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一章 ベロリン王国編
鬼の右ストレート
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明るい日差しが瞼を刺激してくる。あぁ、もう朝か。今日は何曜日だったっけ? 休みだといいんだけど、こういう時って、大抵は仕事の日だよなぁ。それにしてもアラームの前に起きるとは珍しいな。今は何時くらいだろ? とりあえず携帯を見るか。携帯はサイドテーブルで充電しておいた筈だけど……あれ? どこだ?
「ん? なんだこれ?」
携帯に向かって伸ばした手に柔らかい何かが当たった。何だこれ? 握ってみると柔らかくてむにゅむにゅっとした感触が手の平いっぱいに広がった。スクイーズ? おかしいな。こんな大きなスクイーズをサイドテーブルに置いてたっけ? それとも夜食用に肉まんでも置いたか? 昨日の俺は何してたんだ? でも、肉まんにしてもおかしな感触だよなぁ。なんていうか、ずっと触っていたくなるような不思議な感触だ。これは何だ……って、え?
「リュ、リューネ……さん?」
ぼやけた視界の先にいたのは真っ赤な顔で歯を食いしばっているリューネさんだった。
「お前、気が早いな。目が覚めた瞬間にコレかい?」
額に怒りマークが見えるくらい言葉に迫力がある。まさか、この感触って……視線を落とすと俺の右手は今も絶えずリューネさんの胸を揉んでいた。
ひ、ひゃぁあああああああ!?
「ち、ち、違う! 違うんだ! ご、誤解だ! 俺はただ携帯を取ろうと、本当にそれだけで、だから、その……ご、ごめんなさい!」
文字通り布団から飛び上がって、すぐさま土下座する。
誠心誠意。
とにかく謝る時は嘘偽りなく真心を込めて頭を下げるのがいい!
「ああ、別にいいよ。怒っちゃいないから。ただ、びっくりしただけさ。負けた以上、胸の一つや二つ揉まれたって気にしないよ。好きにしてくれ」
リューネさんは溜息混じりにそう言っただけだった。お、怒ってないのか? それにしても見た目以上に大きかったなぁ。なんて質量だ。ニュートンもびっくりだよ。
「それより身体はもう平気なのか? お前、2日も寝込んでたんだぞ?」
ふ、2日っ!? そんなに寝てたのか。そういえば身体の節々が微妙に痛い。筋肉痛みたいな感じだ。
「まったく……私に勝ったってのに締まらない男だよ。でも、勝ったのに違いはない。身体も大丈夫みたいだし、覚悟は出来てる。セイゴ、私はあんたのものだ。好きにしてくれ」
そう言うとリューネさんは隣の空いているベットの上に大の字になった。これって、どういう事? 好きにしてくれって何? ミリアちゃんと違って、こんな大人の美人にそんな事を言われたらあらぬ想像をしちゃうんじゃないか。
それに今は性よりも食だ。2日も寝込んでたって事は、2日も食べてないって事だもんなぁ。腹が減って仕方ないよ。
「食べたい気分だ」
「ああ、しっかり味わうといい。でも、油断してると私があんたを食っちゃうかもしれないよ?」
食っちゃう? ああ、俺の分まで食っちゃうかもしれないくらい、リューネさんも腹が減っているのか。でも、俺だって負けないくらい腹が減っているんだ。
「俺が先に食うよ」
「そ、そうか……その、私も痛いのは苦手だ。だから、優しくしてくれると嬉しい」
痛いのは苦手? 辛いものが苦手ってことか。辛すぎる料理は口の中が痛くなるもんなぁ。辛味って味覚じゃなくて痛覚らしいしね。俺も辛いものは苦手だ。特に食べた後にトイレ行った時が最悪なんだよね。唐辛子とかに含まれるカプサイシンは体内で消化できないからそのまま体外に排出されるんだけど、その際に皮膚や粘膜に触れるとめっちゃ痛い。だから、辛すぎるものを食べた次の日はお尻が大変な事になるんだそうだ。
「うん、お尻は大切にしないとね」
「し、尻っ!? そ、そんな……前だって初めてなのに、いきなり尻なんて……」
今は腹が減っていて贅沢は言わないけど、辛いものだけは勘弁してほしいな。おや? 扉の方から物音がする。誰か来たのかな? ちょうどいい、聞いてみるか。
「よし、とりあえず行くか」
「い、いくのか? た、頼む! せめて……せめて初めだけは優しく……っ!」
「すいませーん。辛くないご飯ってありますか?」
「ひょえっ!?」
扉を開けると、そこにしゃがんでいたのはドーナさんだった。何をやってたんだかわからないけど見知った人なのは有難い。
「ドーナさん、ここでご飯って食べられますか?」
「ご、ご飯かい? それなら下で食べられるけど……」
「そうですか! 良かった! いや、なんせ2日も寝てたせいか、お腹が減っちゃって、ははっ! とりあえず何か食べたいんですけど……えっ?」
「あ、あんた……う、後ろ、後ろ」
ドーナさんが恐ろしいものを見るような顔で俺の背後を指差している。後ろ? 何だろ? もしかして、昔のコントみたいにお化けがいるのかな? なんてね。そんなのいるわけ……
「セ・イ・ゴォオオオオオオ!」
「ぎゃぁああああああ! お、鬼ぃいいいい!」
「この最低野郎がぁああああああ!」
「あ痛ぁああああああ!」
訳も分からないまま、鬼の形相と化したリューネさんの渾身の右ストレートを喰らい、俺の意識は再び消えた。
「ん? なんだこれ?」
携帯に向かって伸ばした手に柔らかい何かが当たった。何だこれ? 握ってみると柔らかくてむにゅむにゅっとした感触が手の平いっぱいに広がった。スクイーズ? おかしいな。こんな大きなスクイーズをサイドテーブルに置いてたっけ? それとも夜食用に肉まんでも置いたか? 昨日の俺は何してたんだ? でも、肉まんにしてもおかしな感触だよなぁ。なんていうか、ずっと触っていたくなるような不思議な感触だ。これは何だ……って、え?
「リュ、リューネ……さん?」
ぼやけた視界の先にいたのは真っ赤な顔で歯を食いしばっているリューネさんだった。
「お前、気が早いな。目が覚めた瞬間にコレかい?」
額に怒りマークが見えるくらい言葉に迫力がある。まさか、この感触って……視線を落とすと俺の右手は今も絶えずリューネさんの胸を揉んでいた。
ひ、ひゃぁあああああああ!?
「ち、ち、違う! 違うんだ! ご、誤解だ! 俺はただ携帯を取ろうと、本当にそれだけで、だから、その……ご、ごめんなさい!」
文字通り布団から飛び上がって、すぐさま土下座する。
誠心誠意。
とにかく謝る時は嘘偽りなく真心を込めて頭を下げるのがいい!
「ああ、別にいいよ。怒っちゃいないから。ただ、びっくりしただけさ。負けた以上、胸の一つや二つ揉まれたって気にしないよ。好きにしてくれ」
リューネさんは溜息混じりにそう言っただけだった。お、怒ってないのか? それにしても見た目以上に大きかったなぁ。なんて質量だ。ニュートンもびっくりだよ。
「それより身体はもう平気なのか? お前、2日も寝込んでたんだぞ?」
ふ、2日っ!? そんなに寝てたのか。そういえば身体の節々が微妙に痛い。筋肉痛みたいな感じだ。
「まったく……私に勝ったってのに締まらない男だよ。でも、勝ったのに違いはない。身体も大丈夫みたいだし、覚悟は出来てる。セイゴ、私はあんたのものだ。好きにしてくれ」
そう言うとリューネさんは隣の空いているベットの上に大の字になった。これって、どういう事? 好きにしてくれって何? ミリアちゃんと違って、こんな大人の美人にそんな事を言われたらあらぬ想像をしちゃうんじゃないか。
それに今は性よりも食だ。2日も寝込んでたって事は、2日も食べてないって事だもんなぁ。腹が減って仕方ないよ。
「食べたい気分だ」
「ああ、しっかり味わうといい。でも、油断してると私があんたを食っちゃうかもしれないよ?」
食っちゃう? ああ、俺の分まで食っちゃうかもしれないくらい、リューネさんも腹が減っているのか。でも、俺だって負けないくらい腹が減っているんだ。
「俺が先に食うよ」
「そ、そうか……その、私も痛いのは苦手だ。だから、優しくしてくれると嬉しい」
痛いのは苦手? 辛いものが苦手ってことか。辛すぎる料理は口の中が痛くなるもんなぁ。辛味って味覚じゃなくて痛覚らしいしね。俺も辛いものは苦手だ。特に食べた後にトイレ行った時が最悪なんだよね。唐辛子とかに含まれるカプサイシンは体内で消化できないからそのまま体外に排出されるんだけど、その際に皮膚や粘膜に触れるとめっちゃ痛い。だから、辛すぎるものを食べた次の日はお尻が大変な事になるんだそうだ。
「うん、お尻は大切にしないとね」
「し、尻っ!? そ、そんな……前だって初めてなのに、いきなり尻なんて……」
今は腹が減っていて贅沢は言わないけど、辛いものだけは勘弁してほしいな。おや? 扉の方から物音がする。誰か来たのかな? ちょうどいい、聞いてみるか。
「よし、とりあえず行くか」
「い、いくのか? た、頼む! せめて……せめて初めだけは優しく……っ!」
「すいませーん。辛くないご飯ってありますか?」
「ひょえっ!?」
扉を開けると、そこにしゃがんでいたのはドーナさんだった。何をやってたんだかわからないけど見知った人なのは有難い。
「ドーナさん、ここでご飯って食べられますか?」
「ご、ご飯かい? それなら下で食べられるけど……」
「そうですか! 良かった! いや、なんせ2日も寝てたせいか、お腹が減っちゃって、ははっ! とりあえず何か食べたいんですけど……えっ?」
「あ、あんた……う、後ろ、後ろ」
ドーナさんが恐ろしいものを見るような顔で俺の背後を指差している。後ろ? 何だろ? もしかして、昔のコントみたいにお化けがいるのかな? なんてね。そんなのいるわけ……
「セ・イ・ゴォオオオオオオ!」
「ぎゃぁああああああ! お、鬼ぃいいいい!」
「この最低野郎がぁああああああ!」
「あ痛ぁああああああ!」
訳も分からないまま、鬼の形相と化したリューネさんの渾身の右ストレートを喰らい、俺の意識は再び消えた。
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