテーブルの上で酔いつぶれ、寝ている

誰だあいつにお酒渡した奴は、居酒屋ならあるだろ、なぜここで酔いつぶれた

続々と有力者たちが集まってくる、ルガランドやヘルミナも早々に到着したがさすがに悪魔の王が酔いつぶれているのは手が出しにくいらしく、腫れ物を触るような感じだ

ほんとうに、申し訳ない

シトリが到着した

「あ~、ル~ちん」

シトリはルシファーに駆け寄る

「こんなとこで~寝ちゃダメだよ~」

シトリとルシファーは面識があるのか、えらく親しげだ
ルシファーの肩の下へ頭を通し、担ぎあげた

へぇ、意外な一面だ、もっと荒い女の子かと思ってた

「おきて~ル~ち~ん」

ルシファーをゆすぶるシトリ
2~3度ゆさぶるとルシファーは目を開け、シトリを見る

「誰だオメェ」

相変わらずかよ、酒乱か

「ま~だ寝ぼけてるの~?」

するとシトリはルシファーの後ろに回り込み、両腕でルシファーの胴を抱える
次の瞬間、シトリは勢いよくブリッジし、ジャーマンスープレックスが決まった

ゴォォォォォン!

すさまじく鈍い音が響き渡る、がみんな平然と飲んでいる
なんで誰も気にしないの?ルーちん死んじゃうんじゃない?

「お~き~て~」

シトリは明らかに目を回しているであろうルシファーに何度もジャーマンスープレックスをかけ続ける

悪魔の王でしょもっと丁寧にしてあげなよ

止めようと思ったが俺は見なかったことにして皆に挨拶をして回ることにした
きっと気にしたら負けだ

有力者たちとあいさつが終わったころ、ルシファーは目を覚ましていた
親しげにシトリと話している、頭はコブだらけだしフラフラしている

王の威厳なんてあったものではない
なんであれで平気なんだろうな?悪魔の王ともなるとあれくらいじゃダメージにならんのだろうか

俺はシトリに見つかるや否や呼ばれてしまい、ルシファーを囲んで話をする

「シトリ、ルシファー殿と親しかったんだな」
「そうだよ~」

シトリはスープを手に取るとルシファーへ進める

「これ飲みな~?頭痛いの治るかもよ~?」

頭痛いのあなたのせいでしょ
ルシファーはフラフラだが勧められるままにスープを口にする

「ん?これは不思議な味だな、材料はなんだ?魔力が集まってくる」

ルシファーは俺を見た
きっとリッチの出汁で作ったスープです、材料は聞かないほうがいいと思います

「それね~あたしがつくったんだよ~」
「へぇ~シトリが作ったのか?じゃあきっと変なもん入ってんだろ」

その通りです、昔から変なもん飲まされてたんですかね?慣れてらっしゃる
ルシファーはシトリに話しかける

「まともなもの作るようになったな~、おままごとの泥のスープより飲みやすいじゃん」

おままごとってフリでいいと思うんだけど、飲んだの?
ルシファーの男気を見た、幸せになってほしい

シトリが思い出したように俺の元へ駆け寄ってきた

「玄人~、こっちきて~」

シトリに連れられるまま向かった先にはソロモン王とフリートが飲んでいる

「パパ~あたし~子供がほしいの~」

なんて?

俺の心の準備ができてないから今の取り消して
ソロモン王がシトリを見る

「どうした急に」
「玄人の~子供が~いっぱいでね~うらやましいなぁ~って」
「そうか、玄人、よろしく頼む」

やめろ断れ、ルシファーがいるだろ
フリートが笑いながら話し出す

「ウッハッハ、さすがじゃのう、玄人」

笑いごとじゃねーだろ、人骨スープ飲ませるぞ
俺はシトリにルシファーの事を聞いてみた

「シトリ、ルシファーはいいのか?」

シトリはルシファーに目をやる

「ル~ちんは~旦那さまだよ~」

ハァ???

「え、何言ってんの?旦那さまと子供作るのが普通でしょ?」
「まだできないの~、あれだけ子供いる玄人なら~イッパツでしょ~?」

正気か?魔神の貞操観念どうなってんの
俺はルシファーを呼んだ
ルシファーはフラフラしながらこっちに来る、たんこぶが重そうだ

「ルシファー殿、シトリを止めてくれないか」

軽くいきさつをルシファーに伝えた
するとルシファーは答える

「いいんじゃないか?俺もいろんな子供がいるぞ」

堕落しすぎだろ、もうちょっと嫉妬とかしろよ

そんなこんなでギャーギャー貞操観念について議論しているとティルがやってきた
どうやらローニャン商業国家の使者が来ているらしい

これは面白い事になった、人間の国との外交が増える
俺は逃げ出すようにその場を後にした



城の客間に入ると、ローニャン商業国家の使者が既に座っている
使者は狼の獣人だった

さすがに人間が単独で来るのは警戒しているようだ
まぁ、魔物たちと会話できないだろうしな、仕方ないだろう

狼の獣人はヴァレオと名乗った

「初めまして、堅苦しい挨拶は抜きでいい、今回は何の用だい?」
「ご配慮いただきありがとうございます、私はローニャン商業国家の者です、ご存じかとは思いますが、ローニャン商業国家は商業によって成り立っており、利益を重視する国柄です」

商業国家というだけあってそうなんだろう、今回は仕入れが目的だろうか

ヴァレオは続ける

「この度は魔王城で生産されているトレント寝具一式の交易をお願いしたくお伺いいたしました」
「なるほど、オークターヴィル経由だと関税で高くつくからか」
「仰る通りでございます、商売を生業とする私たちにとってトレント寝具は非常に魅力的であるため交易のお願いをしにまいりました」

その後もヴァレオはペラペラと世辞を述べ続けたが俺はその間に考えを巡らす

交易自体は大歓迎だが一方的に利益を持っていかれるのはよくない
こちらも何かしらローニャンを利用したものを得たいところだが...

ティルとリリアナに任せるか

「ちょっと待ってくれ、同席させたい者がいる」
「はい、お待ちしております」

ティルとリリアナを同席させ、使者と交渉を始めた
まだ魔王領にはない海産物の取引、発達した造船技術を利用した海洋の秘宝などが新たに交易品として取引されることが決まり
軍事関連では人間の国の兵力情報などが買い取りできるようになった

トレント寝具が人気あるようでよほど大きな利益が見込めるのだろう
国の兵力情報など国家機密だというのに、よく売る気になるものだ

また、ローニャンが寄港する港の新設、城までの街道の整備、道中の商団を護衛する方法が議論され、城の戦士ギルドが協力する事になった

トレント寝具以外にも必要なものがあれば買い付けたいとのことで城下町、商業ギルドへの立ち入りも許可

具体的な買い付け、交易は来年春からだ、まずは港を整備しなければならないな



その後は特に変わったことはなく、春が訪れた

港は急ごしらえだが簡単なものが完成
交易用の倉庫などがこれから増えていくだろう

クルハを連れて完成した港を視察に向かい、現地の様子を観察する

港にするには少し地形が複雑だが、魔術で開拓してなんとか港の体を成してある

港は切り立った崖沿いにかなり無理やり作られているが、海流の関係で船が安全に泊まれるところがこのあたりしかなかったそうな

クルハは2歳になり、竜の角、尻尾、翼が少し大きくなった
もう助けを借りずに飛ぶことができる

たかが2歳だがもう魔力はそんじょそこらの魔物では太刀打ちできないほど強力で力の制御を覚えなければ危ういレベルだ

もっぱらフリートに火を吐く練習などしてもらっており何度も森を燃やしている
おじいちゃん子供がかわいいのはわかるけどもうちょっと周りを見てほしい

単語で喋ることもできるようになってきた、この辺は人間に近い成長の仕方だった
最近は怒るとミニ竜形態になる、爪や牙が生えるので結構いたい

港はまだ完成したばかりで宿も港もない
今後はここにも街を作って魔王領に足を踏み入れる危険を犯すことなく買い物ができるようにしよう
よい観光地になるはずだ、ここを中心に海の魔物たちとも会話できるといいんだけど



数日経った頃、ローニャンの商団が到着し、交易が始まった
人間よりも獣人が多く編成されている

人間は非常に心細そうだった、魔道塔に行けば少し喋れるかもしれないけど、まぁそうだよな、そういう町だしな
人間用の宿や酒場も作った方がよさそうだ、今後の事も考えると

商団が商業ギルドへ到着すると続々とトレント寝具が運び出される
商団の代表が商業ギルドに寄り、ティルに挨拶をすると満足そうに帰っていった

商団の船は元の世界でいうガレオン級、かなりでかい、何百人と乗れる船だ
それが5隻、作るのにも相当時間かかりそうだ、かなり大きな事業なんだろう



ローニャンと交易を開始してから人間達の事情もいろいろと入ってくるようになり
不穏な噂も多く耳にするようになった

ルクフォントデュー宗主国家という宗教を中心とした国がある
その国が魔王と取引していることを非難しているというのだ

教皇が王を兼任しており、聖女などの象徴を掲げ、人間の国に広い信仰を持ち、多大な影響力を持っている

宗教が政治に関わるとロクな事がない、信徒の数が莫大に増え
盲目的な支持を得るため公正な判断の基準が狂うのだ

今は戦争もある時代だ、何かにすがらなければ正気を保つのが難しい部分があるのは認める、だが政治に関わってくるのはダメだ、というより俺が苦手だ

宗教は教えを強要してくるからだ、自由な思想を許可してほしい
これは偏見かもしれないが魔王というだけで拒否するのもちょっと頂けない

魔物被害によるところもあるのだろうが、彼らもまた自然の摂理に則っている
人間の都合で領土を広げ、魔物を押しやっている、それも人間の力なので力関係を重視する魔物からすれば非難するような事ではない

シルヴァン帝国に侵略され、こちらからは手を出していないにも関わらず全ての土地が人間のものでもあるかのような振る舞いはさすがに嫌気がさした

ルクフォントデュー宗主国家との関係が一方的に悪くなる中

ある奇妙な噂が耳に入る
聖女が “勇者” なるものを召喚したというのだ

この世界に不幸にも呼ばれた異世界人がまた増えた

俺は早速リリアナに情報収集を依頼した



軍略会議室

「リリアナ、聖女が召喚したという勇者について何かわかった?」

リリアナは資料を広げた

「勇者は異世界から呼ばれた人間のようですね、かなり大きな期待を寄せられているようです、また詳細は不明ですが強力なスキルを授かっていると言われています」

あーはいはい、よくありますね
俺も勇者として呼ばれたかった、何をどう間違ったか俺は魔王ですが

「今はどこにいるんだ?」
「まだルクフォントデューで修行をしているという話です」

いきなり魔王倒しちゃうようなチートではないわけね、そこは安心

「戦争に発展する可能性は?」
「今のところは無いと思います、シルヴァン帝国も今は内政を中心に行っています、また、ルクフォントデューは自ら戦争を仕掛ける国ではありません、主に宗教による改修や現地民の蜂起が領土拡大の手段です」

内乱を引き起こして領土乗っ取るのかよ、かなりタチが悪い

「じゃあ、しばらく静観するしかないか、数万いる人間軍に宣戦布告してもどうにもならん」
「それがいいでしょう、どれほどの力を持つものかもわかりません」
「そうだな、オークターヴィルとローニャンを大事にしよう」
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